3-3.三人の試練 ~燃える森~
炎の川を渡り、三人は鬱蒼とした森へと足を踏み入れた。
しかし、その森は異常だった。
樹々は常に燃え盛っており、絶え間なく炎を上げていた。熱気と煙が立ち込め、視界を遮る。
「これが二つ目の試練、燃える森だ」
アウルが言った。
「ここでは、炎を操る高度な技術が必要になる。ただ消すだけでは、森全体が消滅しかねない」
アウルの言葉に、リラは不安を覚えた。
自分の力が、また何かを破壊してしまうのではないかと。
「リラ、君の力が必要だ」
セレスが優しく言った。
「炎を鎮めて、僕たちが通る道を作ってくれないか?」
リラは頷き、集中した。
彼女が手をかざすと、燃え盛る樹々の炎が、彼女の意志に呼応するように穏やかになった。
まるで、リラの心の動きが炎に伝わっているようだった。
しかし、炎が完全に消えることはない。煙が視界を遮り、進むべき道が分からなかった。
「セレス、視界を確保してくれないか」
アウルが指示を出す。
セレスは、頷くと水の加護で辺りに霧を発生させた。
その霧は、炎の熱を冷やし、煙を薄めていく。
しかし、炎の熱で霧はすぐに消えてしまう。
リラの炎の制御と、セレスの霧の持続。二人の連携が求められた。
「リラ、もう一度!」
セレスが叫んだ。
リラは再び炎を鎮め、セレスは霧を発生させる。
二人の息がぴったりと合い、森の中に、まるで道標のように、煙の薄い通路が現れた。
そのとき、アウルが足を止めた。
「こっちだ」
彼は、森の精霊の微かな囁きを聞き取っていた。
精霊の研究者である彼は、精霊の気配を敏感に感じ取ることができるのだ。
彼が指差す方向に進むと、炎が不思議なほど穏やかな場所があった。
そこは、燃える森の中でも精霊たちが住まう、唯一の安全地帯だった。
「この森の精霊は、無闇に炎を上げているわけではない。
彼らは、精霊王への道を守っているのだ。彼らの心を感じ取り、敬意を示せば、道は開かれる」
アウルはそう説明した。
リラは、炎がただ破壊をもたらすだけでなく、温かさや光を与える存在であることを学んでいった。
セレスは、自分の水が、炎を消すためではなく、炎の力を導くためにあることを知った。
そして、アウルは、知識だけでは解けない精霊との絆が、この旅には不可欠であることを改めて確信した。
三人は、互いの力を信頼し、協力することで、燃える森の奥へと進んでいった。
それぞれの役割が、彼らの旅を支えていた。
彼らの絆は、最初の試練を経て、さらに強固なものになっていたのだった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
少しでもリラたちの物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。
次回は、リラとセレスの絆が深まる場面が描かれる予定です。お楽しみに!
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