3-1.三人の試練 ~炎の川~
三人は、火の山の中腹にある、最初の試練へとたどり着いた。
彼らの行く手を阻んだのは、「炎の川」だった。
それは、ただの川ではなかった。
地中から湧き出た溶岩が脈動するように流れ、灼熱の蒸気が立ち込めている。
その熱気は、リラの炎の加護と共鳴し、彼女の髪の赤色をより一層鮮やかに燃え上がらせた。
しかし、その力はまだ制御しきれない。一歩でも踏み外せば、灼熱の溶岩に身を焼かれるだろう。
「この川を渡るには、橋が必要だ」
アウルが冷静に状況を分析した。
「リラの炎の加護で、地面を硬くして橋を作ることは可能だろう。しかし、その熱はすぐに崩壊を招く。セレスの水の加護で、その熱を冷ますことができれば……」
アウルの言葉に、リラとセレスは顔を見合わせる。
自分たちの相反する加護を、協調させるという初めての試みが必要なようだった。
「やってみます」
リラは決意を込めて言い、川に向かって集中した。
彼女の足元から、マグマのように熱い炎が湧き上がり、地面を硬い石へと変えていく。
しかし、その熱は凄まじく、リラが橋を伸ばすそばから、石はひび割れ、崩れ始めていた。
「セレス、君の力を!」
アウルが叫んだ。
セレスは、リラの隣に立ち、水の精霊に祈りを捧げた。
彼の体から、清らかな水が流れ出し、リラの炎が作り出す橋を包み込んでいった。
リラの炎が石を焼き、セレスの水がそれを急激に冷やす。
互いの力が激しくぶつかり合い、あたりにはけたたましい水蒸気が立ち込めた。
リラは、セレスの水の力が、自分の炎を消そうとはしていないことに気づいた。
彼の水は、炎を優しく包み込み、その熱を吸収して、石をより頑丈に、安定したものに変えていく。
「いいぞ! その調子だ!」
セレスが叫んだ。
二人の力は、まるで一つの生き物のように連動し、橋は少しずつ、しかし確実に川の向こう岸へと伸びていった。
アウルは、その光景を食い入るように見つめていた。
彼の研究心は満たされ、同時に、二人の若者の計り知れない可能性に心を震わせていた。
そして、橋が完成した。
三人は、互いを支え合いながら、一歩ずつ慎重に橋を渡り始めた。
リラの炎の熱と、セレスの水の冷たさが混ざり合い、彼らの周りだけ、心地よい温かさが漂っていた。
対岸にたどり着いた三人は、その場でへたり込んだ。
リラはセレスの手を、セレスはリラの手をしっかり握っていた。
アウルはそんな二人を静かに見ていた。
「君たちの力は、お互いを打ち消すものじゃない。お互いを、より良いものにするためにあるんだ」
アウルの言葉は、試練の達成感とともに、リラとセレスの心に深く刻まれた。
彼らは、それぞれの力が単独では不完全なものであっても、協力することで、想像を超える力を発揮できることを知った瞬間だった。
この試練を乗り越えたことで、リラは自分の力が「破壊」のためだけでなく、「創造」のためにも使えることを学び、彼女の心の奥底に眠っていた希望の炎が、かすかに灯り始めた。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
少しでもリラたちの物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。
次回は、リラとアウルの距離が縮まる場面が描かれる予定です。お楽しみに!
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