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出会い4

「にた…と言ったか。紹介しよう。私の妻でルミーズじゃ。」

玄関に入るとそこにはトルバーさんと近い年代の女性が立っていた。

「初めまして。仁多 真と申します。今日は突然の訪問にもかかわらずお招きいただいて据祝です。申し訳ありませんが、一晩お世話になります。」奥さんに軽く会釈をしながら自己紹介と突然の宿泊のお詫びとお礼を述べる。

「ルミーズです。ご丁寧に。お気になさらずどうぞおあがりください。十分なもてなしはできませんがゆっくりとして下さい。」奥様の気持ちの良い笑顔に迎えられ少しホッとする。

(突然の訪問者って奥さんにとって大変だろうからもっと困った感じになるかなと思ったけど親切そうな方だな。)

招きに従って通されたのはおそらくリビングなのか。品の良い調度品がさりげなく置いてある。表からはわからなかったが、室内には暖炉が鎮座し、まだ暖炉を使う季節ではないが圧倒的な存在感がある。窓からは十分な採光があり室内は適度な温度で管理されていて心地よい。

「ではお茶でも入れましょう。」そう言ってルミーズさんは奥の部屋に入っていく。キッチンかな?扉があるわけではないので一間としてあるんだろうけど、対面キッチンとかではないんだね。準備はこちらから見えないようになっている。

トルバーさんがそこの席を使ってくれと開いている席を指し示す。

「失礼します。」お礼を言って腰かけ一息つくと

「それで、君はどこから来たんだね?」まあ、当然の疑問だろう。俺もわからないんだが

「トルバーさん、私のことはニタでもマコトでも呼びやすいほうで呼んでください。それで私がどこから来たかですが、気が付いたら森の中にいたので自分でもわからないんです。」

「そうなのか?奇っ怪な話じゃのぉ。そうじゃわしのこともトルバーでよいぞ。さんなど付けられるとこそばゆくていかん。」

「ありがとうございますトルバーさん。それではトルバーと呼ばせてもらいます。」

「ああそうしてくれ。わしはそうじゃな…ニタと呼ばせてもらおう。」

「はい。ありがとうございます。トルバーさ… トルバーはここで何をしているんですか?町まで3日もかかるということでは不便じゃないんですか」

「そうじゃな。わしは隠居の身でなしがらみのないこの森でルミーズと気ままに暮らして居る。ニタが思うほど不自由はなくてな、逆に森はいろいろな恵みがあるのでな。」

「そうなんですか。それは大変な失礼を。」

「うむ。でじゃ、ニタがいた森というのがな先ほども言ったがヴィラムの森でな。まあここもそうなんじゃが、町の者は近づこうとはせん。」

話の途中にルミーズさんがお茶を持って戻ってきた。

「どうぞ。これはこの辺りでとれる木苺のお茶ですの。お口に合いますか。」確かにベリーの甘い香りがほんのり香ってくる。

「ありがとうございます。いただきます。」一口ふくむと鼻に抜ける香りが一段と濃く感じさらっと口当たりのよう赤みがかった液体が口内に広がって甘みと酸味の絶妙な味わいが駆け巡る。

「いいかおり。それにとてもおいしいですね。」

「あら、ありがとう。好き嫌いが分かれると思ったのだけれどお口に合ってよかったわ。」

「ああ、いいお茶だ、今日は特にうまく淹れてある。」トレバーさんがさらにほめる。

ルミーズさんもいい笑顔だ。

「すみません。お話の途中だったのでは?」

「ああ、そうじゃった。」奥様の問いかけにトルバーさんが思い出して続ける。

「ヴィラムの森はな…」そう言ってトルバーさんの語る話は不思議な話であった。

ヴィラムの森はこの世界の中心であるらしい。その中心部は生命の生まれるところでこの世界の生きとし生けるものは全てヴィラムの森から生れ出たものであるという。

トルバー達人間もまたその一うちの一つで、はるか昔に森から生まれてこの世界に広がっていったのだという。

この世界に必要なものは全てヴィラムの森から生れてこの世界に広がっていったが、時には得体の知れない化け物の類も、謎の病もここから生まれるのだと言う。

そういう森であるから、特に人々は神聖な場所であると同時に、畏怖すべき場所としてこの森に入ることはないという。

そのような森から出てきたニタであるからトルバーとしてはただ驚きを隠せないのである。

しかし当の仁多としては、ただの変わらぬ深い森。特段に危険に晒されたわけでもなく穏やかな森であった。最初の”空間”を通り抜ける意外は。


「なるほど、この世界の中心であり、生命の源というわけですね。」

「そういう訳じゃな。ほかにも・・・・」トレバーさんはヴィラムの森について話し続ける。

(特殊な宗教観を持つ地方ってことかな?… ただ、時折頭に響いてくるあの変なヤツの声…)

その時、再び頭の中に直接響く声

『・・・すこし、よいかな。・・・』

(誰なんだ?)

『なんだって?わたしゃかみさまじゃよ。』

「だから、昭和のコントかぁ!」つい声に出して叫んでしまった。

あらためて聞くと、もう本当にあの有名なコントの口ぶり声と思ってしまうほどの完成度?

さすがに、トルバーさんとルミーズは再びの大声にびくっと身を震わせると

「しょうわのこんととは何なんじゃ?」

「あっ!すみません。つい考え事をしてしまって…忘れてください。」

「もう覚えてしまったわ。しょうわのこんと」

「すみません。」それ以上何も言えなかった。

『・・・すこしよいかな。・・・』例の変なヤツの声が再び頭の中に直接聞こえてくる。

『(えっと神様なんですよね。声に出さずに考えるだけでいいんですよね。)』

先ほどモダ(誰だ?)と考えただけで返事が来た。なのでそう言うものだろうと納得してしまう。

『(それで、何でしょうか?)』








今回もお読みいただきありがとうございます。

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