再びの 2
俺の耳は川の音を捉えていた。
俺の能力は変化なく仕えるようだ。
ただ、ルーアには力が使えない。
(分からないときはあいつを呼んでやればいい。)
「おーい。・・壁さま~っ!」
おおきな声で、右から左へと振り向きながらジャングルの方へ呼びかける。
・・・・・が。
待てど暮らせど全く反応はなく、大声を上げた一瞬だけ廻りに一瞬の静寂が流れるが、気付けばどこかで鳴く鳥なのか、サルなのか、キャーやらぎゃーやら甲高い声に混じりチョッ、チョッやらとにかくあちこちから距離の大小は有れ様々な声や音が聞こえて来る。
(この音や声を聴くだけでも、ルーアの居た世界とは違うのは分かる・・・)
ただ、そこだと思って向かった先にベースキャンプの痕跡はなく、少し気にかかる切株がある土地が広がっているだけ。
(・・・・・とりあえず)
水の音に向かって川辺に出て川を下れば何かしらの土地には着くはず。
結局装備らしい装備は何も持たず、ほとんど身一つ。このままでは今夜の食料にすら事欠く。
ルーアの世界に言った時よりもこっちの方が厳しいくらいだ。
「ルーア。川の音は聞こえるのでそっちに向かおう。」俺はそう言ってルーアの手を取って先に進み始める。
「川沿いに進むのですね?」ルーアの言葉に黙って頷きながら
「音からして、そこそこの流量がある川と思われるのでこのままでは渡るのが難しいと思うし、川下に行けば生活する人にも会える公算が強いと思ってね。」
先ほど考えていたことではあるが口にすることによってルーアにもわかってもらえる。
「私もそのほうが良いと思います。なにせ食べるものもありませんし・・・」ふーと小さくため息をつくと
「でもこの森?じゃんぐるでしたか?動植物は沢山いる様なので、いざとなれば・・・」と俺ににっこりと笑いかける。
「まあ、その時はね。」
高く飛べたって、筋力強化したところで、命をかけて逃げる動物を捕まえきれるかどうかは謎なんだが。と思わないことももないが、こちらもある意味命がけになるかもしれない。
「でも、奴らも俊敏だからなぁ」まあ、それぐらいの予防線の一つも張っておきたくもなる。
「無理は言いません。焼肉で食べられるのがいいなぁ」とこちらの不安も知らずして
気楽に夕食に思いを馳せているらしい。
しばらく歩く。
川にはとうの昔に突き当たっており、今はひたすら川下に向かって川と平行に進んでいる。
予想通り、少しばかり幅の広い川で透明度はなく、土尾を含んだ茶色い水がそこそこ勢いよく流れており、水中が見える状態ではなく何が潜んでいるか水中が見渡せないためわからず、俺としてはわにの類、ピラニアの類、何より感染症などの病気のもとになりそうでそちらの方が怖い。
ルーアにもその旨は十分伝えたし、生水を飲んだり、川に入ったりはしないだろう。
川辺を下りながらも俺は自分の知識と照らし合わせながら、何とか食べられるものはないかと木の実や、草を手にとっては少し齧ってみたりと、冷静に考えればやばいこととはわかっていても背に腹は代えられない。
めったやたらと取っては齧りをしているわけではなく、一応俺の知識と照らしあわせてはいるが・・
偶に、『うわっ、にっがー』とか、やたらと口の鈴家を持っていかれるやつとかがない訳でもない。その度にルーガが心配そうにしてくれてはいるのだが・・・
「私も探しましょうか?」とまで言ってくれるのだが、
「とにかく何とかなったこれらを探してくれれば」と、比較的美味しく食べられた数種類の草や木の実を手渡しておく。
「あっ。何か運ぶための籠みたいなのがあればいいですね。」
「あ。それなら・・・」
見るからに縦に割きやすそうな大きな草の葉を引きちぎって、少し細目に割いていく。
俺がやろうとしていることを察したルーアもいったん手にしていた食料を下に置くと同じように葉を抜き取って同様に割いていく。
「でもってこれで・・・・こうやって・・・」と不器用ながらも、割いた繊維で籠を編むように交互に重ねていくと、見ていられなかったのか、
「続きは私がやりますから、仁多様はもう少し割いて下さい。」
まあ、不器用だし。ということでルーアに仕掛けた編み物を渡すとスルスルと続けて編んでいく。
(・・・はやいな。 しかも仕上がりがきれいだし。)
少しその作業に見とれていたら、
「早く咲いてくれないと、もう部材がなくなりますけれど?」と意地悪な目で見返してくる。
「あ!はいはい。」慌てて咲く作業に戻って次々と割いていく。
こっちの方が俺の性には合っているし・・・と言っている間に結構な量が積みあがる。
「こんなもんでいいかな?」
ルーアは積みあがった束を見て手元の組みつつある籠と見比べてから
「多分大丈夫です。・・・そうですね。二つできちゃいますけど・・・」と再び作業を進める。
「俺も手伝おう・・「仁多様は周辺の食べられそうなもの集めていてくださいな?」・・か?」と言った俺の言葉にルーアが重ねて・・そうだね。・・ルーアが一人でやった方が早いだろうし、仕上がりがきれいだよ・・・・な?
あたまをポリポリとやりながら回れ右をして周辺の果実や草を吟味しに行く俺。
小一時間もしないうちに完成の声が届く。出来上がった籠の中に先ほどの可食な植物たちが入れられている。
そして全く同じ大きさの籠がもう一つ。ともに持ち手が長いので肩から掛けて反対側に流せば、便宜上左右に交差させて一人で二つ持つこともできそうな代物。
よく考えてあるし、いい出来だ。
その声に合わせて俺は吟味した中で可食なしかもおいしい部類のものを一抱え持ってルーアのもとに急ぐ。
「はい。これね 結構いける美味しいやつだよ。」
やや黄緑が入っているが全体的に紫がかってはいる。マンゴーの亜種かな?
もう一方も似たような形状だがこちらは少々固めの感じで、アボカドに似ているか?
後は動物性たんぱくが取れれば文句ないのだが・・・
周囲に耳を凝らして動物の気配や音にも気を配っているが、いまだにそれは捉えていない。
「もう少し先に進んでみますか?」誰に言うともなく思わず声に出てしまったが
「そうですね。これで移動もしやすくなりましたし。夜に備えて場所の選定もしませんと。」とルーアは川下に視線を向ける。
「よし、じゃあ行きますか。」足に力を入れて、籠を肩から左右に抱えた俺は歩み始める。
その前をルーアが進む。
(え?ルーア先行っちゃうの・・・)




