再びの 1
どれくらいの時が経ったのか?一瞬だったのかもしれないが、何とか意識が覚醒する。
突っ伏したままの姿勢だが先ほどの記憶が鮮明によみがえる。(そうだ!)
「ルーア!」勢いのまま上半身を起こしてそう叫ぶ。叫んでから周囲を・・・
・・・居た。あれは紛れもないルーア。
しっかりと俺の足を掴んで・・・その状況に記憶も相まって一瞬で息をのむ。
素早くルーアの全身、ついで俺の全身を確認する。何しろ下半身のない状態から徐々に表れる様子ルーアの上半身までは見えていたがその後は解らないのだから。
動かないルーアを恐る恐る触れて確認する。・・・温かい。
全身を見てみてもちゃんとある。胸もゆっくりと上下しており呼吸も大丈夫そうだ。
そこ迄確認ができると一気に安堵感がやってくる。
(とにかく・・良かった・・生きてる。)
「ルーア!・・・ルーア!」ルーアの頭を抱えて膝に乗せるとルーアの肩を揺らして呼びかける。
ルーアはゆっくりと目を開き、差し込む日差しに思わず頭を動かして日差しを避けようとする。
「ルーア!分かるか?」俺は叫ぶほどの大声でルーアに呼び掛けて・・・・・・
「・・・に た ・・・さま。」とルーアの口から俺の名が紡がれる。
あぁ何という・・喜びとも何とも言えない安心感が胸中を駆け回る。
「わかるんだな?」俺の問いかけにゆっくりと頷くルーア。そこ迄確認した俺は次にすべきことを考える。(ここは・・・どこだ?)
地面に突っ伏す前に抱いた感情・・・と言うか記憶?(いつか見たジャングル)
俺の目線を追いかけて併せて周辺を見回すルーア
「あっ!すみません。」と上体を起こそうとするのを、周辺を見回しながらに一言「そのままで構わない。」と伝えてルーアの肩に置く手に力を込めた俺
言われるままに力を抜いて「ありがとうございます。」とルーア
ジャングルの景色を見回しながら視線を周辺に巡らせて足跡を確認する。
そう。あの時の足跡だ。
(・・え? えっ?)
周りを見回しても一向に足跡らしきものは見つからず、一刻に浮かんだ『ひょっとして・・』の感情・感覚も疑ってかからないといけない。
(・・ふっと,返ってきたような感覚が確かにあったのだが・・・)
私の困惑し何も言わない表情を見て取ったルーアが恐る恐るの様子で、
「ここはどこでしょう?」と答えは求めない…けれど言葉に出しておかなければと言わんばかりの・・自身には到底解決できない疑問を口にする。
俺の頭の中には様々な思いが渦巻いているが、
「俺の居た世界に・・・俺の居た世界に返ってきたと思ったんだが・・・」整理しきれない情報と感情を無理やりまとめながら言葉にする。
一つ一つの木や未知のy6お薄を事細かく覚えているわけでは・・・ない。
ましては二月ほども経過した後では記憶も当然のように曖昧になるし、ここが仮に以前のジャングルだったとしても、様子が変わっていることは否めず、そうなれば元のジャングルだと言い切ることも不可能かと思われる。
場所が違えば時間が違ってくる可能性も無きにしも非ずと言ったところだが、上空から差す陽光などからおそらくはまだ午前であろう。
そして、これが地球ならば・・時計の文字盤を思い出して太陽の方向の単身を合わせて文字盤の12時との間が南・・・なんだがここは南半球のはずだから、逆でいいのか?
大まかの場所と方向から元の場所に戻るにはおおむね東の方向になるから・・・こっちか。
そんなことを逡巡しながらふとルーアが気になって振り返ると、ルーアが静かに目を閉じて脱力した様子で直立している。
「どうした?ルーア。」わたしの呼びかけにハッとした様子で目を開けると私に視線を向けて、「・・・気が動転しているのか・・上手くイメージができないんです。」と悲しげに答える。
その言葉の意味に気付いて俺は自分でも確かめてみる。体中に力をみなぎらせて・・・そう、身体強化のイメージだ。
グッと両足に力を込めて、、、、ゆっくりとしゃがみ込む。そして、少し解放。
・・・スパッ!音とともに木々を越える高さまで一気に飛び上がる。
依然と何ら変化はない。上空の死点でゆっくりと体を捻って降下の姿勢へ・・大丈夫。
みるみる地面が近くなってきたところで意識して降下スピードを緩めて・・・片膝着地。
(・・・俺の方は問題なし、以前のとおり。・・・と言うことはここは地球ではない?)
自分の能力の変化が認められなかったことで一気にここが地球ではないのではないかとの疑問が大きくなる。
(ただ、ルーアが能力を発揮できないのは、どういう理由からだ?)
何も変わらず身体能力を発揮できた俺を無言で見つめるルーアには申し訳ないが、大丈夫!とりあえずこの能力で何かあってもルーアの澪は守れるから。
「ルーアが力を発揮できないのは一時的かも知れないから、焦らず様子を見よう。」できるだけ明るくそうルーアに接しながら
「ここが俺の居た地球と言う場所なら、あっちの方に拠点があるはずなんだ」俺はそう言いつつ、東の方を示し、
「早いうちに探し切れればいいんだが・・・・」と少しの不安を口にする。
「それならばその時ですよ。」ルーアもできるだけの明るさで返してくれる。
(ルーアの能力が早く元に戻ってくれればいいのに・・・)などと思いながらベースキャンプのあったであろう方角を目指して二人で歩む。
しばらく進むと耳に水の音が飛び込んでくる。
(そう言えばベースキャンプには船で来たし。川沿いだった。)
水音が聞こえたことをルーアに話しつつ、道中ベースキャンプのことを話しながら歩を進める。
河の音はかなり強くなってもうすぐ川が現れてもおかしくないと思う頃
ジャングルが急に途切れ開けた場所に出くわす。
一瞬ベースキャンプに行き当たったかと思えたのだが、生憎そこは開けているだけ・・・
「ここですか?」ルーアは急に開けた草地を眺めながらそう言う。
「うん、確かに開けてはいるけれど、キャンプの跡がないようだし・・・ここじゃ・・・」
そこまで言った時、急に一つの切り株に目が留まる。
(・・・あれは? ・・・ジョゼ・・そう。ジョゼがよく腰掛けていた奴じゃないか?)
思わず目に入った切株にたまらず駆け寄る俺。切株に名前が書かれているわけでもなく。腰かけただけの切り株になんの特徴が見て取れるのか?
それでも確かめずにはいられず切株を撫でまわしながら、記憶をたどる。
「どうしたんですか?急に・・・」ルーアも急いで後を追ってきたのか少し息が荒い。
俺は気をあちこち確かめながら
「これね。俺がこっちで最後まで一緒だった仲間がよく腰かけていた切株に見えてね」
「そうなんですね。それで・・これで間違いないんですか?」ルーアも俺の横にしゃがみこんで同様に切株を見ているが、ルーアには区別はつくまい。
もちろん俺も大して変わらない。俺が腰勝てて撫でまわしていたりしたわけではないのだから。
「いや、わからないよ。名前でも掘ってあれば別だけど・・・」そう言って肩をすぼめて見せたが、ルーアは、「それ何か彫ったあとじゃないんですかと一点を指さす。」
その差された指の先を見てみると確かに何か彫ってある様な跡が、
姿勢を変えてじっくりとそれを見つめる。
(名前とかのようには見えないし・・ただの傷と言ってもいいようにも思えるが・・・)
明らかに文字ではない。
ただ、単なる傷ではないと言い切れる。ナイフ遊びの跡かも知れないし日にちを数えるために掘り始めていたともいえる。
「読める文字ではないようだけど、明らかに人為的なものだと思うね・」
「では、どういう意味でしょうね?」
「単なる遊び的に無意識に彫ってのか?何かを数えるメモ・・日にちとかね。」
「あぁ。なるほど・・ただそういう使い方だといざというときにナイフが使い物にならないとか。」
「さすがにそこまで考えていないと思うよ。あの時はそこまで深刻なことになっていると思っていなかったからね。」
そうはいったものの、それ以上は決定打もなくそれがジョゼの腰掛けていた切株かはわからないままであった。




