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トルバーさん 5

「家に入りましょうか?」

未だ無言のままの二人に促すように声を掛けると、「あぁ」と力ない返事が返ってくるがとにかく家に入ろう。


部屋に戻り各々がそれぞれの席に着いたところで、トルバーさんとルミーズさんからふーっとため息が漏れる。

「お茶でも淹れてきます。」とルーアが二人に断ってキッチンでいそいそとお茶を淹れて戻って来る。

「どうぞ」

トルバーさんルミーズさんに順にお茶を出し一口勧める。

「まあ何はともあれ、一口飲んで落ち着いて下さい。それからです。」

俺もお二人にお茶で一息つくように促し、同時に俺用に出されたお茶を口にする。

もちろんルーアも。

釣られるように二人もお茶を口にするとようやく落ち着いたようで、俺達に目線が戻って来る。

「落ち着きましたか?」ゆっくりと二人に尋ねると「もう大丈夫だ。」と返ってきた。


「なんともはや、すごいものを見せてもらった。・・・でじゃ。」トルバーさんはここで一旦言葉を切るとジッと順に俺とルーアの目を見て、

「その力をどう使うつもりじゃ?・・いやその前にお嬢さんが危ないことになるかもしれん。」と低いトーンでゆっくりと語る。

「危ない・・・・ですか?」どういうことだろうと不思議に思い復唱する。

「誰も使えんじゃろうそんな力を使えるものを手元に置きたい者も出て来るじゃろ?」当然のことを言っているのだが・・・と言わんばかりの表情で返してくる。

「知られんことが一番じゃが、どこでどう漏れるか分からんのが秘密じゃ。・・魔法だったか?どのような法で成っているのか皆目見当はつかんが使い道次第では・・・だな。」含みを持たせた話しぶりではあるが確かにそのとおりである。そのことについては俺達も十分検討して、想力を魔法に置き換えてそれらしいカモフラージュも考慮した。が、トルバーさんはさらに

「人は自分の理解が及ばないものには管理下に置くか、管理下に置けない場合は排除するのが一般的だ。・・・わかるな?」念を押すように言う。

「はい。」十分わかっている。排除・・・殺されることもあるってことだ。

「わしらは、もうええ年じゃし今更に野心もない隠遁生活者じゃ。訪ねて来る者もほとんどおらん。・・たまに来る行商人くらいか。」他にはいないよなぁと思い出しながらなのかゆっくりと話すトルバーさん

「ということは、その力を使って草を消し飛ばしたということで間違いはないのね?」ルミーズさんはかねてからの疑問の解消が先のようだ。

それにはルーアが答える。

「はい。風を操作しまして草を飛ばして道を作りました。」

「そう。」疑問が解消したのがよかったのか一言返すだけであとはなかった。

「しかし実際に見せてはもらったが、俄かには信じ難いものじゃな。」トルバーさんとルミーズさんは二人で頷きあうように話しながら確認している。

「その魔法とやらは、わしらの様なものでも使えるものなのかね?」静かに尋ねるトルバーさん。その声からは魔法が使いたいとかの気持ちは感じられず、ただ魔法がどういうものなのかを知りたいという探求心であろうと思われる。

「確信はありませんが・・・・おそらくは使えるようになるのではないかと思います。」これは嘘ではない。確かに誰でも使える要素は十分にある。

「ほう。では具体的にはどうすれば?・・・・となるわな。」その通り。魔法が使えると知れば使いたくなるし、そうなれば、ではどうすればいい?とは誰でも考えること。

では、使えないと言ってしまったほうが良いのか?

現状ならばそれがいいのだろう。使えるのは俺とルーアのみだし・・・・今後増えるかどうかは未知数。

目の前の二人もだれにも言わないとは誓ってくれたが、漏らすのと漏れるのは違う。何かのはずみで明るみに出ることもないとは言えない。

今後俺たちが一切魔法を使わないのならば、別ではあるが。

「しかし先ほどの話じゃが、ルーアさん。あんた危険になるぞい。」ルーアにトルバーさんが厳しい口調で言う。ルーアもそれは解っているとは思うが、

「はい。でも少々のことでは負けませんので。」って非常に軽い口調で答えてるし・・・

「その魔法、一長一短なようじゃな?何やらブツブツ言ってからやっておったが、その言葉を遮られたらどうなるんじゃ?」真剣な顔で問い詰めるトルバーさん。

「言葉を遮られたら・・・・」問題ありません!って思わず口走りそうになるが想定の話がある。「言葉を遮られたら・・・まずいですね。」とテンションも落ち、たどたどしい答えとなるルーア。

「相手が本気で敵になるなら、投げナイフでも矢でも何なら投石でも遮ることはできそうじゃしのぉ。」う~ん確かに飛び道具は厄介かな。

「待ち伏せ、速攻、上手く行くかどうかは別にしてもいくつも手段はありそうじゃて。」

確かに呪文を唱えさせない方法ならいくつもあるかもしれず、成功すればこちらが危なくなるのだが・・・それは設定上の話なんだよ(ごめんねトルバーさん。)

実際はそんなことにはならないし、目や耳、口を塞がれても、想力には問題はない。

(ただ設定は守らなきゃだから)

「えぇ、ご指摘の通りです。」(ごめんトルバーさん。)

「ただ、現状ではこの力を使えるのは、おれ・・私達だけ。なので秘密を奪いたいなら生かしておくしかないとも言えますよね?」

少し考えたのか間があって、

「・・・それもそうじゃ。・・ただ奪えないなら、他に渡る前にと言うこともある。」

「ではどうすれば・・・」 IFで話し出せばきりがない。人の数だけ考え方がある。

「信じられる仲間を増やすしかない・・・ただこれも易いことではないしのぉ。」



結局この話に解答なんかない。今言えることは、俺とルーアの身を守るためには知られないことが一番。やはり最初の設定が一番よさそうである。

その後は久々の訪問でこれまでのことや他愛のない雑談、お互いの自慢料理などを披露しあって楽しい時を過ごし、一晩お世話になった。


翌朝

トルバーさん達に再度の再会を約束して、森に向かう。

ルーアを伴って俺がこの地に着た場所のその後を確認してみたいと思ったからだ。

今回は馬と言うこともあって、道程自体は時間もさほどかからない。木々の間も十分馬で進めるものであるし、起伏もほとんどない。ただ問題は沢沿いに進んだ経緯もあるので、そこだけを考慮して戻ればすぐにつくはずだ。特段特徴のある地形と言う訳でもないので正直記憶だけが頼りの面もあるが。


荷物もなく足として馬があり、何より頼りになる相棒のルーアもいる。今回の旅は孤独に押しつぶされることがない。それが最大の力だ。

ルーアに俺の居た世界のことを話しながら馬を進める。

気が付けばフクロウの声に悩まされた辺りを過ぎて、おそらくもうしばらく進めば積み上げてきた5基の石積み跡が見えてくるはず。



「この辺りでしょうか?」俺が馬を止めたのを見てすぐ後についていたルーアが声を掛けて来る。

「おそらくこの辺りだ。・・・ただ・・」周囲を見回すも痕跡が見つからない。進んでいるうちにずれてしまったのか?

「ちょっと待ってて。」ルーアにそう伝えると馬から降りて近くの木の枝に飛び移る。それを続けてある程度の高さに達すると視力を強化して周囲をもう一度確認していく。

右・・・左・・・前・・・後と隈なく探っていくとやや遠方で視界に異物が入ってくる。

(ん?あれは・・・)遠くてわかりづらいが、木々の合間に不自然な石積み。

(見つけた!)すぐに下にいるルーアに合図を送りその方向を指さす。

下ではルーアが両腕で丸を作って分かったと合図を返してくる。

ルーアが俺の馬の手綱を取って指さす方向へ進むのを確認しつつ、俺は木の上を石積みのあった方向に移動する。ルーアの位置と石積みの場所を確認しながら進むことおよそ5分ようやくその場所に到着式から地面に降りるとルーアも同時に到着する。

「あれが・・例の石積みですか?」確かに疑問を持たれるくらいに小さいものだがこの周辺には石などほとんどなく、これでも大きめの石を集めて積んだんだと力説する。

「あれが1基目で、あっちのが2基目」目と指で追いながら順に確認していく。

「で、3基目があそこにあって、あれが4基目・・・その奥が・・」と言っては見た者のその奥にあるはずの石積み跡が見つからない。

(あれ?・・ここからだと木の陰になるのかな?)

1基目と5基目の木にロープを結んで渡してあったはずだったが・・・

(あれ?渡してあるはずのロープが見えないじゃないか・・・) 

俺が半ば慌ててキョロキョロし始めたのを認めたルーアは馬から降りて俺の傍らに来る。「何か探していますか?」

「あぁ、おそらくあの木とあちらの木の間にロープを渡していたはずなんだが、それが・・・」とロープを渡していたはずの空間を右から左へと指で示しながら動かしていると切れたロープが地面に垂れているのを発見する。

「え?切れてる。・・・切られてる?」ロープの先端を見たくなった俺は垂れ下がったロープの先端を確認すべく駆け足でそれに向かう。

「あ!仁多様・・」俺が駆けだしたのを見てルーアもすかさず後を追ってくる。

「どうしたんですかぁ!」ルーアの突然の叫び声にも似た声に思わず振り返るも振り返った先には、森ではなくいつか見たジャングルの景色。

その時下半身に伝わる何かに掴まれるような感触(あ!ルーア!!)

掴んでいるものを見定めようと足元を見るが、あるはずの俺の下半身はそこになく・・

が、俺が進む速度に合わせて現れてくる下半身・・・臀部が出てきて太ももが出てきて膝が出てきて・・・ふくらはぎが・・・とそれを掴む手が見えて、

俺の足首は出現する頃にはその手の肘までが見え始めルーアの頭部が…首が・・・肩が・・・胸が・・・腰が

・・・・

全てがスローモーションのようにゆっくりと進んでいく。俺はそのまま地面に突っ伏した。


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