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出会い2

翌朝、目が覚めると少し体がだるい。「うーん」目が覚めた俺は固くなった体を伸ばすように精一杯に伸びをして体をほぐす。腕をグルグル回し、首をコキコキ、腰を回し、屈伸運動に簡単なストレッチも…いざというときに体が動かないのは良くないから。

目の前の焚火はほとんど燃え尽きてかすかに火種がくすぶっている程度。

(寝落ちはまずかった。けど何もなかったので結果オーライ。と思うしかないな。睡眠も大切だし)

昨夜は不思議なくらいの急な眠気だった。おそらくいろいろな出来事がいっぺんにあったため思ったより心と体が疲弊していたのだろう。何はともあれひとしきり眠れたし、少しだるさは残っているけど動けないわけじゃない。

昨晩と同じメニューで朝食を済ませ、あらかたの片づけを終えるとあとはひたすら待機。少なくともこの時計で12時までは状況を確認しておきたい。昨夕設置した石積みとロープに変化はない。

ということは昨晩のうちには”空間”は出現していなかったということになるのか。

出現していたらそれはそれで悔やまれることなのだが…

いつ出現するかわからない”空間”を待っていたいのだが、ただ待つだけではなく昨夜の捜索で見落としがないか周辺も気にかかる。集落なりを捜索するとして果たしてどっちの方向に進むのがよいのか。森の奥深くより、森の周縁部の方が集落か町に遭遇する可能性は高いと思われる。ましてや川などの流域ともなればその確率はもっと高くなるだろう。しかも今後のことを考えると水は必需品。夜露を集めるのも手ではあるが絶対量が違う。最低限沸騰消毒くらいはしたいし、移動となれば沢なりを探して沢沿いに下るのがベターか。

問題はその沢の水音がこの場所からは聞こえない以上、最初は闇雲に進むか行き当たりばったりで沢に行き当たる幸運に期待するしかないかもしれない。

(沢の水音か。犬とか狼ならここからでも聞こえるかな。ハハ。)

近くになけりゃさすがに犬とかでも無理だろうなと思いながらも、ついついそうだったらなと思う。

(ん?…本当に水の流れる音が聞こえ…る。あっちか?いやいや気のせいだろ。願望強すぎ。)

でも何だろ?耳がもぞもぞするこそばゆい感覚。そのこそばゆさを解消したくて手を持っていくとモサッとした手触りがし、これは耳に虫とか何か付いているのではと、払い落とそうと耳をパサパサと手で払うが落ちた感がない。おまけに耳が動かせているような感覚。俺の随意筋耳動かせたっけ?

(??? いやそうじゃない。見えないから…鏡、鏡 どこだっけ。)

荷物の中をごそごそとかき回してようやく鏡を見つけて耳を見てみるが

(何もついてない。)

念のため手で触っても

(違和感なし。俺の耳…だな。 何だったんだ・・・)

昨晩ほどではないが、急激な眠気が襲ってくる。

(いやいや今寝落ちするわけにはいかん。)

懸命に眠気と戦い今回は何とか勝利をもぎ取ったが、体のだるさが強烈に残る。ちょっと座って体を休ませよう。


腕時計は12時を指した。

これまでに”空間”は現れていない。石積みもロープも変化なし。さらに10分待つ。

(変化なし・・・心残りはあるが移動するか。)

メモ帳から紙を一枚ちぎってそこに伝言を記す。『町を目指します。』

鳴子を回収、ロープをしまって荷物を背負い、小銃を肩に掛け、山刀を左手に握って移動を開始…

(さっき沢の水音が聞こえた気がした。ただの気のせいかも知れないがそっちに行ってみるか。)

まあ、ある種の勘かもしれないし、そうだとすれば直感もあながち捨てたものじゃないし、素直に従ってみるか。そうして『聞こえた?』方向に進むことにした。


15分(=距離にして1km弱だと思う。)進むと偶然にも川に出くわした。

(勘が冴えてたか。)

川か沢かはこの際どうでもいいがひょいと飛び越せる程度の幅なので小川にしておこう。とにかくこれを下流に進めば、集落(=人がいる場所)へたどり着ける可能性が高い。

(何もなくて海に出るとか。さすがに困るけど…)

まだまだ川幅が狭いのでかなり上流であろう。ある程度の水流をたたえた川幅になるくらいは歩く覚悟でいないと…は、一日で着けるかどうかもわからないが、水の心配をしなくて済むのならインスタントでもアルファ米でもお湯を沸かして温かいものが食べれるというもんだ。これから歩く距離よりもその後の食事が改善されることに意識を持っていかれた俺だけど、ちゃんと周りは見てるよ。特に川の中とかね。運が良ければ魚とかも手に入るかもしれないし。いずれにしてもこの川幅でまだまだくるぶし位の深さではいてもメダカクラスか?せめて深みがあってアユ位の大きさがないと腹の足しにはならんから、先を急ごう。


更に下ること2時間。

ようやく、川だな。川岸が平らではないので、はなから飛び越えは試みないが、仮に平らだったとしてもギリギリかな。助走がないと無理な感じの2mちょっとある感じ。ところどころに深そうなところがあるのでああいったところにアユとかヤマメとかのいわゆる食べられそうな川魚がいたりするんだろう?

そんな立派な竿があるわけじゃなし、本当にどうやったら釣れますか?捕れますか?まあ、歩きながら考えましょ。


更に下って30分

ここまで来ればもう森というよりも林と言ったほうがいいのでは、空も見えるし、木々も少し低くなって間隔も広いし時折川岸に少し広まった箇所も見られるようになってきた。

(ん?あれは…)

まだはるか向こうであるが何やら家のようなものが・・・・家だ。

それも簡単な草や木を使った小屋のようなものではなく煉瓦か石のしっかりした造りのようだ。

(少なくとも一定以上の文化レベルはありそうだな。急に襲われるようなこともあるまい。)

少なくともジャングルでは未開の部族も居たりする。そういった部族は外部からの人間に大いに警戒心を持つものも居るので場合によっては有無を言わさず襲われることもないとは言えない。

しかしながらはるか先に見える家は、文化的に見えても住人などの様子がわからない以上は何か起こることを前提に警戒はしておかなければならない。みんながみんな善人とは言えないのでね。

ということで逸る気持ちを抑えながらゆっくりと件の家に近づいて行った。










お読みいただきありがとうございます。

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