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ヴェルムヘルム領 10

ヴィラムの森はその昔からそこにあった。

確度に問題はあるがそこには様々な逸話も多く存在する。もちろんそのうちの一つがルーアの語るヴィラムの森の話なのだが、要旨としてはこううだ。


ヴィラムの森には何者かが存在し、人の入森を拒んでいる。その禁を犯すと、得体のしれない何者かの力によって、人は狂い森の中で消える。万一戻って来れたとしてもやはり狂人として訳のわからない言葉を発しながら狂い死にをすると。そしてこの世界の人はそれを森の神の仕業と・・・

森に近寄らなければ・・森に入らなければ人は平穏に暮らしていける。が、時に森は自らも牙を剥くという。

森の周辺の人々を惑わしあるいは森の魔の力を使って襲い、森に捕らえるのだと。

「で?ルーアは実際にそう言った人を見たのかい?」

「いいえ。今のところは見ていません。ですが、何人も行方不明になっていると・・・」

「誰に聞いたの?」

「私の村でも長老や村長が、・・あ!父も母も・・あとっメイドの間でも噂で・・。」

「だから、実際には会っても見ても居ないということだよね?」

「・・はい。そうです。」勢いが削がれ肩を落とすルーア

「いいかい?ルーア。」ルーアの目を見つめて諭すような態度で・・・

「ドン!」と突然の大きな声を発してルーアを驚かす。

「キャッ!」

「♬ と鳴った花火がきれいだなぁ~♪」

「なんですか! それ!」まあ怒るわな真剣に話すと見せかけて・・だから

「緊張してたようなんで、歌でほぐしてあげようかなって思ってね。」意地悪な笑顔を向けてもまだぷんぷんと怒るルーア

「ごめんよ。でも少し気分が変わったろ?」俺の言い分に首を傾げながらも

「・・・・まあ、そうですね?‥でももうやめてください。ドキドキしてます。」

「ああ。もう『ドン!』「キャッ」・・・は言わないよ。」(へへ)

「・・・って言いましたよね?・・今。」

「もうこの言葉は言わないって意味の・『ドン』ね。」さすがに今度はドンを強調しない。


「これから言うことは絶対に他言無用。万一誰かに言ってしまうと君を()()しなければならなくなるかもしれない。」『ごくり』と生唾を飲み込む音が聞こえるほどの息遣いのルーア

「・・では、聞かないという選択肢も・・・・ありますか?」助けを求めるような目?

「もちろん。しかしその時は俺の専属メイドではなくなるし、これまで通りの一般メイドに戻ることになるよね?」専属メイドにどれだけの魅力があるのかは不明だがかなり立場に差があるという。

「・・はい。」

「いいことと言えば君が怖がる第3の候補地に行かなくても済む。」

「・・そうですね。」

「という感じだけれどどうする?」少し逡巡する様子を見せて

「・・判断しかねます。その話を聞けば私はどうなりますか?」

「他言しなければ問題ない。それが仮にエレノアさんでもエミリーでも。」

(エレノアさんは、知っているから言っても大丈夫だけどね。覚悟の問題だし。)

「ヴィラムの森についての話なんですよね?」

「そうだよ。」しばらく無言の状態が続く。ルーアはしっかりと俺の目から視線を外さず意味をくみ取ろうとしているようだ。


「決めました。」決意に満ちた表情でルーアが言う。俺は黙って次の言葉を待つ。

「誰にも言いません。話して下さい。」

俺はゆっくり頷くと、右手でこっちおいでとルーアを呼び耳元にひそひそと話しかける。

「俺はそのヴィラムの森から来たんだ。」

「え~~~っ!」いったん俺から離れて距離を通りまじまじと俺の顔を見るルーア

「『ドン』みたいな脅かしじゃないですよね?」にわかに信じられないというのは仕方ない。

「『ドン』じゃない。真実だ。」俺の言葉に誰もいない部屋の中をきょろきょろと人影がいないか改めて確認するルーア

「仁多様?・・どっかおかしいとか?・・・どっこもおかしくないんですか?」普段なら失礼なんだろうがそんなことを言いながら頭の先から足の先まで執ように見てポンポンと叩いて確認してくる。

「ああ、幸いね。あの森の中にいた時でさえ特に変わったこともなかったよ。」

首を横に振りながら「信じられません。」とルーア

「まあ、何にせよそれが事実で俺はこの状態。さあ信じるか信じないかはルーア次第だけど、聞いた以上は他言したら・・・」その言葉に息をのむルーア

「・・命が無くなるんですね?」悲痛な表情

「そうだね。正解!」ルーアの表情とは対照的にあえての軽い返事で軽めに流す。ルーアには軽くないだろうが・・

(そもそもルーアを害する気持ちはないけどね。おおよそ予想は付いてたし。)

「そうだとして・・」ひととおり彼女なりに確認できたのか話を切り出す。

「私がそこで何もないとは・・かぎりませんよね?」

(まあ、現実的にその不安は付きまとうだろうけど・・だね)

「それは、大丈夫なんだけど、信じてもらうしかないね。」トルバーさんの夫妻の例もあるし、何より俺の直感が問題ないと判断している。

(この直感は信じられる)その何というか、根拠のない自信ではあるが俺の根拠


「それじゃルーア。結論は出た。でいいね?」

「はい。それでも、一つお願いがあります。」言って良いものか迷っているようだったが意を決した様子。

「ん?お願いとは」

「実は・・シュミンを覚えていますか?」

(シュミン・・・シュミン? 正直なところ覚えて・・・最初にルーアともう一人のどちらかという話になったあの娘か?)

「で、そのシュミンがなにか?」

「彼女も連れてはいけませんか?」さすがに予想外だよ。そもそも俺って稼ぎないのよね

知ってる?ルーアちゃん。


「仮に。仮にだよ。シュミンを連れていくことになっても、まずエレノアさんが許可するかどうか?」

「それに、さっきの話をシュミンにもしないといけなくなるけど大丈夫なの?」

「あと。これが一番大事なことと思うけど、俺お給金二人分も払えないよ。」

マイナス要素を思いきり連ねることになったが、ないものはない。ルーアに呆れられたかもしれないが今回はパス。また次の機会にでもお願いしようと思う。


「おはようございます。」朝食に呼ばれたので行ってみるとエレノアさんとエミリーが先に居た。当然のようにBPも。

(え~。一段と大きくなった?)そんなに日にちは立っていないのに一日ごとにみるみる大きくなっているように見える。気のせいかとも思ったが。

(日々成長しているんですよ)とでも言ってるな、あの表情。俺が何気なく思ったことを感じ取って即座に反応してるんだよBPが。

「おはようございます。仁多さん。」エレノアさんが挨拶を返してくれると、エミリーも同様に

「おはよー。マコト」と朝から元気いっぱいのようだ。

案内されるがままに席に着くと、次々と皿が並べられていく。

パンは中央の皿にあるものを取り分けで、あとは野菜サラダにスープ、に副菜が少々。

しかし朝から色とりどりでしっかりと食事が摂れることは幸せなことだ。

ここを離れるとは言ったがそういうことまで考えていなかったし、実際生活を始めると思うといろいろとかかることを失念していたよ。

ルーアが俺の食事を取り分けてくれながら、そっと俺の顔を見て来るんだよね。

「エレノアさん。昨日の話の続きなんですが・・」唐突だが用件を切り出さないとね。

「どこにするか決まったの?」エレノアさんがスープを掬う手を止めて応える。

「どこにするって?・・なに?」気になったのはエミリー。昨日の話を聞いてないからね。

「仁多さんここを出て暮らしたいそうよ。」俺の代わりにエレノアさんが

「え~なんでよ。BPもこともあるのに?」出ていくというのが意外だったのか、確かにBPの問題もあるにはあるが・・・BPはたぶん問題ない。その証拠にBPはすぐに返してくる。

(たまには顔を出すんでしょ?)

(そうだね。そうなると思うよ。)

「エミリー。食事が終わったら少し話さないか?」これまでの検討結果を試したいし、いろいろと話しておかないといけないとも思う。

「いいわよ。私の部屋・・はまずいよね?」エレノアさんの反応を伺うエミリー。

エレノアさんは何とも言えない笑顔で、

「そうね。うら若き乙女が男性と一つの部屋はまずいわね。」言いながら俺の方にも視線を向ける。

(いや、俺は・・)

「・・ハハ」乾いた笑いで返すしかないよね。

「私の執務室ではどうかしら?」

「私はそれで構いません。」

「私もそれでいいわ」食事後は執務室に集合である。






ルーアが秘密に触れた。まだ入り口だけど

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