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ヴェルムヘルム領 8

玄関に向かう途中の部屋から、エレノアさんの話声が聞こえる。まあ、既に人レベルの聴力ではないので扉を介していても、扉や壁に耳を当てることもなくごくごく普通に会話内容まで聞き取れてしまう。

(話の相手は・・こえの感じからして・・あの男・・・デミットとか言ったか?一方的に話しているようだが・・・)


そんなことにはお構いなく部屋をノック。

部屋の中の話声がぴたりと止む。「だれだ!」とデミットの声

「あぁすまない。仁多です。」声での反応はなかったが、即座に扉に歩み寄る足音。

暫くすると、内側から扉が開けられる。やはりデミットだ。デミットが扉を開けた姿勢で俺の前に立つ。

「どうかされましたか?」先ほどの「だれだ!」の口調とは別人かと思われるほどの変貌ぶり。

静かな口調で尋ねるように聞いてくる。

「いやぁ。着くなりいきなり部屋に案内されたんだけれども、エレノアさんと今後の話をしておきたいと思っていてね。」いいかな?とデミットを伺うと、デミットは後ろを振り返ってエレノアさんに顔を向ける。

その姿勢の変化にデミットの陰になっていたエレノアさんが立ち上がっている姿が俺の目に入る。

「仁多さん。どうぞ入って。 デミット。いったん空けなさい。」

エレノアさんのその声に張りはないが、デミットは俺を部屋に通す様に体を横によける。

俺はその空いたスペースに体を滑り込ませつつ部屋に入る。

「手短にお願いします。」丁寧だが少々圧がかかったような声ですれ違いざまにデミットが俺にささやく。

もちろん俺はスルー。執事?に指示される謂れはない。

「要件が終わり次第ね。」その言葉には反応せずそのまま部屋を出て扉を閉めるデミット。

そのまま俺はデミットにも注意を張る。案の定、扉の向こうに立ったままだ。

(これはおそらく聞き耳を立てているな。・・・まあいいか。)


俺は扉が閉められるとエレノアさんの前に立ち、エレノアさんが座ってくれるのを待った。

「ふう」立ったまま執務机に手を付いたエレノアさんは大きなため息をつくと俺の顔を見て話そうとする

「あのね?・・・」俺は人差し指を唇の前に立てて『話さないで』のサインを送る。

ゼスチャーは決して各国共通じゃない。ましてやこの世界とは文化も違う。が通じるもんだ。

単に意外な行動だったから言葉を封じる結果になっただけかもしれないが・・・

そのまま振り返りもせずエレノアさんと向き合ったまま親指で背後の扉の方を指し示す。で耳に手を当てて『扉の向こうで聞いてますよ』と伝える。

エレノアさんはしばらく無言無表情であったが、解答にたどり着いたのか、大きく一度頷いた。

「エレノアさん。俺いろいろとやりたいことがあるのでここを出てどこか郊外に拠点が欲しいんですが、町のはずれとかにちょうどいい場所ありませんか?」扉の外のデミットに聞こえるように少々大きめの声で話す。エレノアさんはどうこたえてよいものや迷ったようだが俺が頷いて見せるとそれに合わせるように「そうですか?仁多さんがそうしたいのなら無理に引き留めは致しません。郊外のご希望の場所ですが早急に手配しましょう。」と合わせてくれる。

この会話で正解かどうかは不明だが、デミットにとって俺が近くにいない方がよいのは間違いないと思う。

「ええ、お願いします。なるべくこの町から遠い場所で静かなところがいいですね。」

「なるべく遠くて静かなところ・・・ね?」

「それで、厚かましいんですが荷物を運ぶ馬車と馬。・・・えっと後はどなたか一人手伝いを付けていただければ助かります。」

「フフ・・よろしくてよ。手伝いには希望があって?あと当面の生活資金ね?」

「ええ。もちろんです。お金は必要ですから。手伝いは・・当面働いてくれれば誰でも結構ですよ。」

こんな会話をしながら、俺は手や表情で話を合わせてくれるよう忙しく動く。

「わかりました。では検討しましょう。」その時扉の前からデミットの気配が動く。

どうやら話が終わって俺が出てくるとでも思ったのか、扉から離れて行った。

デミットがいなくなったことを確信した俺はエレノアさんに小声でささやく。

「デミットが離れました。しばらくは大丈夫でしょう。」

「そう? それで、あなたの話はどこまで本当なのかしら?」先ほどの会話の真偽を問うている。

「いいですか?・・・」俺はしばらくエレノアさんに要求と計画を話した。

この館の外に、これは本当に離れた場所に拠点を構えてヴァンス家とは距離を置いていることをアピールすることを主眼にした計画を話す。

エレノアさんはその計画を聞き、若干怪訝な表情をしたものの馬と馬車は先の事件の戦利品として余剰分から、資金も併せて付けてくれることを快諾。手伝いにはルーアを当分の間派遣してくれることで決着した。ルーアに関しては俺がここの館について後から顔を出していないことの違和感を感じて何かあるならばと余計かもしれない気を回した結果ではあるが。

それこそこれらの話『手短』に済ませてエレノアさんの執務室を後にする。と廊下の先からデミットが歩いてくるのが見て取れた。

「随分と話しこまれていたようですね」誰にとも分からない声量で問いかけて来る。

「ああ、この館を出ようと思ってね。最後にちょっとおねだりをね。」ニコリと含んだような笑顔を向けると、デミットも反応する。

「ふっ。それはそれは・・で、どちらへ?」

「まだそこまでは決めていなくてね。・・そうだ。きみ。どこかいいところを知らないかい?」

「いいところですか?・・どのようなところをお望みで?」

(おいおいちょっと笑みがいやらしいんだが・・)

「人の出入りのない静かなところがいいんだが・・どうだ?」

「そうですね。生憎私には心当たりが・・・失礼しました。」


どうもデミットは欲で動くタイプらしい。こういう相手ならこっちも同様ですよ。という雰囲気を醸し出せば・・・欲を満たせる条件を提示できれば御せると考えるようで、たとえばお金などで買収が容易と判断するようだ。

なので、こちらも欲がありますよをアピールしたわけ。まあ、これで当面は目の敵にされないかな。


その一時間ほどの地、メイドが俺の部屋にやってくる。

扉がノックされ、「仁多様。奥様が執務室でお呼びです。」

(ほう?・・・・早いね。)

「うん。わかったすぐに行く。」俺は寝転がっていたベッドおから飛び起きて扉に向かった。







?  ???かな?

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