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ヴェルムヘルム領 2

「大休止!」

バロウズ隊長の号令に先頭馬車から順に街道横の広場にゆっくりと入り、1号車から順に5両が前後の間隔がない程の状態で直線状に停車する。

わらわらと下車してきた家人たちは早々にテーブル、椅子を用意しエレノアさんとエミリーの休憩場を設置する。と併せて軽食と飲み物がテーブルに展開し気付いた頃にはもうゆったりとお茶の時間。もちろん俺もお呼ばれしており、エレノアさんの側にはヤルマークとサーヤが付き、エミリーにはメルカ、そして俺にはルーカが付いている。BPはエミリーの傍らに寝そべり時折エミリーが与える菓子を口にしては、次を寄越せとばかりに「みゃーみゃー」言っている。


少しい離れた位置ではバロウズ隊長ら騎士たちが集って何やら話しながら簡単に菓子をつまみ、水筒から水を飲んでいるのが見える。

(ん?ロットヘルムがみえないけど・・・)

どこに行ったのだろう?街道に沿って視線を巡らせば進む先から一頭の馬が駆けて来るのが見える。

(・・ん~と・遠視。  あれは・・ロットヘルムか)

見る見るうちに近づいてきて少し手前で速足に戻る。

「どう、どう」馬係のニックがロットヘルムから馬を受け取り、飼葉と水場に連れていく。

馬を降りたロットヘルムは、素早く騎士たちが集まる場所を認めるとバロウズ隊長の前に進み何やら報告をしている。

特段焦って報告をしている様子は見られないが、何となく緊張感が感じられるのは普段からの規律がものをいうからか?

報告の終わったロットヘルムの肩を後ろから抱え込むようにして、こっちだというようにタルカスが空いたスペースに誘って「菓子でも食え」とでも言っているのだろう。

しばしの休息を各々がそれぞれの場所で満喫していた。


一方、あらかたの飲食を終えたメインテーブルの我々は、ヤルマークの指示によってシュミンが中心に展開したテーブルの回収を始めており、エレノアさんと俺は邪魔にならない場所に置き直した椅子に腰かけてエミリーとBPが遊んでいるのを微笑ましく眺めている。

エミリーが「拾ってこい!」と放り投げる木片をBPが見事なグリップで地面をつかみ猛ダッシュで取りに走る。

違えず放り投げて木片を探して咥えて戻りエミリーの手前にポトリと落とすと地面に伏せる。

(ん~?まるでフリスビー犬みたいだな。)

そんなこんなを何度か繰り返していたエミリーとBPであったが、少し疲れたのかエミリーが我々のところに戻ってきて用意された椅子に腰かけると、BPもエミリーに付き従って戻ってきてエミリーの足元に先ほどのように伏せて(と言うより今回は寝そべってだな・・)ゆっくりとした様子を見せる。

メルカから飲料を受け取り一口二口飲み進めるエミリーに声を掛ける。

「BPとはかなり親密になってきたようだね?」

「ええ、そうね。BPが何をして遊びたいのか何となくわかるのよね。」

「へー。それはすごいね。 じゃあそのうちもっとはっきり解るようになるかもね。」

(エミリーにBPが何を言っているのかが解るようになれば素晴らしいけどねぇ・・)ちょっとその世に力を込めて願っときましょうか。うん。そしておまけに

(BPもエミリーの言ってることがしっかりと理解できるようになればいいな。)これも同じくちょっとしっかりねがっとこう・・・と。

(ありがとう。まこと・・でもね。もうすでにしっかり理解できてるんですよ。)

「ん??  えっ?」思わず声に出してしまって慌ててエレノアさんとエミリーを見る。

(いや。この二人はしゃべっていない・・・と言うことは・・・)

視線を落とすと、エミリーの足元で寝そべっているBPの視線だけが何故か俺を直視していた。

(ひょっとして?いまのBP??・・・まさ・・・か・・ね)

BPと視線を合わせたままそう考えてしまった俺だが・・

「どうかしたの?」先ほどの俺の突然の驚いたような発言にエミリーが反応する。

視線をBPからエミリーに切り替えつつ「あ。いや、・・何でもないんだけど・・ちょっとね」と誤魔化すもその足元では俺と同じ様に視線をエミリーに切り替え、エミリーを見上げた

BPが「みゃあーお」と彼女に話しかけているよう。

「ん?・・BP?・・そうね。変よね。」とBPに返事

「ぴあー」

「BPが「変なの。」て言ってるわ。」エミリーが俺に向かってそのように言ってくる。

「えーっ?BPがそんなこと言ったのかい?」

「そうよ。まことが変な声だして変なの。ってことでしょ。」

(うん。・・・俺にもそう聞こえた・・・)

「へ~エミリーはいつの間にBPの言うことが解るようになったのかしら?」と二人と一匹のやり取りを見ていたエレノアさん

「前は何となくだったけどね。いまはけっこうわかるかも。」ちょっと得意げに答えるエミリー

(いやいや、おそらくしっかり解ってるよ。今の様子じゃね)

BPも日に日に足腰はもとより体の大きくなってきている。とは言えまだ子猫と言えるが、立派な姿が幻視できるかのようだ。

俺はちょっと試したくなってエミリーに声を掛けてBPから少し離れたところに来てもらった。

BPは先ほどのところにじっと寝そべったままだが、耳と視線はしっかりとエミリーを追っている。

「エミリー。ここから声を出さずにBPにゆっくりとこちらに来るように念じてみて。」

俺の言ったことを不思議に思ったのか首を傾げるエミリー

「ひょっとするとね。エミリーとBPは心でつながれるかも知れないと思ってね。」テレパシー的なものを思いついているがここの人に行っても伝わりそうにないためあえてこのような言い方にしてみた。

「心で・・ですか?」

「そう。心で」(解るかな?このニュアンス)俺はにっこり微笑んでやってみてと促す。

「BPにゆっくりとこっちに歩いておいでと言う・・・ではなくて・・思うだけでいいのね?」

俺は黙ってうなずく。あえてBPの方を見ないように

エミリーはそういうとBPの方へ振り向こうとするが、俺がゆっくりと首を横に振って制止

エミリーはその姿勢で止まったまま目線を少し情報に泳がせる。

俺の視界の端にBPがゆっくりと立ち上がってこちらに向かってくるのが見える。が俺はまだBPに視線を向けない。

やがて、BPがエミリーの前にやってきてエミリーの顔を覗き込んで視線を合わせると、エミリーがBPに抱き着いて「えらい!えらい!」と大喜び。

その抱き着かれているBPは俺の方をちらっと見て「がおっ」と短く口にする。

「ん?ごめんね。」エミリーはBPの『がおっ』に応えた様だ。

(俺には、「何をさせるの」って聞こえてたからね。)


それからしばらくの間はエミリーとBPは一言も話さず時折目線を合わせてはエミリーがにこっと微笑んだり、BPが何やら始めたりどうも二人で心の会話を楽しんでいるようだ。

俺的にはテレパシーなんんだけどこの現象どうも声にしなければ当然エミリーが何を思ってるかは俺にはわかりようがないし、BPの心?の声は俺には漏れてこなかった。と言うことは一つ。BPは指向性を持ってテレパシーを使えるんじゃないかという結論に至ったのだが・・

「ぴあー」突然BPが俺に視線を送り声を出す。(正解・・ですか。)



 




これでまたBPとエミリーのきずなが深まりそうです。

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