ニヤマーシャ 17
全員への紹介のあと、一人ひとり紹介される。
まずは騎士隊長のバロウズ 30代後半くらいのすらっとした偉丈夫。赤みがかった少し長めの髪にやや切れ長の目言わずともがっしりとした体つきは騎士というよりも力士かと感じるほど。と、表情は非常に優しげな笑みを浮かべてはいるが何となく俺の値踏みをするような鋭い視線が突き刺さる。
(これは制服なのか?騎士職と思われる人たちの服装が男女の差こそあるものの統一感あるなぁ)
「初めまして、仁多殿。バロウズと申します。紹介の通りヴァンス家騎士隊隊長を務めております。以後お見知りおきを。」
(低音のナイスボイスだな。気圧されそう…)
「初めまして、バロウズ隊長。こちらこそよろしくお願いします。」ととりあえず丁寧に日本的にお辞儀を入れておく。
「いやいや、頭を上げてくだされ。何やら恐縮する。」どうもこのお辞儀という習慣がないせいか受けたほうが慌てるようだ。即座に反応が起きる。
「いえ、こちらこそ失礼をしました。これが我が国での習慣なものですからつい出てしまいまして。」半分わざと織り込んだお辞儀ではあったが、相手には意外に映るようで悪い印象を与えるものではないようだ。
「こちらにはない習慣がたまに顔を出すことがあるかもしれませんが、皆様にもご了承のほどを・・。」
他の人たちも視界に収めながら断りを入れておく。
次に紹介以されたのは、騎士のタルカス。20代半ばと思われる男性 バロウズともに赤味がかった髪をしており身長も私より少し高め全体的に細マッチョと言った印象。
「タルカスと申します。」静かに一言名乗るとスッと頭を下げる。これにはこちらもつい誘われて同じく下げ「仁多です。」と言ってしまう。
「ハ、ハ、ハ 仁多殿。御仁は客人であるのだから黙って受けられればよろしいのですぞ。」
「バロウズ隊長。悪気も何もないのですが、やはりつい習慣で・・・。」との私の応えに
「習慣とは怖いですなぁ。ハハハ。」
(こっちもわざとじゃないし。そこまでにしてくれ。。)
次に紹介されたのは女性騎士だ。女性の年齢は見た目でわかりにくい部分もあるがおそらく20代半ば?(外すと怖いかもしれないので深く考えない。)青みがかった髪でクールな印象を受ける身長は俺と同じ位か少し低いかもしれない。凛とした立ち姿に思わず緊張を強いられるほどの圧を感じる。
「ソラムです。女性騎士隊の隊長を務めております。」そう言うと軽くサッと腰を折る。
(・・もう釣られない。)俺は強い意志の力で習慣で動こうとするお辞儀の動作を封じ込め、
かろうじて頷くのみに留めることに成功した。(よし!)
次いでロットヘルムの紹介を受ける。(先頭を行ってた人だ。この人は知ってる。)
「ロットヘルムです。」紫味の強い黒髪の彼は20歳前後と思われる。まだ幼さが残る容姿とは裏腹に鍛え上げられた体躯は立派だ。タルカスと同様細マッチョ系に属するのか?彼もまた名乗ると俺に軽く会釈をした。
次は(おなかをすかせた女性騎士だったか?)
「キュリアです。」淡い桃色がかった髪を後ろで一つにまとめており、どことなく人懐っこい笑顔で名乗ってくれる。歳の頃はまだ20歳にもなっていないかもしれない。一目見て若いなぁと感じるほど元気がほとばしっている。そこはロットヘルムも変わらないのだが彼の方が少し落ち着いた感を醸し出せているのは数年でも年齢が上だからであろうか。
「以上が今回の帰還に際して護衛任務に就く我が領の騎士たちです。」
騎士の紹介を終え、次に執事に目を向けながらエレノアさんが告げる。
すると、執事が一歩前に出て軽く会釈をする。
「初めまして仁多様。ヴァンス副家令のヤルマークと申します。此度はエレノア様、エミリー様をお助け頂きありがとうございました。」そう言い終わると今度は深い一礼。白髪だが、年齢からの俺たちの世界の老けからくるものでは決してない。年齢は30を過ぎた頃か?
こちらの世界の男性はがっしりした体躯の持ち主が多い中、線の細い体つきで一見弱弱しくも見えないこともないが、いざ目を合わせてみると何かしら気圧される迫力のようなものを持っている。
「それでは引き続いて私の方から紹介をさせていただきます。」ヤルマークはそう言って隣の女性に目をやる。
「サーヤ。」呼ばれて女性が一歩前に出る。「エレノア様のお付き、家政婦長です。」
紹介の終わりに合わせてサーヤはスーッと流れるように一礼をすると一歩下がり元の場所に立って元の状態へ。
「メルカ。」同様に一歩前に出る女性「エミリー様の専属侍女です。」彼女もまたスーッと前に出てきたかと思えばいつしか元の場所に戻っており動きが非常に滑らかだ。
ここまでの紹介で少し間があいた。どうしたのか?とヤルマークを見ればエレノアさんに目で伺いを立てているようである。
その問いかけにエレノアさんはゆっくりと軽く頷き返すと、ヤルマークは残る二人の女性に目を向ける。
「シュミン!。ルーカ!。」二人まとめて名前を呼ぶ。「「はい!」」短切な返答のあと二人そろって前に出てくる。「2名はメイドです。」ヤルマークはそう言って二人に頷いて見せ、続けるよう促す。
「シュミンです。」
「ルーカです。」
ザッ と音が聞こえそうなお辞儀をすると元の位置に戻って姿勢を正す。
(なんか呼ばれないと思ってて慌ててるのが手に取るような…だな。)そう思って思わず俺は笑みをこぼす。
そんな様子をエレノアさんはみていたのか。はたまた最初から考えていたのかヤルマークを手招きすると寄ってきたヤルマークに何やら伝える。
「・・ふむ・。」少々考えるように動きを止めたヤルマークはしばらくして、エレノアさんに何やら返答しているようだ。
一連のエレノアさんとヤルマークのやり取りが終わるとヤルマークは元の立ち位置に戻り、シュミンとルーカに向き直ると少し笑みを湛えながら二人に言った。
「この滞在期間中、仁多様のお世話をする専属を付けます。」
話の内容が理解できた二人は思わず顔を向けあうと二人同時に頷いてまた前を向く。
「「え~っ!」」思ったよりも大きな声が室内に響く。
これにはさすがのヤルマークも思わず耳に手を持って行ったほどだ。俺も例外ではないし、騎士たちもエレノアさんも同様だ。
「シュミン!‥ルーカ!。二人とも声が大きいわよ!!」大声に驚くBPを宥めながら二人に小言を言うのはエミリーだ。
「BPがせっかくゆったりしているのに。…許さないわよ。」本気のトーンではないが若干とげが含ませてあるのだろう、二名には効果的だったようだ。
「「すみません。すみません。」」エミリーに向かってペコペコ忙しなく頭を下げている。
その様子をしばらく見ていたエミリーは、にっ と笑うと
「ルーカ?・・あなた、仁多さんに付いたら?」
「わ・・・わたしですか?」上ずった声で応えるルーカさんと対照的にガックシ肩を落とすシュミン。
(ど?。。どう言った反応…なんだ?‥‥これ?)
「それもありかもね。」エレノアさんがそう言ったことですべてが決まる。
まだ若干騒がしい中ではあったがヤルマールが宣言する。「ルーカは仁多様の専属としてお世話に付くように。」
「・・はい・・」
よくわかりませんが、ルーカさんが仁多の専属メードに就いちゃいました。で、専属って何?




