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ニヤマーシャ 16

(お!先行騎馬が走り出したな。)

 ヴァンス家の一団を観察していると先行していた騎馬のみペースを上げ正門に向かってくる。

 もちろん門の方も十分前に知っているので解っているとは思うのだが、様式美とでもいうのか一段を停止しないように手を打っているのであろう。門の方からも3騎が迎える形で出発しておりもうすぐ中間点で会合するであろう。

 俺達が入門するときもあんな感じで進んでたんだな。きっと

 と思いながら見ているうちにヴァンス家の騎馬と門側の騎馬が会合し話が始まる。

(うんうん。なになに?)

「ニヤマーシャ警備第2副班長ムスカル。所属と要件を!」

「ご苦労!ヴェルムヘルム領ヴァンス家 騎士 ロットハルム。ニヤマーシャへは主人の出迎え。」

 ここまでは一応名乗り合いということで大きめの声なんだ。

「これはこれは遠路お疲れ様です。話は伺っております。」

「これは話が早い。我らは乗馬騎士5名。馬車3両後方2両に家人8名が乗車。入門を許可されたい。」

「うむ。少々お待ちを。」ムスカルは従騎に目配せをして各馬車の点検にい向かわせる。

 それに合わせてロットハルムは右手を掲げて後方の4騎に合図を送る。

 4騎からもそれに合わせて了解の合図が、同じように右手を上げて返信がされる。

 ロットハルムとムスカルはその場で馬を止めて後続を待ちつつ、道中の様子などを話しているようだ。

 こういった情報交換が町の、あるいは道中の危険排除の一助になる。何か異常があれば町から討伐隊の派遣やら、一行の道中の警戒を厳にしたりと情報は大切なのである。


 ヴァンス家本体にたどり着いた町側の従騎2騎は、ヴァンス家の本体の前で左右に分かれて、ヴァンス家の前を行く4騎に挨拶をしながら素早く馬車の中を左右から覗きながら確認を進める。列の後方まで抜けると異常がなかったことを無言でお互いに頷いて確認しあうと来た時と同じように馬首を返して列の左右を今度は前方に走る。先頭の4騎を追い抜いて道上で合流しながら更にムスカルの下へ走る。

「異常ありません。後方2両の馬車に8名乗っております。」従騎2騎はムスカルにそのように報告するとムスカルの脇やや後方に馬を並べつつ隊を組む。

「うむ。ご苦労。」ムスカルは2騎を労うと、ロットハルムに向き直り、

「では、門にご案内いたしましょう。」と先導する隊形に移動し後続のヴァンス家本隊を待ち合流に

 合わせて駒を進めた。


「かいもーん!」貴族門の手前まで駒を進めたムスカルは門の手前で声をかけると、門はすーっと開いて一行を迎え入れる。門をくぐったところでムスカルと従騎は素早く騎馬を右手に寄せ通路を開ける。開いた通路をヴァンス家の一行が町の中へと入っていった。

 ヴァンス家の一行も町へ入ったことであるので、そろそろ戻るか。



夕刻になって自室でくつろいでいると、扉がノックされ入室を許可すると従業員が入ってきて、エレノアさんから「皆に紹介をするので応接室に来るように」との言伝を受け取った。

従業員に外で待っていてもらい、買いそろえたこちらの服に素早く着替えを済ませると、応接室まで先導してもらう。

応接室の前まで行くと扉をノックしすぐに返答があった。

「仁多です。」

「どうぞ。お待ちしていました、入って。」その声が終わるや否や扉が中からメイドによって開かれ執事が正面に立って待っている。

「どうぞ。こちらへ。」恭しくお辞儀をされて、エレノアさんの正面のソファを勧められる。

あらためて室内を見渡すと正面のエレノアさんとエミリーもソファから立ち、部屋の両サイドには先ほど見た騎士が左に2名、右に3名、扉の脇に先ほどのメイド2名と執事だ。

「どうぞおかけになって」エレノアさんの勧めで俺は手前のソファに腰を下ろすと、エレノアさんとエミリーも同じく腰を下ろす。

(遠目で見ているときと迫力が違う。そんなに見られると睨まれてるようで…怖)なんて考えてはいたが俺なりに堂々としないといけないと思いそんな感情をおくびにも出さないよう懸命に努力。

「皆に紹介します。」その声に思わずソファから立ち上がってしまう。

(あー「紹介する」といわれてつい立っちゃった。・・・よかったかな)

恐る恐る周りを見てみると、突然の俺の行動に逆に騎士たちの方も剣の柄に手を添えてしまっており、何かあれば抜刀という勢い。

(これはやばいシチュエーション  謝るのが先!)

「すみません。「被紹介者」は立つものと思ってつい・・立ち上がっちゃいました。」その勢いにお辞儀を組み合わせて日本風?の謝罪。これには周りの者たちが呆気に取られた様で、かえって固まってしまった騎士さんたちへエレノアさんが黙って手で制するしぐさで騎士たちの警戒を解かせる。

それに応じて柄から手を放し元の姿勢に戻る騎士たちを確認しつつ、

にっこりと微笑みながら「座りましょう」と俺に着席を促す。

(いやー、やっちまった…だわ。)

恥ずかしくて顔から火が出そうだが、一生懸命笑いをこらえようと努力するエミリーが我慢しきれずくすくすと笑ってくれたことで、釣られるようにエレノアさん、メイドさん、執事さんとくすくすと笑い始めてくれたので少し気が楽になった。

「すみません」もう一度驚かせたことを詫びながらソファに腰を下ろす。

ひととおり場が落ち着いたところで、エレノアさんが改めて紹介を始める。

「こちらが、私たちを野盗の襲撃から助けてくれた仁多さん。お礼を兼ねがね当家でしばらく逗留していただきます。」

エレノアさんの宣言に、一同姿勢を正し「「 はっ!(はい!)」」と応える。

どうやら異論は出ないようなので、しばらくのヴァンス家での逗留が決まった。








次回は紹介ばかりかな?

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