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ニヤマーシャ 12

 今俺はエレノアさん達の従者だ。

 という訳でそれらしいくやり取りしなけりゃいけないんだろうけど、今一つわからん。

 とりあえずはお釣りを返して、荷物(串)は持っていればいいんだよな。

 人前でもあるわけだし、それらしく。それらしく。

「お待たせしました。只今戻りました。」(余計なことは言わず、エレノアさんの対応に任そう。)

 俺が戻ってそう言うや否やエレノアさんもエミリーもサッと立ち上がると周りの人が気付かないくらいのほんの僅か気持ち顔を包みに近づけて香ばしい香りを吸い込んだように思える。

(真正面だもの。わかるよ。)BPも鼻をひくひくさせている。

「では戻ります。」においを思いきり吸いこんで頬を緩めたことを気付かれていながらおくびにも出さずエレノアさんは宿へと歩き始める。

(このメンタルってやっぱり貴族的なものなのか?それとも個人の性格?)

 その後をエミリーさんがBPを抱えたままついてゆく。

(え?えぇ!ひょっとして宿に直行のパターン??? 街の散策は?)

 後ろを気にもせずすたすたと早足で歩くエレノアさんとその後を軽く駆けて行く様子のエミリーさん

(おそらく前から二人を見たらにやけてるんじゃないかな。)

 外では貴族しての矜持を保たなければならない二人のほんのひと時の息抜きと考えれば、こんな俺がその役に立てているようで少しうれしい気持ちになる。ということで街の散策はまた次の機会へと流れてしまったようである。


 さて、時は流れて・・・いませんが、宿に早くに着いた我々はさっそくテーブルに買ってきた串の包みをを広げる。まだまだ十分な温度を保っており、おいしく食べるにはちょうど良い加減になっていると思われる。一応一人当たり10本の割り当てのはずだが、どうも二人を見ていると足りなくなりそうな感じが・・

「さて、いい香りですね。早速いただきましょうか。」待ってましたとばかりにエミリーが串に手を伸ばす中、エレノアさんは一本目に既にかぶりついている。

(・・は、早い。)それでいてどことなく上品な所作は崩さない。これはこれで素晴らしい。

「お茶でも淹れましょうか。」誰に問うでもなく俺は席を立つと隣室に湯茶を準備しに行く。

「悪いわねっ」背後からそんな声が聞こえてくるが、二人は決して食べる手を、口を止めてはいない。

「ゆっくり食べてくださいね。」さすがに宿屋の人のように素早くお茶を淹れるのには慣れていないので時間がかかりますよという意味合いで言ったのだが。

「・・・・」食べる方に夢中ですね。(うん)


「仁多さん。助かったわー」

 お茶を淹れて戻って来ると串を握ったまま、苦しいげな表情を浮かべているエミリーさんが居たので背中に回って「失礼します。」と背中をトントンと叩いてあげて、急いで水を取りに戻って飲ませたところ。

「気を付けてくださいね。」

(いやいや。ゆっくり食べてと言ったはず。満面の笑みで応えられても・・)

 エレノアさんはそんなエミリーを横目に見ながら黙々と食べ続けていたが、一息つくように湯飲みに手を伸ばして一口、口に含む。

「おいしいわね。この別にあるのは何かしら?」バラエティーセットとは別に包んであるみすじを一本手に取りながら俺に聞いてくる。

「それは、牛串で特に希少部位のみすじですね。」

「・・みすじ」俺の言葉を反復しながら、じっくりと観察して口の中に放り込む。

 んぐ、んぐ「美味しいわね。柔らかくて蕩けるとは言わないけど、ほわって感じかしら?脂身も上品ね。」ごくりと飲み下してからお茶を一杯すする。

「そう?これが・・みすじ」エレノアさんの話を聞いていたエミリーがみすじに手を伸ばす。

「いっただきまーす。」一口噛んでエミリーの表情が変わる。

「ほんと。柔らかくて食べやすい。」

「あら。もう一本あるわね?」ちらっとおれの方を見るエレノアさん

(いや、それは俺が食べようと・・)

「どうぞ、よろしければ(泣)」俺は急いで自分の分と決めているバラエティーセットを手元に引き寄せると一本目を口にする。

(あ!これは完全に焼き鳥だね。塩が効いてるわ。)確かにおいしい。

 しばらくの間は誰も無駄口をきかずひたすら食べた。

(あー!BPの分忘れてる~ッ)

 テーブルの脇で悲しそうな表情?のBPが視界に入って慌てる俺。

「食べるか?・・BP」俺がBPに話しかけると、エミリーが ハッ としたように顔を上げてBPを見る。

「ごめんBP。私のを分けてあげるね。」エミリーはBPに手招きすると串から肉を外し手に乗せてBPの前に差し出す。

「みゃ~」BPはしばらくクンクンと匂いを嗅いでいたがパクッと咥えると一口二口噛んだかと思えばすぐに嚥下した。

「そう?おいしいでしょ。」エミリーはさらに串から肉を外してBPに与える。

 俺は自分のためにとっておいた串から2本、エミリーの包みに静かに乗せた。

(うん。また買いに行けばいいや。)









お読みいただきありがとうございます。

本日ちょっと短めですね

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