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ニヤマーシャ 9

 銃器の扱いは秘匿と決まった。存在を秘匿する。

「次ですが、仁多さんの立ち位置ですね・・異世界というのがわからないので、この場合他国と理解しますが、明らかに顔立ち、目の色、外見からして私たちとは違います。なので外国人としたいのですが…私の知る限り仁多さんのような外見を持つ人の住む国はありません。」困ったという顔で考え込むエレノアさん

「・・・この件については少し考えさせてください。当面はいまだ知らぬどこかの国ということでやり過ごすしかありません。詳細については記憶が曖昧であるとかで誤魔化すしかないわね。」


 話題は進み「BP」の扱いについてに移る。

「BPはまだ子供でしょうから成獣と全く同じとは言えませんが、おそらく猛獣の類 豹 で間違いないでしょう。どうしますか?」

「う~ん。正直なところどう扱っていいのかわかりかねます。そもそもこの辺りに豹は生息しているのですか?」

 俺はそう言ってエレノアさんの反応をうかがう。

「生息地が周辺にあるならば野生に返すという選択肢もありますが、生息域すらないのであれば成立しにくくなります。」

 生存に適する場所でもない限り、餌とする他の生物の存在や生態系全てがBPの生存に対して障害となる。つまり「死」しかないということになる。それはあまりにも酷である。

 エミリーが恐る恐る手を上げ発言を求める。

「BPの世話をして飼うことはできませんか?」

 道中一緒にいた時間が長かったためか少し愛着がわいてきているのだろう。

 今は小さいけれど、そのうち大きくなる。2メートルとはいかなくてもそれに近い体長と成人の腰辺りまでの体高となる。体重の成人男性程度か?もちろん主食は肉だ。エサ代も馬鹿にならない。

 それ以上に何より元が猛獣、普段は慣れたとしても何かの拍子に人を…エミリーやエレノアさんを襲わないとも限らない。

「安易に飼うのはお勧めできない。BPは紛れもなく猛獣です。」

 当初は俺も保護することに迷った。エレノアさん達とこういう出会いになるとは考えてもみなかったし、

 一人旅を続けながら、少なくともBPが野生の中で生活していけるだけの体躯と知恵を付けた後で折を見て野生に帰せばよいと考えていた。と。

「この町や私たちの領地周辺には豹の生息域は見られないはずです。そもそも絶対数が少なく見かけることがありません。」エレノアさんがそう説明する。

「ということは、BPを野生に帰すことは難しいということなのでしょ?」なんとも取れない複雑な表情でエミリーが言う。

(ん?どういう表情だ。)

「今ここで野生に帰すことは難しいわね。」とエレノアさん

「しばらくは私が世話をしないといけないということね。」ふんすと気合の入った表情で続けるエミリー

(少なくともBPとまだ一緒に居られるというのがうれしいと…そういうことか。しかし)

「エミリーさん。BPは野生生物、いつかは野生に戻って行くことを忘れないようにお願いしますね。」

「ええ。もちろんですわ。」一所懸命表情を抑えているがどうしてもうれしいという感情がにじみ出てくるのは隠しきれていない。

「BPのことは取り敢えず我が邸に連れて行き我々で世話をする。ということで決まりね。ただし期限付き。」

「・・・はい。」やはりテンションが落ちるエミリーの返事

(そういえば俺、BPを手放すとかエミリーにとか言ってないよね? あれ?)

 事実上?気持ちの上ではエミリーはすでに気分はBPの保護者なのだ。


「では最後に一番大切なこと。主人亡きあとのヴァンス家の話です。」エレノアさんが今後の展望を述べる。

 不幸にも我が家は新興男爵家、しかし一代限りの叙爵ではなく一人娘であるエミリーが襲爵を認められるのは間違いはないでしょう。ただ、まだ家を運営してゆくには幼過ぎてかなりの困難が予想される。

 エレノアさんの出自も貴族家とは言え、同格の男爵家。後ろ盾にはおぼつかなく、かと言って他家に頼りすぎるのは今後の家の運営に大きく口出しがあることは否めない。

 また、家内においても何かしらの動揺があるのは想定内だ。エレノアさんはエミリーに目を向ける。

「エミリー。家の中に多少の動揺と乱れが生じるのは覚悟しておいて。」

 エミリーから俺に視線を移し

「そして…仁多さん。私たちの周りで一番の利害のないのがあなた。そこであなたの銃の腕を見込んで私たちの警護・・いえ、私たちの味方でいて下さい。お願いします。」

 思わぬ意外な提案に面食らったが、確かにこの世界で一番他者に縁がなく、俺にしても少なくとも信用に足るのはこの二人しかいない。当然と言えば当然だが・・・俺でいいのか?

(いやいや、貴族の政争とか、それ以前に俺この世界のこと何も知らないのに??)

「私は貴族社会の常識も、その中での立ち回りの機微も持ち合わせていませんよ?ましてや人の警護などやったことも考えたこともない。」これまで普通の日本人をやってきて、そうそう人の警護経験だとか貴族(上級)社会での立居振舞などマスターしている奴がいたら顔をみたいものだ。うんうん

(まあ、天皇陛下とか…皇居の皇宮護衛官ならあるのかもね。)

「あなたには学んでもらうことが多くなりますが、ひととおりの状況だけは早急に(滞在中や帰りの道中で)お伝えしますので受けてくれませんか?」

 あまりにも大きな話である。偶然会って助けた貴族女性二人を、成り行きとは言え今度はしばらくの間警護するですと~(愕然)

「私には突然すぎ、且つ大きすぎる任務かと…しばらく考える時間を頂いてもよろしいですか?せめて明朝まで。」俺は精一杯に全身から困った感情を噴出させながらエレノアさんにせめてものお願いだ。

「わかりました。しかし、いい返事を期待していますよ。そうでなくとも私たちは大きな波に飲み込まれるかも知れませんから。あなたもですよ仁多さん。」もう逃れられないのだということをわからせるかのようなエレノアさんの満面の笑顔に気圧されながらもなんとか応える。

「あ、・・ありがとうございます。」(うーあ こまったぁ)

 話し合いはそこで一旦お開きとなり、エレノアさんの振る呼び鈴にジョニアスさんが即座に反応してきた。

「お話は終わられましたか? お食事の用意も整いつつありますがその前に奥様へご連絡が何件かございます。」ジョニアスさんは入ってきた扉を閉めるとエレノアさんに深々とお辞儀をしながらそう伝える。

「ふむ。わかりました。聞きましょう。」

「はい。まず一件目アルフレッド様の件につきまして手配が完了しました。技師がさっそく取り掛かりたいと申しております。」

「ほう。それは早いこと。では早速取り掛かってもらえるよう伝えなさい。」

「はい。しかし技師たちがその前にぜひとも奥様にご挨拶をと。」どうなさいますか?と伺うようにジョニアスさんがエレノアさんに応える。

「ふむ。…会いましょう。」

「早速に」ジョニアスさんは足早に退出していった。

「念のため私の顔を見せない方がよいでしょう。いったん部屋へ戻ります。」

「それもそうね。 何かあれば声を掛けます。」俺はエレノアさんの返事を聞いて退出し自室に向かった。






何気なく自分の作品読み返してしまって、違う!そうじゃないって思うところたくさん。

これってあるある何でしょうか?

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