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ニヤマーシャ 5

俺は捕虜から目が離せない。ながらもしっかりと BP は回収済みである。俺の足元ですやすやと寝息を立てている。ずっと見ていたいものだが…

しかしながらエレノアとエミリーの二人も気にかかる。とは言え、いつまでもここに留まっているわけにはいかず意を決する。

「・・申し訳ないんですが、旅程のこともあるので出発したいのですが・・」

大切な家族との別れはつらいものである。がこちらの世界のしきたりも知らず何と言って良いものか悩みに悩み声をかけたのだ。

「申し訳ありません、エレノア様。見ての通り私は異国人。こちらの風習も知らなければこんな時にどうすればよいのかわからないのです。」

解らないことを素直にエレノアに申し出る。

私の言葉が聞こえたのか、エレノアはハッとすると

「・・これは」またこれも素直に俺に詫びてくれた。

失礼ながら合わせて聞きたかったことを聞くことにした。

向かう場所、亡骸と捕虜(犯罪人)の扱い、襲撃者に心当たりがあるか。などである。正直、襲撃の理由などは道中にゆっくり聞けばよい。

それによれば、まずアルフレッドの言っていた家(ヴァンス邸)についてはどうやらニヤマーシャの町を越えてさらに先に進むとのこと。

ヴァンス家は新興の男爵家であり、今回は任地着任にともなって近隣領主に挨拶に向かう道中であったという。

そして肝心の襲撃者については全く心当たりはないという。

そしてこの場で一番大切なこと。アルフレッドと御者のジョンの遺体をどうするかである。

(地球では荼毘に付すとかになるだろうけれど・・・)

幸い馬車の車軸は折れていないようではあるので使えるが、念のためゆっくりとした移動になると思われる。

で馬車を使う選択もあるのだが、ここで立場上貴族様に御者は期待できず、かと言って俺はやったことがない。ので到底無理そう。捕虜には百歩譲っても御者をさせるわけにはいかず、まずはその捕虜の扱いからとなるが、

かたきはこの世界ではどうするのかと言えば、やむを得なければ切り捨て御免となっても文句の言いようがなく。殺しても飽き足らない相手ではあるが、それよりも自領に連れて行き労働力として使った方がよいという考えに至ったらしい。

「では、アルフレッド様と御者殿のことは・・?」

二人の気持ちはまっすぐに家まで連れて帰りたいところではあるものの、家までは日数がかかるためニヤマーシャの町で一旦保存処置を頼めないものかとのことである。この世界にどういった保存技術があるのかは不明だが、確かに何もしなければ日数をかけての道程ではご遺体がどうなるかの想像は容易である。

「ではなおのこと、一刻も早く町へ向かうのがよろしいかと。」

俺は出発の準備のため二人に捕虜の監視を頼み、合わせてエミリーさんに BP のお世話を頼んだ。

「エミリー様。これは私が道中で拾った生き物で BP と呼んでいます。この道中お預けしてもよろしいですか?」

(気がまぎれることにもなるだろうし)

「まあ、かわいいこと。」エミリーはその胸にしっかりと BP を抱き抱えるとその顔を覗き込んでフフッと笑みをこぼす。

「BP というのね。わかりました。それに私のことはエミリーでいいわよ。」屈託のない笑顔でそう言われると年甲斐もなく胸がきゅっとなる。(いやいやおれはロリコンじゃねぇ)と思いつつも西洋系の顔立ちはどうも実際の年齢より上に見えていかん。とも思う。

馬もぱっと見、数頭草を食んでいるので集めにかかる。

散乱した荷物もある程度積み直していざ出発までにはそれから2時間かかった。

「お待たせしました。では出発しますか」

捕虜はしっかりとロープで縛り上げて2列で馬車の後ろにつないで歩かせるのみ

いざ御者席に乗ろうとするとエミリーが先に陣取っており、

「ニヤマーシャまでは私が御者をやるわよ。」至極当然のように言う。思わず、いいんですか?の表情でエレノアさんを見るがBPはすでにエレノアさんの胸に抱かれており「やらせてあげて」という反応。

俺人生の初御者をやる気になっていたが優秀そうな?御者が現れた以上すごすごと荷台に入ってそのまま最後部に陣取って捕虜の監視に就く。

馬車用の馬が2頭、替え馬として残りの8頭いたのですべてを連れていく。長い列になるけれど捕虜の後ろにつないで捕虜にも少し仕事をさせる。

「では準備OK です。」後ろからエミリーさんに声をかける。

「・・オーケイ??」こちらを向いてコテッと首を傾げるエミリー。

「あ!。準備完了です。・・・(ハハ)」

「では出発です。」エミリーさんが手綱を緩めるとゆっくりと馬が進み始め、馬車がギシッとわずかにきしむ音を立てて前にでる。

捕虜たちがその進みに合わせて「ととっ」と2列で引っ張られながら歩みだす。

(馬は慣れたものだな。)問題なく馬は歩を進める。


道中で聞いた。荷物は贈答品なので、それなりに高価ではあるが今回の転倒でダメになった可能性もある。当主も亡くなったことであるし、どのみち当主不在で挨拶回りは続けられるものでもなく、今回の贈答品も確認が必要。それよりも何よりも当主を失った以上このまま領地を治めることができるのかどうかも些か心配な点であるとのこと。何より二人の間にエミリー以外に子はおらず、男爵家を継ぐことについて一抹の不安があるらしい。

「ただ、今は領地に帰るのみです。あとのことは後で考えるしかありませんので。」

エレノアさんは寂しげにそういうだけであった。

「お母さま。街道が見えてまいりました。」御者席からエミリーさんの声が聞こえる。

「夕刻までにはニヤマーシャに着けるかしら?」心配そうに言うエレノアさんであるが、俺には見当がつかない、何せ初めての道だから。

「ここからだと徒歩でどれくらいの時間を要します?」

「・・そうねぇ。・・半日ってところかしら。」

(ということは、大まかに20km 程ってこととして…ペースを上げれば何とかか。)

「では、ペースを上げれば間に合いますね?」俺は後方の捕虜たちを一瞥してエレノアさんに許可をもらう。

「では君たち!ペースを上げる。駆け足!」俺は、完全に捕虜達になめられることのない様、歯切れよくする指示する。心なしか捕虜たちが身震いしたように感じたがお構いなし。

「エミリーさん(さすがに呼び捨ては…)少しペースを上げてください。」

「はーい。」元気よく帰ってくる声の次に馬車のペースが上がる。

「もうちょっといけますね。」駆け足に移った捕虜たちの様子を確認しながらエミリーさんに声で伝える。

「(速度)あげまーす。」エミリーも少し楽しんでいるようだ。と言っても100m30秒ほどのペース

決して早くはないはず。捕虜たちもまだ余裕がありそうなスピードだが、転倒などされると引きずってしまう可能性もなくはない。が、(まあ、いけるだろ。犯罪者に人権はない。)

程よい速度になったところで御者席のエミリーさんへ

「とりあえず、このペースでお願いします。」

「このペースなら休憩を入れても約2時間で着く計算になります。」速度が落ち着いてところとエレノアさんに予想時間を伝える。

これならば十分夕刻までにはニヤマーシャへ到着できるとのこと。何はともあれ最初の町まであと少しということで心なしか俺の気持ちも昂る。

(いったいどんな町だろうか。)この世界で初めての町。着いてみればわかることだが、この世界の、しかも貴族である同行者がいることもあり、不安がないわけではないが一人旅よりはいろいろと融通が利くだろうから安心である。






いつもありがとうございます。

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