ニヤマーシャ 3
BPを胸元に抱えていざ出発。最初こそ、キョロキョロしてはいたが、しばらくすると定番のお眠ちゃんで、あとはもうスヤスヤと熟睡ですかぁ!
(うらやましい。)
まあ、俺の方は相変わらず大きな荷物を抱えてひたすら歩くのみですが、
とそんなことを考えながら歩を進める。
(ん?)
はるか先ではあるが、少しばかり小高い丘陵から何やらあわただしい土煙が二つ。どうやらこちらに疾走している何かがいる。
(あれは・・馬車か何かか?)
遠目でわかりにくいが、どうもそのようである。こちらが先に気付けた様で向こうはまだこちらの存在に気付いてはいないようであるので、早々に道から離れて直角に100mほど草むらの中に全力で駆け入る。
そのまま見つからないようにと、地面に伏せ、荷物を銃座にして念のため小銃を構える。
(何せ状況がわからない。なるべくなら使いたくはないけれど。)
このまま通り過ぎてもらうのも一考だと思案している間もぐんぐん接近してくる土煙
(よし、見えた。前方は馬車。後方は騎馬・・・十余騎ってとこか。)
丘陵からここの手前まではほぼ直線、彼らからすれば緩やかな左カーブの後、俺の潜んだ草むらの前に出てくる位置関係になる。
身軽なだけあって騎馬の方はあっという間に馬車に追いつく勢いであるが、馬車の方も追い付かれまいとかなりのスピードを出している。
しかし、所詮が土煙が上がるような土を固めた細道である馬車は圧倒的に不利だ。それ以上速度を上げることがかなわない。
そうこうしているうちに馬車が高速でカーブに突っ込んだ。緩やかとはいえそうやすやすと曲がり切れるものではない。
案の定、道を外れて
(なんてこった。)
馬車は、ほぼまっすぐ俺に向かってくる進路となって道を逸脱。
逸脱の勢いで大きく跳ねて横倒しとなる。
(完全巻き込まれるじゃん。50mちょいしかないし。)
馬車の横倒しを見たのか。追手と思われる騎馬隊は道の上で速度を緩めゆっくりと進んでくる。
馬車を遠巻きに囲むのであろうか?ゆっくりと展開しながら進んでくるので、俺はゆっくりと匍匐で後退する。
(少し距離を取らないと、万一の時に銃の利点が活かせなくなる。)
言わずもがな、銃の利点は飛び道具であるから遠距離の攻撃ができるということ(もちろん射撃の腕にもよるのだが。)
「 BP 鳴き声を出さずに、静かにして動くなよ。」 BPの頭を撫でながらそっと言い聞かす。
(行ってもわからんとは思うが・・とにかく今は動かず静かに。)
(それでもってスナイパーのように冷静な判断と抜群の命中率を・・・)
頭の中で思い浮かべるのは彼のおそらく東洋人〇〇〇13 イメージができたら強く念じる。
(よし!いけそうな気がする。)
サッと騎馬隊を見回せば、総勢12騎。ほとんどが手に剣?を持っており中には槍様の武具を装備する者もいる。が、装備に統一感はなく、はっきり言ってバラバラ。野盗の集団という言葉がぴったりである。しかし何だろう。よく統制されていてそこに違和感もある。
弓を所持している者は現在2名、背中に背負っていたり、鞍に入れていたりするものも居るが構えるまで少し時間はあるだろう。ということは先に弓の2名か。
(どっちに付く?...人は見かけに・・よると思います。決まり!)
段取りが取れたところで弓の一人に照準を合わせる。
(照門と照星をまっすぐに捉えてその延長に・・・見えた。)
これであとは引き金を引けば戦いが始まる。が、馬車の様子も気にかかるので標的を捉えながら観察する。
御者は、少し先に放り出されている。動きがないようで気を失っているか最悪は息絶えているかも知れない。荷台の部分から一部荷物がこれも同様に放り出されているが、これは貨物馬車だったのだろうか?
人の姿はこちらからは確認できない。
しかし、騎馬隊が剣を構えてゆっくりと進んでいる様子から数人は荷台に居たのかもしれない。
と騎馬隊のリーダーだろうか?一騎だけ後ろで控えている以外は少しずつ包囲を狭めており
リーダーと思しき男が馬車の方に大声を張り上げている。
「おとなしく出てきやがれ! さもなくばこのまま皆殺しにするぞ!!」
聞いていて、穏やかではない。そっと照準をこのリーダーの男に移す。
騎馬リーダーの言葉に反応したのか馬車の中から若い男が2人這い出してきて剣を構えるが、負傷しているように見え精彩を欠く。
握る剣に力が入っていないのが遠めに分かるほどだ。
騎馬リーダーもそれを見て取ったのか
「おとなしく降参しろや。命までは勘弁してやる。」
と少しトーンを落として2人に言っている。
馬車の二人は、素早く顔を見合せたと思うと、頷きあって正面の騎馬隊から目を離さないようにしつつゆっくりと剣を地面に置く。
剣が地面に触れた刹那、騎馬隊のリーダーが言葉を発する。「殺れ!」
その声に呼応して弓の二人が騎馬上から矢を放つ。矢は違わず先ほどの二人の胸に突き立った。
「・・・おのれ・・」馬車側の二人は深く仰け反りながら地面に倒れた。
騎馬のリーダーはそんな様子ににんまりとほくそ笑みながら再び馬車に大声で浴びせかかる。
「早く出てきな!」ニタニタと下品に笑いながら、「もうう待てんぞぉー」思い切り遊んでやがる。
「・・さーん・・・ほら早く出てこんかぁ!」ヒャハハハハ
「・・にー・・・もう時間がないぞぉ」
馬車の後部から3人這い出して来る。中年に達する前の男女に10代と思しき女の子一人。
察するに親子というところか?
騎馬のリーダーの言葉が容赦ない。
「女と娘はもらっていくぞぉ」
もちろん男にしては我慢ならないことである。表情に一瞬鋭い気が宿り騎馬隊に向かって駆けだした。
と同時にナイフであろうか騎馬リーダーに向かって同時に二本、男の手から放たれた
「・・おっと。あぶねぇじゃねぇか。」騎馬のリーダーは一本のナイフを自らの剣で払い、もう一本は肩口に刺さるのを良しとした。どうやら致命傷になりそうな一本を捌いたようである。
「あーあ。これは高い代償を払うことになるねぇ。。勿体ねえが女子供も容赦できねぇ!」
先ほどのこともある。結末はもう見えてしまったのだが、さすがに看過できず俺はついに動いた。
いつもありがとうございます。




