表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『"式"という名の魔眼』 ──そして、理系の俺は異世界へ  作者: あや
第1章 敬具、こんにちは新しい日常
7/16

反省文と共犯者

夜。俺は食堂での夕食を食べるために学食を食べに行った。看板には普通学科本館食堂と書いてあった。


食堂は天井が高く、木造のテーブルが整然と並ぶ古風な空間だったが、メニューは完全に現代寄り。俺はよくわからない謎のステーキ(たぶん普通のハンバーグ)を腹に収めたところだった。隣には柳がいたが目を合わせることも話すこともなかった。


「龍ヶ崎君と柳君、呼び出しだってさー。なんか職員室の奥の部屋に行けって」


同じ予備学科のフツメン男子が、笑いながら言った。

嫌な予感しかしない。


通された部屋は、まるで取り調べ室みたいな質素な一室。

真ん中に置かれた机には、二枚の紙とペンがぽつんと置かれていた。


「そこに反省文を書け。A4で、裏表びっしりな」


ごつい監督教官はそう言うと、書類をひらひら振って出ていった。


扉が閉まると、部屋には俺と柳の2人きり。


「……まじかよ」


俺は椅子に座りながら頭を抱える。


「どっちが悪いと思う?」柳が、すまし顔で言った。


「そりゃお前だろ」


「なんでだよ元はと言えば君が雷なんて落とすからだろ?」


「知らなかったんだったんだってば!」


言い合いながらも、ふたりしてペンを走らせる。


……が。


「……お前、字きたな」

「ほっとけ!あんま書く機会ねぇんだよ」


しばらくの沈黙のあと。


「……なあ」


柳が急に口を開いた。


「今日のあれ、本気だった?」


「ん?」


「手加減とかじゃなくてさ。殺すつもりで来た?」


「いや、むしろ逆。殺さないようにって必死だった」

ちょっとリミッター外れた時もあったけど…


俺は苦笑いしながら答えた。


「でもまあ……ちょっと楽しかったけどな」


「……だろ?]


柳も、ふっと笑った。いつものあの嫌味な笑いじゃない。


どこか、楽しそうな──子どもみたいな、笑いだった。


「君、変なやつだよな」


「お前が言うなよ」


そんな会話を交わしながら、俺たちは反省文を書き上げた。

A4裏表びっしり。途中から意味なんてない、ただの作文。


「これ、読まないだろ絶対」


「じゃあ“俺たちは反省していません”って書いて出すか」


「お前がやれ。俺は遠慮しとく」


笑いながら部屋を出る。


なんか、少しだけ──この世界での最初の“味方”ができたような、そんな気がした。


反省文はそれぞれ1000文字。


「人の上に雷を落としたことを反省してます」とか、「強化魔法を使ってスマホを割ってごめんなさい」とか、冷静に考えたらヤバい文章だったけど、指導教員の「二度とやるなよ」で一応はお咎めなしになった。(つうか、こいつ強化魔法とか使ってたん?あほなん?)


「…ふぅ、終わったな」


柳と並んで本館棟の廊下を歩く。静かで、足音がよく響く。


「なぁ、柳。さっきのあれ、身体強化魔法って言ってたけど、あんな雷まで落とせんのかよ」


「ん? あれは“天雷”っていう上位詠唱。強化魔法とは別カテゴリだよ。俺が使ったのは反応速度を高める初級魔法だけ。確かライトニング・スフィットとか言ったかな?」


「今言ったってことは!?…ま、まさか雷が…」


俺はちょっと防御態勢を取り立ち止まるが、柳は頭の後ろで手を組んだまま平然とした顔で歩いている。


「だいじょーぶ、色々と原理とか構造式とか作んないけないからそうそう簡単には出ないよ」


(じゃあなんで俺はできたんだ??)


「そ、そうかならよかった…でも俺が出したんだよね しかも真横に……?」


「まあー、それはお前の魔力が暴走して出たんじゃない?」


「……はい?」


「禁忌魔法って、素質がある奴が無意識に使っちゃうことがあるかもしれないって聞いたことあったっけな?まあ、召喚系は特に危ない」


「え、じゃあ俺、やばいの?」


「やばい。ていうか、普通死んでる。召喚陣の構成、完全に未完成だったし。でも――」


柳はふと俺の顔を見て、わずかに口角を上げた。


「発動した。しかも“反転式構造”だった。あれ、普通の魔法じゃまず見ない形だよ」


「えっ、あれなんか特別なのか?」


「……すげー特別。俺も初めて見た。てか正直ちょっと興奮した」


「やめろ。人の人生かかってんだぞ」


「でも、お前、多分だけど――“理論型”だな」


「理論型?」


「直感じゃなく、論理と構造で魔法を使うタイプ。古代術式の分野で稀に出る。理系っぽいっていうか……頭の中、数式でできてるんじゃないの?」


「……当たってるのがムカつくな」


「ははっ、俺、意外と観察眼あるんだよ。たぶんお前、魔法を“感覚”じゃなくて“計算”で使えるようになる。そういう奴、めっちゃ貴重」


「褒められてる気がしないんだけど……」


「まぁ、今日のところは俺の勝ちってことで」


「スマホ割った奴が何言ってんだよ」


ふたりで笑う。たぶん、ちょっとだけ距離が縮まった。


ただ俺の心の曇りは一向に晴れない。ここはどこでみんなは誰なのか。俺はここで生きていくのか。現世の記憶はどこへ行ったのか何があったのか。


それはおそらく自分で見つけるしかないな

一応ここからが本編です。序章お疲れさまでした、一章もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ