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『"式"という名の魔眼』 ──そして、理系の俺は異世界へ  作者: あや
序章 拝啓、さようなら今までの日常
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天才の所業

「は、は、は――」

乾いた息を吐きながら、俺は全速力で地面を蹴っていた。


「よし、出だし好調……!」

そう思った直後だった。

突然目の前に現れた、黒い影――。


「ッ!? うおわああああああっ!?」


反射的に身体が反応する。

咄嗟に右へ跳んだ俺の耳元を、何かが鋭く風を切って通り過ぎる音がした。


「な、何だ今の……!?」

一瞬遅れて目に映ったのは、さっきより大きな剣を握るあの男。

――速い!

奴の間合いに入っていたことすら気づかなかった。思わず冷や汗が背を伝う。


「ちょ、待っ――」


叫ぶ暇もなく、奴が剣を引き抜き振りかぶる。

避けきれない。

瞬間、俺は地面に身を投げ出していた。


「今だ――!」


本能任せの全力しゃがみ。

慣性? そんなん知らねえ!!


振り下ろされた大剣は、空を切ってすぐ真後ろの地面を裂いた。

「は、は、は――」

乾いた息を吐きながら、俺は地面を蹴って距離を取る。

体勢を立て直した俺の前に立つ男は、無言のまま構えていた。

くそ、何者んだよこいつ……!

……でも。


(いける。あの動き、見切った)

俺は深く息を吸い、重心を低くして構える。


「こいよ」

静かに、挑発するように言い放つ。

間髪入れず、奴が突っ込んできた。


――予想通り。


俺は自分の刃先が右を向くように向け、刃がついていない部分をおでこにつける。もちろん、こいつは体重をかけてるから、少しでも気を緩めれば首が押しつぶされそうになる。


重さがかかっている自分のおでこから足先まで、一直線になるように少しずつ足を動かしながら、地面にその力を逃がしていく。


「俺の秘策はここからなんよねぇ」

少しにやけながら、余裕たっぷりの素振りを見せる。正直、ゲロきついし気を抜けば身長が2、3センチ縮みそうだけど……


「舐めないでほしいね。勝つのはこの僕さ」

あいつはさっきまでの目つきとは違い、俺と出会った時のような、人を舐め腐った目でじっと俺を見る。


「言ったろ?俺の秘策はここからって」


俺は右手の力をだんだん抜き、指を鞘から外していき、手を開く。掌にすべてのおもりがのしかかる。

左手は剣をぐっと下へ押しながら、ゆっくり緩めていき、こちらも手を開いた。


「これこそ、支点・力点・作用点ですよ……」(ボソッ)

「あれ?なんか言ったかい?」

「…………………」

剣と剣が擦れ合い、ギシギシと軋む音を立てながら、小刻みに震える。

…………………………………

ここだ!!


次の瞬間、俺は左手を一気に握り、右手を一気に下へ下ろした。右へワンステップ。

今まで支えていた支点が急に消えた。

そりゃあいつもびっくりするに決まってる。

あいつの体重を支えていた俺のブレードが、俺の右肩へバチン!と激しい音を立て当たった。

まぁ俺はいい。だけど、あいつはどうなるか……

体重をかけすぎていたあいつは、身体が前に……


「なにっ!」

無防備なまま、顔面から倒れこんだ。

その倒れこみ、顔面から倒れていく無防備なあいつに目掛けて…

左手に持ってる剣を右半身から肩へ、すーっと抜き、右手を添えてそのまま…

あいつの身体の上へ持っていき、一気に…

無防備になったあいつの背中へ剣を振り下ろす。

俺が剣を下ろしてから約1、2秒。天才の仕業です。


少しニヤリと口角を上げ、嘲笑うかのように。

あいつは、この一瞬で何が起こったか分からないだろうな。そりゃあびっくりした顔になるよなw

そう、そう、それよ!

俺の完封勝利。とでも言っておこうかしら。

「喰らええええええ!!!」

すれ違い様に振り抜いた渾身の剣が、奴の背中を捉える。

「なっ……」

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