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『"式"という名の魔眼』 ──そして、理系の俺は異世界へ  作者: あや
序章 拝啓、さようなら今までの日常
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適性検査とうざいやつ

「受験番号3番、龍ヶりゅうがさき 貴広たかひろ君、前へ。」

「え、あ、はい!」

完全に状況についていけてない。いや、まずこの世界なんなの?俺、さっきまで普通に寝てただけなんだけど。


「魔力制御と戦闘判断力を確認します。こちらのゴーレムを破壊してください。」

試験官の合図とともに、俺の前に巨大な石のゴーレムが立ちはだかる。どう見ても無理ゲー。


「いやいや、無理だろこれ!つーか魔力ってどこから出るんだよ!」

焦りながらも、直感でなんとなく体の中に“流れてる何か”を感じ取る。脳内に走るビリビリとした感覚――それを両手に集中させると、ぼんやりと青白い光が灯った。

「……おお、出た、のか?」

思い切って拳を叩きつける。


ゴーレムは少しよろめいたが、壊れる気配はない。

「うわ、ダメだこれ……」

やがて試験官が静かに首を横に振った。


「戦闘能力、評価D。魔力制御、評価E。――予備学科候補です。」


「……マジかよ。」

俺の前に現れた門が静かに開き、案内係が無言で立っている。

そして――

「次、受験番号128番、やなぎ 真也しんや君。」

俺のすぐ後ろで呼ばれたその名前に、ふと振り向く。


現れたのは、背が高く無表情な少年だった。髪は白銀、目は透き通るような水色で、どこか人間離れした雰囲気を纏っている。

(うわ……雰囲気違いすぎだろ。絶対強キャラじゃん。)

柳が魔法陣に立つと、ゴーレムが起動するより前に、空気がビリビリと震えた。

「……よし。」

柳が呟いた瞬間、彼の周囲の空気が一変した。


目に見えない魔力が渦を巻き、ゴーレムの足元に魔方陣が展開――そのまま炸裂。

一撃。ゴーレムは粉々に砕け散った。

観覧席がざわつく。試験官たちが驚きの声をあげる。

「戦闘能力、評価S。魔力制御、評価A+……今のところ最優秀生徒です」

柳は何も言わず、静かに歩いて俺の隣を通り過ぎていく。

そのすれ違いざま、ふとこちらを見た。

「……変わった人だね。君って」


柳はそれだけ言うと、また前を向いて歩いて行った。

(なんなんだこの世界……そしてこの学園。俺、ほんとにとんでもないとこ来ちゃったな……)


「さーーーて、次は剣術でーす。魔力が使えても道具が使えないと無意味マンです」

生徒たちは一列に並ばされていた。目の前には金属製の剣と、それを並べたラック。地面には戦闘でついたらしい無数の傷跡が刻まれている。


「ここでは、魔力を一切使わず、体術と剣術の素質を見させてもらいます。」

そう言ったのは、予備学科担当の教官。口調こそ淡々としているが、腰の剣から察するに実力者っぽい。

「順番に一対一で模擬戦をしてもらう。もちろん殺さない程度に、な。」

「……お、おいおい、殺さない程度って……そこらへんまではいくんだな」


俺は内心でぼやきながら、ラックから一番軽そうな剣を選ぶ。

「最初の組、龍ヶ崎貴広vs 柳真也」

「……え?」

空気が一瞬でピリつく。周りの生徒たちの視線が一斉にこちらへ向いた。

「え、俺、よりによって一発目でアイツなの……?」

柳はすでに剣を手に取っている。無表情で、ただ立っているだけなのに、まるで何かを“削ぐ”ような殺気が漂っていた。


「はじめ!」


いつも逃げてばかりだった。

自分が傷つかないことばっか考えて――

なのに、誰かが代わりにボロボロになってた。だから高校から俺は変わった。今の俺は…逃げねぇ!!


「まあまあ、苦しまないように一瞬で決着つけてあげるからさ?」


「……べ、別に負けとか予備学科落ちとかはどうでもいいんだけど……」

「でも、太刀打ちしたいんだよね?」


ほんとは尻尾巻いて逃げ出したい。でも、隙を見せたら一瞬でやられる。

ビビってるのはバレてる。でも強がるしかねぇ!


柳は足を止めて、少しだけ俯く。

「案外ビビってないんだね。もっと怯えると思ってたけど……じゃあ――手加減、ナシだよ?」


「……ああ、来いよ」

しまった。言いすぎたか?

目つきが変わった。

あの軽そうな笑顔が、すっと消える。

代わりに現れたのは――冷たい殺意だけ。

あいつ、

殺る気だ


けど、もう日和れねぇんだよ!

「なら俺も本気で行ってやるよ。ちゃっちゃと勝って、一服したいんでね」

「あっそ。なら安心だわ精々死なないように頑張れよ?」


優しく微笑むその顔には、同情の色なんてなかった

柳が、地面を蹴った。


バッ!


砂埃を巻き上げながら、音速かってくらいのスピードで距離を詰めてくる。

おいおい、脚力おかしいだろ!!

一瞬、風が変わった気がした。

空気が切り裂かれるような音。

肌が、ぞわっと逆立つ。

――速い、なんてもんじゃない。

あのスピードは、普通の人間じゃない

でも――初速だけで突っ込んでくるなら……!

俺は左に三歩動いて、停止。

宙に浮いてるあいつは、進路変更ができないはずだ!

「……なに?俺の顔にビビった?」


狙い通り、柳は俺の初期位置に向かって一直線。

地面に足をつけて減速し、すぐに再加速。こっちに向かってくる!

「まぁ、さすがに直線で突っ込んでくるほどバカじゃないよな」

正面からの斬撃、受け止められるわけがない!

俺は振り返り、走る!


ギャラリーの連中は、スマホ片手にニヤついてた。

まるで、殺し合いを見てワクワクしてるみたいに。…


「逃げてるだけじゃ、背中斬るよ?」

「ははっ、こっちは7年サッカー部だぞ?そう簡単に追いつけると……」

横を見た。

そこには、もう柳がいた。

「は?」

目が合った。

やべぇ。

完全に狩る気の目してる。


横薙ぎの構え。来る……!

逃げ切れない。止まれない。かわすのもムリ。

だったら――受けるしかない!

俺は左手を右手の下に添え、剣を下向きに構える。左側へ、受けにいく。

「こいやぁぁぁぁあ!!」

――ガチィィィィンッ!!!

斬撃を受け止めた瞬間、全身が震える。重い!

でも……

あいつの体勢が崩れた。剣が流れ、右半身が空いてる!


チャンス!


剣を構え直して、左に踏み込む!

――終わったら、ラーメン食いてぇな。

なんで今そんなこと考えてんだ、俺。

変えれる前提になってんじゃねぇか。まあいいか。


「おらぁぁぁあああ!!」


俺の剣が、あいつの剣に――――ガキィン!!!


手から、衝撃が抜けた。

……あ。

俺の剣は、空中でくるくると回転しながら――

ザクリと砂に刺さった。

まるで、俺の運命がそこに串刺しになったみたいに

「ふふ、防御じゃなくて“パリィ”だよ、こういう時は」


柳の剣が、真上から俺に向かって――!

「俺の勝ちー」

――来るッ!


避けろッ!!

前も後ろも、剣の軌道。だったら――左へ!


――シャキィィィィンッ!


ギリギリで避けた。

だけど……髪の毛が数本、宙に舞っていた。


「ふーん。運動神経はあるんだね。さすが、サッカーマン」

柳との距離は、約1メートル。

俺の剣は……あいつの後ろに刺さってる。

ここしかねぇ!

俺は即座に後ろへダッシュ!

「また逃げる?

悪いけど――俺の方が足、速いんだよね」

後ろから、足音が迫る。

……どうする。どうすれば――

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