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ファントム  作者: かな
最終章
56/56

移り変わり

「エミリア、王都を案内してくれないか?」


お茶会が終わり、ミオが茶器を下げるのを手伝っていると、スタンリーが声をかけてきた


これまで一度も城下へは出ていないのに、と不思議に思いながらもエミリアは了承した


「フロリアやトカラに逃れていた双子たちが、続々と帰ってきているらしい」


スタンリーはどうやら彼らに会いたいらしいが、城下は広い


エミリアはそれでもスタンリーと出歩くのが嬉しくて、何も言わずに彼に従った


お茶会でノアが屋敷に行きたいと言っていたこと、国に返す話などもした


スタンリーは、「それもいいかもね」と上の空で答える


エミリアはそんなスタンリーを見て、少しでも興味を引きそうな古本屋へ彼を連れていった


「あぁ、いいね。ケルナの本がある」


スタンリーは、陶器の絵付けについて書かれた本を手に取った


「スタンリーさまにとって、ケルナはどんな街だったのですか?」


エミリアが尋ねると、スタンリーは顔を歪めた


「何もないけど、何でもあったよ。父は優しかったし、使用人たちも良くしてくれた


僕は、屋敷の図書室が好きだった。紳士淑女名鑑で、溌剌はつらつとした父母の顔を何度も見た


父にねだって、エミリアの肖像画も届けてもらった」


スタンリーは少し躊躇ってから、ロケットに入れた家族の絵を見せてくれた


小さくて褪せてはいるが、両親と2人がいるのは分かる


エミリアがじっと絵を見ていると、スタンリーはそっとロケットを閉じて胸元に仕舞った


「そうだね…大事なのは、土地でも屋敷でもない。帰ったら、父やサピアさまとも話してみよう」


そして話し合った結果、もともとの屋敷の1画に小さな家を建てることになった


せり出た山肌で背後にある屋敷は見えず、近くには王宮へ繋がる古い石段がある


そこを別邸として、他の土地は国へ返還することとなった


屋敷は壊され国の成り立ちを展示する博物館となり、図書館も併設される


学校を作る話もあったが、ひとまずは王宮で仕える人々が暮らす街として機能していく


山の上にある家はミオが管理をし、ストウルはエミリアの実家近くに居を移す


こちらは大きい屋敷を手に入れて、本邸として使うものだ


「名残り惜しくはあるけど…仕方ないね」


スタンリーは1画は残したけれど、いつかそれも返還すると言った


「これから…これから、もっと良くなるといいね」


スタンリーの言葉に、エミリアは頷く


「きっとそうなります、スタンリーさま」


スタンリーは、それを聞いて悲しそうに首を振った


「そろそろ呼び方を戻して、エミリア」


エミリアは少し躊躇って、「ルクス」と呼んだ


「もういいの? ルクス?」


ルクス・スタンリーは、ふわりと笑って「もういいよ」と言った


フロリアの屋敷で初めて会ったあの日…


暗闇で詰め寄ったエミリアに、ルクスはざっと事情を語った


亡くなった母のこと、本当はもう1人いた兄弟のこと…


ルクスは大砲の暴発で火傷を負ったことになっていたが、実際は事故を仕組もうとした本人が亡くなったのだと言う


そしてどうやらルクスは、ずっと目を付けられていたのだと言う


「ずっと見張られている気はしていた。それがようやく自由になったから、好きなことをしようと思って…」


ルクスは、それでまずエミリアと一緒になることにしたのだと言っていた


それでもルクスの顔は父に似ているから、わざと顔を隠すように髪を伸ばしていた


「皇太子殿下と王妃、並びに王の交代。これは全て、王と殿下の意思だ。


僕たちは、それに協力しているに過ぎない。多くは言えないけど…エミリアも協力してほしい」


エミリアはその言葉に納得して、ほとんど何も聞かず、言わずに従ってきた


エミリアはただ、ルクスに生きていてほしいだけで…


双子だからという理由だけで、追われるのはおかしいと思っただけだ


王は迷信を廃し、歴史を正しく塗り替えた


いつかルーベンが玉座へ座るとき、側には双子が仕えるだろう


昔昔、その昔、赤い竜に乗って赤い山へと降りてきた人があった


王には3人の優秀な息子があった


王は一番上の兄を後継者とし、あとの双子に文と武とを任せた


やがて王が亡くなると…双子は王都を兄に任せ、領地の拡大に乗り出した


ときに武力を持って、ときに知略を持って領地を拡大し、兄王はその働きぶりを見て2人を王にしたいと願った


やがて領地は分割され、片方をイグノ、片方をルブテラという国になった


一番上の兄は2つの国を双子に任せ、自分はその間にある、始まりの赤い山へと引きこもった


互いの国は分かたれてからも協力しあい、発展し、今日こんにちでも友好関係を保っている

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