マグノリア
エミリアの実家へと馬車を付けて、少ない荷物を降ろしていると、まずスタンリーが呼ばれて家に入っていった
馬車は馬丁が引き継いで、馬屋へと連れていく
エミリアは自分の部屋を使って貰おうと、ミオの荷物も一緒に部屋へ持ってきて貰った
そこでエミリアも使用人に呼ばれたので、ミオに片付けを任せて付いていく
呼ばれたのは屋根裏の小さな物置で、そこには母のマグノリアが窓を背に立っていた
「お座りなさい」
部屋に入ると、マグノリアはエミリアに命じた
マグノリアは髪を高く結い、首の詰まった服を着ていた
部屋はカーテンが締め切られて暗く、テーブルのランプのみが明るく光っていた
マグノリアは背筋を伸ばして、窓の前に立っている
そして、そのまえに椅子がひとつ
エミリアはおずおずと腰かけ、マグノリアを見上げた
暗いが、怒っていることは、ひしひしと伝わってくる
「あなたね…」と、マグノリアはため息を吐く
「えぇ、言いたいことはたくさんありますよ。
彼にも話を聞いて、彼のことは多少致し方ないと思っています」
マグノリアは、「多少」に力を込めて言った
「けれどあなた急に結婚を決めて、一体いつからそういう仲なのかも言わないで…
1年くらい経って、そろそろ許そうかしら? なんて思っていたら、今度は急に王都へ戻ってきて…
それで何ですか? ケルナへ行ったとおもったら、また急にご領主を連れてきて…
えぇ、お父さまの意向なのは分かっていますよ。
けれどあなた、急にケルナのご領主がうちに、いつまでともなく滞在なさるなんて!」
マグノリアは一旦呼吸を整えて、エミリアはその間に急いで「すみません」と謝った
「その上、当たり前のようにフロリアの使用人まで連れてきたでしょう?」
エミリアはそれに対して、「お父さまが…」と言いかけたが、マグノリアは遮った
「お父さまがいいと言うから、いいと思わないことですよ。
私は寛容ですけど、筋は通していただきたいの」
マグノリアはそう言ってエミリアを質問攻めにし、エミリアはマグノリアが本当は聞きたかったことに全て答えることになった
結局、使用人が主と一緒の部屋はいけないと、ミオは使用人と同じ部屋にされた
サミュエルだけはスタンリーの隣だが、ロドニーも使用人と同室だ
ロドニーとミオは、すぐに既存の使用人たちと働き始める
ロドニーに至っては何をどうしたのか、夕食の最後に、マグノリアの好きなプディングを持ち給餌に現れた
いつもの笑顔ではなく取り澄ました顔をして、マグノリアにはカラメルの多いプディングを置いた
マグノリアはロドニーが部屋から去ると、「意外といい使用人をお持ちね」とポツリと呟いた
どちらとも取れる言葉にエミリアは冷や汗を書いたが、きっと悪い意味ではないのだろうと信じた
そしてこの家は、父ではなく母が支配しているのだと感じていた
翌日、スタンリーはサミュエルを引き連れてどこかへ出かけた
2人は昼になっても戻らず、エミリアはそのことを昼食の席で尋ねてみた
答えたのは、スタンリーの父であるストウルだった
「私の王都での屋敷に向かったんですよ。手入れをしないと、ひどい有り様でしょうから」
ストウルは誘われたけれど、行きたくないと断ったと言う
サピアはその話を聞いて、顔を顰めていた
「手入れをして、本当にあの屋敷に住むのか?」と問いかける
エミリアはそのつもりだったので頷いたが、サピアは賛成しかねると首を振った
そして帰ってきたスタンリーをエミリアが出迎えに行くと、サピアが何か話しかけて連れて行ってしまった




