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ファントム  作者: かな
最終章
49/56

王都

エミリアとスタンリーは即位式の3日前から王都に入り、2人でエミリアの実家にお世話になっていた


エミリアは出たときのままにされていた部屋に感動し、新しい服を降ろすことを止めた


そして懐かしい服を着て、連日街へ出掛けた


「スタンリーさまもご一緒しますか?」


そう何度も声をかけたが、スタンリーは困ったように笑うばかりで、ずっと図書室に閉じこもっていた


「そんなに珍しい本はないんだけど…」とサピアは恐縮し、ノアや王宮の同僚に頼んで本を借りたりしていた


王宮の図書館にも誘ったらしいのだが、家から出たがらないのだそうだ


普段見ない人が出入りしていると、噂になるから仕方がないとエミリアは思った


スタンリーが持ってきた正装は騎士服だけなので、カリーナと一緒でないと誤解されそうだとも思う


エミリアにはスタンリーがこの屋敷を楽しんでいるようにも見えたので、無理に話しかけることもしなかった


ただ、食事だけは2人で取った


最初は全員で食卓についたのだが…母のマグノリアは、スタンリーに一言も話しかけなかった


逆にサピアとスタンリーは気を遣って話し続け、食事がおろそかになってしまっていた


「マグノリアさまに結婚を急いだことを詫びたけど、お許しはいただけないみたいだ」


スタンリーはある日、ポツリとエミリアにこぼした


エミリアはにこりと笑って「きっかけがないだけですわ。お母さまは真っ直ぐで、少し頑固ですの」と言う


「誰かがきっかけをくれるのを、そわそわしながら待っているんですわ」


エミリアがそう言うと、スタンリーはほっとしたようで、マグノリアを見ると明るく挨拶をしてくれた


しかし2人は和解しないまま、即位式の日になった


エミリア、スタンリー、サピア、マグノリアの4人は馬車に乗って、王宮へ向かった


スタンリーは着古した騎士服、他の3人も上質だが新しくはない服を着ている


スタンリーはカリーナの護衛という形で、サピアたちは王宮仕えとその家族として出席する


この3日、スタンリーはマグノリアに会うたびに、「おはようございます」「こんにちは」など声をかけたが、マグノリアは一切答えなかった


今日もマグノリアは馬車の外を見て、斜向かいに座るスタンリーを視界に入れていない


ただ馬車を降りるときには、軽く会釈をしてから離れていった


「じゃあ後で…」とエミリアもスタンリーから離れる


そしてサピアとマグノリアとともに、前室に案内されてから、広間へと入った


広間には中央を囲むように、四角く椅子が並べられている


案内に従って、扉の両脇にある椅子がどんどん埋まっていくが、少し間を空けてみな腰掛けていく


エミリアも促されるままに、父母とはひとつ離れて座った


関係者が一通り揃うと、王兄殿下にカリーナ、付属の騎士たちが扉の向かいに腰掛ける


そして最後に王と皇太子殿下が、王兄殿下の隣に腰かけた


順繰りに呼ばれた人々が、王に頭を下げ、言祝ぎを述べていく


さらさらと流れるような言葉のあとに、ふと王は立ち上がり、真ん中に進み出ると皇太子殿下を呼んだ


「アレックス、ここに」


皇太子殿下はよたよたと歩いて、王の前に跪いた


それからすぐに立ち上がると、王の目を見据え、すぐにそらした


王は皇太子殿下に、皇太子としての意向を聞き、彼はどもりながら言葉を紡ぐ


「わ…わたくし、アレックスは…


アレックスは…こ、この度ここで…」


緊張して震える皇太子の肩に、王は優しく手を添えた


「皇太子としての地位を、永久に捨て去ることを誓います」


そのあとは深く息を吸って、一気に全てを言い切った

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