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ファントム  作者: かな
本章
48/56

パトリシアとノア

エミリアは新しい服の仕立てや、荷物の選定などしながら、それなりに楽しく過ごしていた


父のサピアや母のマグノリア、ステラに手紙も書いて会えるのを楽しみにしている


そして即位式まで、あとひと月となった頃にパトリシアからお茶に招待された


エミリアは招待されてばかりで申し訳ないと思いながらも、喜んで申し出を受けた


当日は迷路園には入らないだろうと、たっぷりとしたスカートを選ぶ


どこに案内されるのかと思っていたら、どうやらパトリシアの私室らしかった


薔薇の季節は過ぎてしまったが、たくさんの薔薇で囲まれた部屋で、座面やクッション、壁紙も薔薇だった


部屋の真ん中に置かれた白い長机に、茶器とお菓子が並べられている


そしてその机の真ん中、扉を向いてノアだけがちょこんと腰掛けていた


「エミリアさま!」


エミリアが案内されていくと、ノアは机を回り込んで「ようこそお越し下さいました」とお辞儀をした


今日のノアはベストにタイまで付けた正装で、エミリアは正式な礼でノアに返した


「お会いできて光栄ですわ。それで、その…パトリシアさまは…?」


そう尋ねると、「ノア!」とエミリアの後ろから声がした


「あ、エミリアさま。すみません、遅れましたわ」


エミリアが振り返ると、パトリシアは深くお辞儀をしており、後ろに使用人が控えていた


ノアはさっと先ほどの席へ戻り、エミリアは案内されるままにノアとは斜向かいに座る


パトリシアはその隣に座った


使用人は持っていた箱を置いて、お茶の用意を始めるが、湯を入れただけですぐに下がってしまった


エミリアがパトリシアの近くに置かれた青い缶に目をやると、「これはですね」とパトリシアが説明を始める


「王都へ持って行こうと思っている、思い出の品ですわ。


私とノアは、ルーベンお兄さまの誕生日に合わせて行きますの」


エミリアが不思議に思って即位式のことを尋ねると、2人は即位式には出ないのだと首を振った


「即位式と言っても、既に殿下が5つのときには済んでいますもの


今回はただその確認というだけですわ」


パトリシアは何でもないように言って、蒸らし終わったお茶を淹れて配ってくれる


「でもカリーナさまは行かなきゃいけないみたいなので…


その間、僕たちはトカラでお世話になって、家族揃って王都へ行くんです」


ノアは、心なしか嬉しそうに語った


「私もマリアさまとご一緒できるのが、とても楽しみですの」


パトリシアはにっこりと笑って、また席に着く


「王都ではお2人に会えないかもしれませんね…」


エミリアは残念そうに呟き、即位式にスタンリーとともに出ることを話した


パトリシアとエミリアはそれから、新調する服の話で盛り上がり、ノアもブランと同じ騎士服を貰うのだと喜んでいた


「お父さまや、スタンリーさまともお揃いになりますね!」


ノアはそう言って、エミリアに眩しいくらいの笑顔を向けた

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