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ファントム  作者: かな
本章
43/56

ダンス

しばらく、そんな姿の見えない鬼ごっこをしていると、ふいにノアがどこからともなく飛び出して来た


スタンリーは間違えて出てきてしまったのかと思ったが、ノアは逃げずにスタンリーの腰に手を回した


「おしまい、おしまい。休憩にしましょう」


頬を蒸気させたノアの額には、ぺったりと前髪が張り付いている


スタンリーは髪を流して、ハンカチを出すとノアの汗を拭いた


「ありがとう」


ノアはお礼を言ってから、不思議そうにハンカチを見た


スタンリーは「どうしました?」と言いかけたが、その前にノアが手を引いて歩き出す


いつも、庭師のみんなが休憩している場所があるのだと言う


スタンリーは大人しく引かれるままに、迷路を歩き、どこをどう歩いたのか、腰の高さほどの木戸へ辿り着いた


スタンリーとノアが木戸を開けると、小さな小屋の前にいくつかベンチが置いてあり、2人の男性が腰掛けていた


「ジョン!」


男性は2人とも白髪混じりで、首から麦わら帽子を下げて、タオルを巻いていた


「ノアさま、また来なさったか」


ジョンと呼ばれた髭のある方の男性は、顔をくしゃくしゃにして笑い、もう1人はタオルで顔を拭った


ノアは2人を、ジョンとマーティスだと紹介してくれる


「初めまして」


スタンリーも名乗り、お互いに礼を交わした


ノアは切り株のように転がっている、丸椅子に腰掛け、スタンリーにも座るように促した


ジョンは小屋の中から水筒を取ってくると、ノアに渡す


「ありがとう」


ノアはお礼を言って、水筒から蓋にお茶を注ぐと、スタンリーに手渡した


「お兄さんは、新しい使用人ですか?」


その問いには、お茶を飲み干してから「いいえ」と答える


「付き添いですよ、レジーナさま…今日、カリーナさまがお会いしている方の、です」


ノアは頷いて蓋を受け取ると、今度は自分のためにお茶を注いだ


「お兄さんが、新しい使用人だったら良かったのに…」


ポツリと呟いてから、ノアはお茶を飲んだ


スタンリーは一瞬、驚いて息を止めた


「若いのがいませんからね。歓迎したいくらいです」


ジョンも独り言のように呟き、それならとスタンリーはまた屋敷に来る約束をした


それからスタンリーは何度もレジーナと屋敷を訪れ、訪れるたびにノアの相手をした


屋敷の使用人たちとも手合わせ出来るように剣やダンスを提案したり、お互いに色々と話もした


屋敷には、若い使用人はいないらしい


ノアがカリーナの実の息子ではないことも、双子だということと、3つの頃からカリーナの元で世話になっていることも聞いた


ノアは自分以外の双子を知らないといい、スタンリーにも双子かどうかと問いかけた


そしてスタンリーは騎士になる話をし、いつかノアの元で働くことも約束した


「もちろんその場限りの話でしたし、こんなにすぐ騎士を辞めるとは思っていませんでした」


温室を抜けて、ダンス会場になっている屋敷へと4人は足を踏み入れた


「ノアといるスタンリーさまも何度かお見かけしていますけど…」


パトリシアは、ダンスや剣を交えている姿しか見たことがないと言った


スタンリーは一旦廊下で立ち止まり、端に立った


「実はそれを勧めたんです。ダンスや剣なら、若いかどうかはあまり関係ないと思ったので…」


パトリシアは頷き、カリーナは先に立って歩き出した


「さぁダンスが終わったら、あなたのパーティーは終わりですよ」


パトリシアは小走りでカリーナに並び、スタンリーとエミリアはまたゆっくりと歩き始めた


音楽の響く明るい広間で、スタンリーとエミリアは促されるままに踊った


お互いに婚姻を結んでから初めてのダンスで、恥のないよう先生を呼んで2人で練習をした


まさか、カリーナとパトリシアに見られるとは思っていなかったが…


その自信と努力が、少しでも実っていたらいいと思った



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