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ファントム  作者: かな
本章
42/56

鬼ごっこ

2年前…叔母であるレジーナの付き添いで、スタンリーはフロリアへ来ていた


護衛も兼ねて、騎士科の制服を着ての来訪だった


レジーナはバラが好きだったため、パトリシアのバラ園を歩きながらカリーナと話をしていた


スタンリーはその後を、話の届かない距離でゆっくりと追っていた


しばらくして、2人は迷路園とバラ園の境で足を止めた


そのちょっとしたスペースにテーブルとお茶が用意されていて…スタンリーは何となく、背の高い迷路園の生け垣の前に立ったのだった


「お兄さん、お兄さん」


スタンリーがお茶会の様子を眺めていると、どこから来たのか小さな男の子が近くに来ていた


「ねぇおヒマ? 隠れんぼしません?」


スタンリーは一瞬、彼に目をやり、また目を戻した


「すみません、今日は護衛なので…」


スタンリーがそう言ったとき、カリーナが気付いて手を振った


「カリーナさま」


男の子が手を振り、テーブルに駆け寄る


それを見てスタンリーも、テーブルに近付いた


「カリーナさま、この方借りてもいいですか?」


男の子はテーブルに両手を載せて、カリーナを見つめた


「ノア…」


カリーナは何かを言いかけたが、すぐにレジーナが「いいですよ」と請け負った


「レジーナさま!」


スタンリーは声をあげたが、レジーナは面白そうな目線をくれただけだった


「それで、借りて何をなさいますの?」


ノアは嬉しそうに片手を開いて、「隠れんぼでしょう? 鬼ごっこでしょう?」と、数え始めた


レジーナは、それをにこにこと眺め


「あなたは、いつも気を張っているようだから…たまには遊んだ方がいいわ」


と、スタンリーに言った


「ノア…誰か、他の使用人を呼んでらっしゃい」


カリーナは、あまり浮かない顔でノアに告げ、スタンリーは使用人と交代することになった


「お兄さん、鬼ごっこと隠れんぼなら、どっちがお好きですか?」


ノアは小走りで迷路の中に入りながら、スタンリーに尋ねた


「どっちにしたって、追いかけっこになりますよ」


スタンリーはノアに追いつくように、足を速めたが、ノアは嬉しそうに走り出す


「本気で追いかけて、本気で!」


そう言いながら、角を曲がって消えていく


年の差がありすぎるはずなのに、スタンリーが角を曲がると、ノアの姿はない


そして道はふた手に別れていた


「ノアさまー」


スタンリーが名前を呼ぶと、「お兄さんお名前はー?」と声が聞こえる


スタンリーが答えると、ノアは笑って、また走り出したようだった


スタンリーは仕方なく闇雲に進み、ノアを呼んだ







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