ノアと迷路園
パーティー初日、エミリアはロドニーとベリルを連れてカリーナの屋敷へとやって来た
昼なので仮面は付けず、ロドニーとベリルと会場となる部屋まで行くと、すぐに2人を残して庭に出た
本邸がどこにあるのかも分からないが、今回は小さな2階建ての屋敷と、テラス、その前庭が会場となっていた
屋敷は1階に広間が一つ、2階にはそれより広い広間が一つだけのシンプルなものだ
エミリアは食事がメインの広間に、ロドニーとベリルを残し、ノアを探して前庭を歩いた
ノアは以前の約束通り、庭を案内すると手紙をくれていた
それから姉であるパトリシアを紹介したいとも書いてあったので、今日エミリアは2人とお茶会をすることになっている
生け垣に沿って歩き、まばらに立って話し合う人々を何となく見ていた
「エミリアさま」
と、生け垣の隙間からノアが声をかける
エミリアがどこだろう? と思っていると、少し先にある腰高の小さな木戸が開いた
ノアは素早く現れると、さっとエミリアの手を引いて、生け垣の後ろへ案内した
「迷路に近いのが、この屋敷なんです」
ノアは嬉しそうに言って、腰に手をあてる
今日は制服ではなく、白いシャツに、吊りズボンという、とても動きやすそうな格好をしている
エミリアも街歩きもできそうな、膨らみの少ないスカートを履いていた
迷路というからには、狭い道なのだろうと思ったためだ
「素敵ですね」とノアは褒めてくれた
「エミリアさまは、もしかして動きやすいドレスの方がお好きですか?」
エミリアは、「はい」と答える
そう言えば、屋敷でもどこでも、シンプルな服ばかり着ていると思い返しながら…
ノアはお姉さまは王族らしいドレスが好きなのだと、歩きながら話した
「実はもうここが迷路の中なんですけど…この先に、お姉さまの好きなバラ園があるんです
お姉さまも、エミリアさまに会うのを楽しみにしています」
エミリアは、ノアの話を聞きながら頷く
ノアは生け垣の続く道を、すいすいと歩く
同じような緑の景色を何度も曲がっているうちに、エミリアはどこに向かって、どう歩いているのか全く分からなくなった
「良く分かりますね、凄いです」
エミリアが感心すると、「僕の庭ですから」とノアは嬉しそうに言った
「フロリアに来たときに、どうしても欲しくて作ってもらったんです。
そのうちどんどん広くなって…作業小屋とか、東屋とかも繋がってるんです」
エミリアは、そう言えば今回の会場も迷路と繋がっていたと思う
「素晴らしい庭師がいらっしゃるんですね」
エミリアが言うと、ノアは頷いた
「カリーナさまの温室も、お姉さまのバラ園も、どこよりも美しく大きくしようって…
それで、迷路もこんなに大きくなったんです」
どこをどう進んだかは分からないが、ふいに腰高の木戸が現れ、ノアはそれを押し開けた
木戸を通るとレンガの小道が続いて、その先にバラの絡まるアーチが立っている
アーチの脇にはレンガの花壇があり、腰の高さほどのバラが咲いていた
アーチのバラも、花壇のバラも、ピンクで統一されている
「お姉さまはピンクがお好きだから、ピンクのバラばかりなんです」
ノアが振り返りながら、バラのアーチを進む
レンガでできた小道は、なだらかに曲がりながら、2つに割れたり3つに割れたりしていた
そして、ところどころ高く丘のようになったり、小人が住んでいそうな小屋があったりもした
水の流れていない川にかかる橋を渡ると、その先に丸く広くレンガが敷かれ、その中央に東屋が建っていた
バラの生け垣で囲われた東屋へ進むと、白いテーブルに白い椅子が用意され、バラと同じピンクのドレスを着た少女が座っている
「パトリシアお姉さま! エミリアさまをお連れしました!」
ノアが手を振って声をあげると、パトリシアは立ち上がり、とても美しいお辞儀をした




