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ファントム  作者: かな
本章
39/56

ノアと迷路園

パーティー初日、エミリアはロドニーとベリルを連れてカリーナの屋敷へとやって来た


昼なので仮面は付けず、ロドニーとベリルと会場となる部屋まで行くと、すぐに2人を残して庭に出た


本邸がどこにあるのかも分からないが、今回は小さな2階建ての屋敷と、テラス、その前庭が会場となっていた


屋敷は1階に広間が一つ、2階にはそれより広い広間が一つだけのシンプルなものだ


エミリアは食事がメインの広間に、ロドニーとベリルを残し、ノアを探して前庭を歩いた


ノアは以前の約束通り、庭を案内すると手紙をくれていた


それから姉であるパトリシアを紹介したいとも書いてあったので、今日エミリアは2人とお茶会をすることになっている


生け垣に沿って歩き、まばらに立って話し合う人々を何となく見ていた


「エミリアさま」


と、生け垣の隙間からノアが声をかける


エミリアがどこだろう? と思っていると、少し先にある腰高の小さな木戸が開いた


ノアは素早く現れると、さっとエミリアの手を引いて、生け垣の後ろへ案内した


「迷路に近いのが、この屋敷なんです」


ノアは嬉しそうに言って、腰に手をあてる


今日は制服ではなく、白いシャツに、吊りズボンという、とても動きやすそうな格好をしている


エミリアも街歩きもできそうな、膨らみの少ないスカートを履いていた


迷路というからには、狭い道なのだろうと思ったためだ


「素敵ですね」とノアは褒めてくれた


「エミリアさまは、もしかして動きやすいドレスの方がお好きですか?」


エミリアは、「はい」と答える


そう言えば、屋敷でもどこでも、シンプルな服ばかり着ていると思い返しながら…


ノアはお姉さまは王族らしいドレスが好きなのだと、歩きながら話した


「実はもうここが迷路の中なんですけど…この先に、お姉さまの好きなバラ園があるんです


お姉さまも、エミリアさまに会うのを楽しみにしています」


エミリアは、ノアの話を聞きながら頷く


ノアは生け垣の続く道を、すいすいと歩く


同じような緑の景色を何度も曲がっているうちに、エミリアはどこに向かって、どう歩いているのか全く分からなくなった


「良く分かりますね、凄いです」


エミリアが感心すると、「僕の庭ですから」とノアは嬉しそうに言った


「フロリアに来たときに、どうしても欲しくて作ってもらったんです。


そのうちどんどん広くなって…作業小屋とか、東屋とかも繋がってるんです」


エミリアは、そう言えば今回の会場も迷路と繋がっていたと思う


「素晴らしい庭師がいらっしゃるんですね」


エミリアが言うと、ノアは頷いた


「カリーナさまの温室も、お姉さまのバラ園も、どこよりも美しく大きくしようって…


それで、迷路もこんなに大きくなったんです」


どこをどう進んだかは分からないが、ふいに腰高の木戸が現れ、ノアはそれを押し開けた


木戸を通るとレンガの小道が続いて、その先にバラの絡まるアーチが立っている


アーチの脇にはレンガの花壇があり、腰の高さほどのバラが咲いていた


アーチのバラも、花壇のバラも、ピンクで統一されている


「お姉さまはピンクがお好きだから、ピンクのバラばかりなんです」


ノアが振り返りながら、バラのアーチを進む


レンガでできた小道は、なだらかに曲がりながら、2つに割れたり3つに割れたりしていた


そして、ところどころ高く丘のようになったり、小人が住んでいそうな小屋があったりもした


水の流れていない川にかかる橋を渡ると、その先に丸く広くレンガが敷かれ、その中央に東屋が建っていた


バラの生け垣で囲われた東屋へ進むと、白いテーブルに白い椅子が用意され、バラと同じピンクのドレスを着た少女が座っている


「パトリシアお姉さま! エミリアさまをお連れしました!」


ノアが手を振って声をあげると、パトリシアは立ち上がり、とても美しいお辞儀をした



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