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ファントム  作者: かな
本章
38/56

招待

温室へ行く機会は、思いの外はやく訪れた


ノアが戻って数カ月、エミリアないしカリーナヒル全ての住人に案内が届けられた


「サミュエル、凄いわよ。5日間ですって。それに…お付きのみだけど、使用人もですって


正式な案内は後日…でもきっと、みんな今すぐ準備するでしょうね!」


エミリアが興奮して手紙を持ってきたサミュエルに話しかけると、サミュエルは苦笑した


「皇太子殿下に会えるかもしれないわよ、サミュエル」


エミリアは言うが、サミュエルは首を振った


「私はもう年でございますから…フローレンスやベリルを連れて行ってください」


エミリアは「それはもちろんだけど…」と言ってから


「スタンリーさまの、一番のお付きはサミュエルでしょ?」と聞いた


サミュエルは嬉しそうに笑って、「でしたらロドニーを」と提案した


「ロドニーなら、あとでご馳走を全て再現してくれます」


エミリアは「たしかに」と頷く


「そのあと、どこか1日を使用人たちの休日にしましょう。ロドニーやベリルたちには申し訳ないけど、調理や給餌をしてもらって…


そうしたら、みんな招待されたのと同じだわ。温室はないけれど…」


エミリアは残念そうに言って、サミュエルは笑顔で返す


「充分です。ここには我々だけの庭も、菜園もありますから」


それからさらにしばらく経って、正式な案内が届けられた


“中3日が皇太子の出られる正式な夜会、前後2日は、昼に催される使用人がメインのカジュアルなもの


夜会では仮面をつけて、どこかに花をあしらうこと”


「花をあしらうなんて、とてもフロリアらしいわ」


フローラが部屋に届けてくれた案内を見て、エミリアは呟く


そしてフローラに、ドレスを出してくれるように頼んだ


「紺色のドレスを出してほしいわ」


それは実家から1枚だけ持ってきた、正式なドレスだった


「赤が映えるわ」と呟いて、フローラに見せながら、小さな薔薇の刺繍をしたいと言った


フローラはドレスを受け取ろうとしたが、エミリアはじっとドレスを見つめている


「まさか、ご自分で刺繍なさるので?」


フローラが尋ねると、エミリアはきょとんとした顔でフローラを見上げた


「その…仮面も作られるのですから、一緒にお任せするのかと…」


「あ…そうね…」エミリアは言って、「でも…どこに頼めばいいか、分からないわ。


スタンリーさまが贔屓にされているお店はどこかしら?」


フローラは少し躊躇ってから、実は昔の同級生が営む洋品店があると切り出した


「もし、よろしければ奥様にもお声がけをと言われたので…」


エミリアは少し驚いたが、こういうことは良くあるのかもしれないとも思った


「そうね…スタンリーさまとも相談して…


そうね、仮面かハンカチか…そういったものを頼むと思うわ」


フローラは恐縮しながら、「ありがとうございます」と頭を下げる


そして後にスタンリーとの相談の結果、仮面を誂えてもらうことに決まった



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