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ファントム  作者: かな
本章
37/56

ノア帰宅

夕方、馬車の音が聞こえたので、エミリアはノアが帰ってきたのかと玄関まで見に行った


自室からゆっくりと歩いていくと、ホールにはすでにサミュエルとスタンリーが立っている


そして程なくしてノアが、ノア付きの使用人とともに屋敷へ入ってきた


「おかえりなさいませ」とサミュエルが言うと、ノアは「ただいま」と返してからスタンリーを見る


わたしの旦那さまの、スタンリーさまです」


エミリアが紹介すると、「お邪魔しています」とノアは丁寧に頭を下げた


それからまたノアはスタンリーの顔をまじまじと見て、「スタンリーさまは双子ですか?」と問うた


スタンリーは答えに詰まり、サミュエルを見遣る


「あっ!」とサミュエルは声をあげ、「それよりもカリーナさまが明日お戻りだそうですよ」と言った


ノアはパッと顔を明るくして、「本当?」と嬉しそうに言った


「お姉さまも、もう知ってるのかな?」


「お姉さま?」


エミリアが聞くと、ノアは頷いた


「本当は、僕とお姉さまでお留守番のはずで…でも、お姉さまはお友達の家に泊まる約束をしちゃったんです」


そしてエミリアに、兄弟はいるかと尋ねた


エミリアは首を振る


ノアはスタンリーにも、もう一度聞き「兄弟ならいますよ」とスタンリーは答えた


「ノアさまの兄弟は、おいくつですか?」


ノアは兄がもうすぐ14で姉が13だと答えた


「お兄さまは皇太子殿下と同い年なんです。だからお一人だけ、王都にいる旦那さまと一緒にいらっしゃるんです」


エミリアはとりあえず頷きながら、「お腹は空いていますか? おやつにしますか?」と問いかけた


エミリアは、食べると答えたノアとともに食堂へ向かう


ノアは玄関を振り返りながら歩き、食堂の前までくると「スタンリーさまは双子がお嫌いなのかも…」と呟いた


「どうして?」とエミリアが聞くと、ノアはエミリアの袖を軽く引っ張って耳打ちした


「王妃さまも双子がお嫌いなんです」


ノアは、王妃さまの話をブライトから聞いたと言う


兄のノアに代わりダグラスへ行く予定が、王妃並びに皇太子殿下が見えると聞いて引き返したのだと


その話をしたときに、「王妃さまは双子がお嫌い」だと言ったらしい


エミリアは「そんなことはない」と言いたかったが、言えなかった


「スタンリーさまは違いますよ。ブライトさまのお家に行って、お茶したこともあるんですから」


エミリアがそう言うと、ノアは幾分顔を明るくさせた


2人は軽くお茶をして、また夕食の時間にと言って別れた


「来年の今ごろはきっと、どの街も華やかになるでしょうね


皇太子殿下の成人と、正式な皇太子拝命があるんですから」


エミリアが言うと「そうだね」とスタンリーは頷いた


エミリア、スタンリー、ノアで静かに夕食を摂っていたのだが、あまりに静かすぎるのでエミリアが話題を出したのだ


「お兄さまと同い年と言ってましたけど…お兄さまとお会いしたことは?」


エミリアが隣に座るノアに尋ねると、ノアは噛んでいた食べ物を飲み込んでから答える


「一度だけ、フロリアに来られたときに見かけました。カリーナさまに似た、美しい人です。


お兄さまはいずれ、皇太子殿下の一番側近になるからと、懸命に勉強をしておられるそうです」


エミリアは、にこやかに頷く


「皇太子殿下はどんな方なんでしょう? スタンリーさまは、お会いしたことがありますか?」


スタンリーは頷いた


「純朴な方だよ。都会よりも長閑な景色が好きで…羊飼いがお好きだとか…


カリーナさまの温室に、ぜひ一度行きたいものだと仰っておられたよ」


「カリーナさまの温室は、とても素晴らしいですもの。まるで違う国みたいで…」


エミリアは、鮮やかで高く聳える緑を思い返しながら言った


「私も…機会があればまた訪れてみたいですわ」


「じゃあそのときは、お庭の他のところも案内します。


温室の近くには、お姉さまの好きなバラ園や、僕の好きな迷路園もあるんです」


ノアはそう請け負って、「泊めて下さってありがとうございました」とお礼を言った


エミリアはノアの礼儀正しさに胸を打たれながら、「私もとても楽しかったですわ」と微笑んだ

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