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ファントム  作者: かな
本章
33/56

紳士淑女名鑑

ステラとブライトを家に招いてからしばらく、今度はスタンリーとエミリアがブライトの屋敷に呼ばれることになった


ブライトの屋敷は、同じくカリーナヒルにあり、ちょうど反対側に位置していた


ステラは定期的に出されていたという紳士淑女名鑑を用意しており、ノアとブライトのページを見せてくれる


ブライトは養子に出されているので、ノアとは違うページに配されており、名字も違っていた


「5歳ごろかしら? お父さまに見せてもらってから大好きで良く見ていたわ


いつか私も、素敵なお洋服を着て載りたかったんだけど…」


ステラは大人が着ているドレスに憧れがあったらしい


「大体は社交に出るくらいの年に、顔と名前を見て覚えるんですよ」


ブライトは説明するが、エミリアはそもそもこれを見たことがなかった


「今は無いんですか?」


そう尋ねると、ステラが首を竦めた


「最近は、顔を載せるのを嫌がる人も多いみたいなの


お父さまが持っていたのも、いつの間にか見当たらなくなってしまって…」


残念だわ、とステラは本を撫でた


「良かったら、お2人にも貸しますよ」


エミリアとスタンリーはその申し出を、ありがたく受けることにした


その後ステラはまた、帰る前に顔を見せに来てくれた


場所は食堂で、庭側にステラとブライト、向かいにエミリアとスタンリーが座っていた


「ダグラスで、皇太子殿下に献上する羊を受け取るの


皇太子さまは、昔から遊牧民の話が好きだそうなのよ」


エミリアはまた塩レモンのクッキーを用意し、ステラはそれをつまんでいた


「このクッキー、とても人気で朝には売り切れるそうよ」


ステラはにこにこしながら、ダグラスにはブライトも同行すると言う


「じゃあ、本を返した方がいいですね」


スタンリーは、給餌をしていたフローレンスの方を見る


しかしブライトは首を振る


「いえ、むしろ持っていて欲しいのです。本の中でしか会えない人もいますから…」


エミリアが怪訝な顔をしていると、ステラがにやにやしながらブライトの方を見た


「おじさまはお父さまの代わりなの」


ブライトはステラの方を見て、困ったような顔をしてそっと口髭を外した


ステラは子どものように、手を叩いて笑った


「お父さまったら、ときどき自分の代わりをおじさまに頼むのよ」


「2、3日で戻るので、よろしくお願いします」


ブライトは頭を下げ、2人は了承した


すぐにブライトとステラを見送り、ステラにはお土産に塩レモンのクッキーを渡した


エミリアは自室の、以前3人でお茶をした丸いテーブルに本を拡げている


紳士淑女名鑑を丁寧に、ゆっくりとめくる


エミリアが知らないだけで、名鑑にはそっくりな顔の人たちが幾人も載っていた


双子ではなく、年の近い兄弟かもしれないが、全員が違う姓を名乗っていた


双子を離して育てる風習のせいだとは思うが、名鑑を見ているとこれまで一人も会ったことがないのが不思議に思えた




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