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ファントム  作者: かな
序章
3/29

いたずら


「ルクス」


とび色の髪に、薄茶の目をした女の子が笑う


ケープのついた可愛らしいフリルたっぷりの服。まだ9つの彼女、エミリアは少し先を指差す


そこでは白いエプロンに白い頭巾を被った使用人が、タイルで出来た床をモップで掃除しているところだった


ルクスと呼ばれた同じく9つの男の子は、黒いくせ毛にフリルタイのついたシャツと黒いズボン姿だ


2人がしばらく見ていると、やがて使用人は掃除を終えてモップを片付けに行く


それを見計らって、エミリアはまだ濡れたタイルに駆け寄り、滑って遊び始めた


すぐに別の使用人が駆け寄ってきたので、ルクスも止めようと動いた


けれど先に止められたのは、ルクスの方だった


使用人は強い力で2人の腕を握った


「カエラ!」


使用人が名前を呼ぶと、先ほどモップを片付けに行った使用人がすぐに戻ってくる


「ベラ…? 何…」と言いかけて、驚いたようにルクス、エミリア、そして床を見下ろした


それからベラに言われた通りに乾いた雑巾を持ってくると、彼らに踏んで靴裏を乾かすようにさせた


「ねぇ雑巾の上からなら滑っていいの?」


エミリアは腕を強く掴まれたまま、薄茶の瞳をキラキラさせてベラを見上げる


「ダメに決まってるでしょう!」


ベラは信じられない、といった顔でエミリアを見て


「旦那さまに叱ってもらいますからね」と、引きずるように2人を連れて行った

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