ブラン
「ありがとうベリル」
無事に城から戻ってきたエミリアは、ベッドに腰掛け、ベリルから水を貰っていた
ここはトカラでの滞在用にと、王弟殿下夫妻が用意してくれている屋敷だ
トカラを山のように見下ろし、腕のように抱えるお城…あれは元々本物の山なのかもしれないが…その麓にくっついている
そこは、フロリアにある屋敷の更に半分くらいの小ささだった
1階に馬小屋と使用人の部屋が2間に、階段を挟んで小さな食堂と炊事場があり、
2階に主寝室と応接間、控えの間がそれぞれ2つずつ、階段を挟んで対称的に造られていた
エミリアは水を飲んで、ほぅと息を吐く
そして落ち着いて、城で見たことを思い返し、整理しようとした
バルコニーでトカラの街を眺めたあと、エミリアは何とか階段を降りてスタンリーとトールと合流した
マリアを支えに立つエミリアにスタンリーは驚き、すぐに自分が支えに立った
「何があったの?」
小声で、スタンリーはエミリアに聞いた
エミリアはしっかりと掴まり、震えながらも何とか説明をした
スタンリーがトールを見たのでエミリアも視線を向けると、2人で何か相談をしているようだった
やがてマリアは手をパチンと打ち鳴らすと、衛兵に駆け寄った
先ほどまでエミリアを心配して、眉を下げていたのが嘘みたいに、マリアは笑顔で衛兵を見送った
エミリアとスタンリーが顔を見合わせていると、またすぐに衛兵が戻ってくる音がした
タタタタ…という軽やかな音に目を向けると、マリアと同じ金の髪にトールや衛兵と同じ黒い服を着た男の子が嬉しそうに駆けて来ていた
「母さま!」
男の子がマリアに抱きつくと、「ブラン!」とマリアも嬉しそうにブランを抱き上げた
エミリアは、セーラー襟姿のノアを思い出していた
怖さも震えもどこかへ行って、ただノアと同じ顔をしたブランを見つめていた
マリアは軽やかにブランを降ろして、「息子のブランですわ!」と紹介した
それから震えの治まっているエミリアの手をとり、「もう大丈夫ですわね…」と微笑む
「可愛いものを見れば、怖さは治まると聞いたことがありますの」




