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ファントム  作者: かな
本章
29/56

ブラン

「ありがとうベリル」


無事に城から戻ってきたエミリアは、ベッドに腰掛け、ベリルから水を貰っていた


ここはトカラでの滞在用にと、王弟殿下夫妻が用意してくれている屋敷だ


トカラを山のように見下ろし、腕のように抱えるお城…あれは元々本物の山なのかもしれないが…そのふもとにくっついている


そこは、フロリアにある屋敷の更に半分くらいの小ささだった


1階に馬小屋と使用人の部屋が2間に、階段を挟んで小さな食堂と炊事場があり、


2階に主寝室と応接間、控えの間がそれぞれ2つずつ、階段を挟んで対称的に造られていた


エミリアは水を飲んで、ほぅと息を吐く


そして落ち着いて、城で見たことを思い返し、整理しようとした


バルコニーでトカラの街を眺めたあと、エミリアは何とか階段を降りてスタンリーとトールと合流した


マリアを支えに立つエミリアにスタンリーは驚き、すぐに自分が支えに立った


「何があったの?」


小声で、スタンリーはエミリアに聞いた


エミリアはしっかりと掴まり、震えながらも何とか説明をした


スタンリーがトールを見たのでエミリアも視線を向けると、2人で何か相談をしているようだった


やがてマリアは手をパチンと打ち鳴らすと、衛兵に駆け寄った


先ほどまでエミリアを心配して、眉を下げていたのが嘘みたいに、マリアは笑顔で衛兵を見送った


エミリアとスタンリーが顔を見合わせていると、またすぐに衛兵が戻ってくる音がした


タタタタ…という軽やかな音に目を向けると、マリアと同じ金の髪にトールや衛兵と同じ黒い服を着た男の子が嬉しそうに駆けて来ていた


「母さま!」


男の子がマリアに抱きつくと、「ブラン!」とマリアも嬉しそうにブランを抱き上げた


エミリアは、セーラー襟姿のノアを思い出していた


怖さも震えもどこかへ行って、ただノアと同じ顔をしたブランを見つめていた


マリアは軽やかにブランを降ろして、「息子のブランですわ!」と紹介した


それから震えの治まっているエミリアの手をとり、「もう大丈夫ですわね…」と微笑む


「可愛いものを見れば、怖さは治まると聞いたことがありますの」


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