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ファントム  作者: かな
本章
19/39

お茶会

うららかな昼下がり、エミリアは天井の高い温室でお茶をご馳走になっていた


ここは丘の一番上にある、王兄殿下のお屋敷で、目の前には王兄妃のカリーナがにこやかに微笑んでいる


エミリアは一人で、実はまだスタンリーとも会えていない


朝食後のお茶を楽しんでいたところに、サミュエルから招待状が渡され、その後も会わないままにここにいる


王兄妃は嬉しげに通路沿いの植物を紹介してくれ、周りにはヤシやシダ、見たこともないカラフルな花々が咲き乱れていた


「ご挨拶が遅れ、申し訳ありません」と頭を下げたエミリアに、カリーナは静かに首を振った


そして、おかしげに口元を隠して笑う


「あのね、ここは今カリーナヒルって呼ばれてるけど…別に私たちの土地じゃないのよ?」


エミリアが驚いていると、さらにおかしげに


「何十年も避暑に来てるだけなの。元々は殿下の叔母さまの領地で、叔父さまの方が婿入りに来られたのよ」と言う


そして元々ここはフローラヒルと呼ばれ、芝生から白い花が咲き乱れる場所だったのだと言う


「フローラという名前はこの街に多いから、気を使ってみんなカリーナヒルって呼んでくれてるの」


エミリアはそもそもカリーナヒルという名前すら知らなかったが、興味のあるふりをして頷く


「殿下でなく、カリーナさまのお名前というのが素敵ですわ。殿下のご寵愛をみなご存知なのですね」


エミリアがそう言うと、カリーナはピクリとお茶を飲む手を止めて、カチャンと受け皿に戻した


エミリアがビクリと少し肩を揺らすと、カリーナは


「あぁ、そう…そうね…あなた、殿下とわたくしの馴れ初めをどう聞いてるのかしら?」と尋ねた


その姿はうわの空で、「ほら小説もたくさん出回っているから気になるのよ」と慌たように付け足した


エミリアは当時まだ婚約者のおられなかった皇太子殿下に、教皇が自分の娘を推挙したこと


しかし皇太子殿下は密かに想いを寄せる幼馴染みがいて、密かではあったが、公認のような仲であったこと


殿下はその愛を取ったために、弟が皇太子となり教皇の娘を娶ったこと


当時は教皇の力が強く、教皇の娘を退けてまで皇太子妃になることは出来なかったのだと


そんな風なことを説明した


カリーナは、にこやかにふんふんと聞いて、「あぁそうね。些細なことと思われるかもしれないけど、教皇さまの方が上手うわてだったのよ」と笑った


「でも、さすがに陛下も思うところがあったのかしら? 今は任期が決まっていて交代制ね」


カリーナは自らお茶をカップに入れながら、


「王も絶対ではないけど…民衆の声を議会に反映して、御神託に頼りきらなければ、きっと大丈夫よね」


と、誰にともない様子で呟いた


それからスタンリーのことも聞かれたが、エミリアは「仕事がお忙しいようで…」と濁すことしか出来ない


「あの子は恥ずかしがりやだけど、いい子だから」


カリーナは、エミリアがまだきちんと会えていないスタンリーのことも良く知っているようだった


エミリアは、カリーナから見たスタンリーの話を興味深く聞いた


お茶会が終わり、お礼を言って退出するエミリアをカリーナは温室の前まで見送り使用人に預ける


カリーナは「申し訳ないけど、ここで…」と、黒い帽子を目深に被った男性とまた温室に戻って行った


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