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私の婚約者が不憫すぎるので支えたいと思います。

作者: おふとん

 私は公爵令嬢シュトラトフーリネ・サシュバルト。


 王太子アルトバル・ロッサーリゥ様を婚約者に持つ、平々凡々な次期王太子妃です。

 私の婚約者様は大変優しい方で、家族のために、国の為にと毎日忙しくしておられます。

 かの方には、5人の弟妹がおりまして、実は皆いちように転生者でございました。わたくしもその一人。

 全員日本からの転生で、その特徴はわかりやすく直ぐに打ち解けました。


 いわく、権力者になりたくない。


 軒並み王位継承権をすぐに捨て去り、ご長男である婚約者様とわたくしは後ろを振り向かず前へ進む日々を確定付けられました。

 当初は裏切ったな……!と憎しみ呪う日々でしたが婚約者様の過労は想像を絶し、わたくしは彼の松葉杖となる決意をしたのです。


 転生者である義弟妹達は知識チートで少しずつ国をより良いものとしました。


 そしてその皺寄せが私達に来ます。


 開発したいから工房どこかない?テストプレイしたいから使っていい畑どこかない?美術館、博物館、図書館作ろう!富国強国!


 みんな国を良くしようととても良い提案をしてくれます。でも人にはキャパシティというものがあります。


 我が国は今一斉工事中です。既に山が1つ消えて平地です。ああ、大工が足りません。でも勢いがあるからと大工に就職する者が増えたら落ち着いたときに経済破綻が起きるのは必至。


 バランスを取りつつ義弟妹達の無茶振りを必至で宥めすかし、時に捕獲し、慰め、洗脳しようと画策しました。無理でしたが。

 彼等は自分の提案に対して今は無理なのだと言うと最初は納得したふりをし、次の瞬間には逃亡しようとする思い込みの激しい所があります。ええ、厨ニ病を発症します。冒険者になろうともします。魔法も錬金術も精霊もある世界なのでチートを発揮しようと死にかけたりします。そのくせ前世の親に会いたいと泣き出す始末。勘弁してください。


 目まぐるしく自儘に動き回る義弟妹、増える書類、増える雇用人数。

 天才だ賢者だと称賛されながら責任からはひたすらに逃れようとする彼ら。

 ここはファンタジーの世界だから、自分たちは異物だから、原地民の兄上が全て頑張るべき。

 彼等は本気でそんなことを思っているのが見て取れました。

 こいつら本当にどうしようもねぇな……とキレ散らかしそうになりましたがグッと抑えて一計を案じることにしました。

 地に足ついてねぇガキどもに現実見せるにはやっぱ結婚相手だよな……と。

 勿論コイツらは嫌がりました。恋愛結婚がいい!とか、絶世の美少女がいい!金萬で美形な騎士がいい!そして自分一筋の溺愛がいい!


 ゴミグズですね?


 ニッコリ笑ってグッとこらえ、私は彼らを諭しました。


「あなたたち、三次元の異性に恋をしたことはあって?」


 沈黙です。私はわかっていました、コイツらは二次元に恋するオタクであると。何故なら私も同じだから。


「今まで一度でも良いなって思った美少女や美形を見たことがあって?」


 そういえば無いな……って顔で考え込んだコイツらはチョロかった。


「このままだと結婚相手も出来ず、社会的な適齢期を越え、異性として見られず、童貞処女のまま生きていくことになりますよ。」


 そこからの阿鼻叫喚は筆舌に尽くしがたかったですね。前世がいくつで亡くなったかなんて知りませんが、その年を食っていた分だけの経験は馬鹿の目を現実に向ける切っ掛けにはなったようでした。


「性病って怖いですものね。」


 遊びたい盛りのガキどもも陥落です。


 王族を降家させるのですから、しっかりしたお家を調べて彼等にあてがいました。冗談でも婚約破棄だの愛人騒動だの無いように徹底させねばなりません。奴らの脳ミソはザマァをインプットしています。


 人見知りと警戒心をメッキ塗装して婚約者と数回も会うと、簡単に転がってくれました。流石は貴族です。先にお茶会で選別し、奴らの扱いをレクチャーしただけで掌握してくれました。


 それでも政略結婚という文字に不満を持つヤツもいるのは必定。予想通りです。ここでお相手がいかに優秀な家門であるかなんて説得するように話せば不振を持つのはわかりきったこと。なので私は必殺の言葉を出しました。


「お相手がご不満?」


 この言葉だけで旧日本人類は反論出来ません。自分が悪くなりたくないから、ただそれだけの理由です。

 事実、お相手には何の瑕疵もありません。ただノリが合わない、それは仕方の無いことだとわかりきっていて、そしてそれはそれで良いものなのです。

 何にでも驚いてくれて、何にでも誉めてくれて、何にでも大事に誠実に愛を捧げてくれる相手。

 こんなに都合の良いお相手は居ないでしょう。日本では絶対に味わえない楽しいお遊びの筈です。


 そうして奴らに首輪をはめ、地に足をつけさせ、時に捕獲し、婚約者をダシに説教を垂れれば大人しくなりました。


 その隙に結婚したい所でしたが、私は奴等が結婚するまで自分の婚姻を先伸ばしにしました。

 人は他人を理解できません。そして我々は異物。そういう意識があるのに現地民と結婚した途端、異物仲間が現地民に感じられるようになるのです。人により差異はあるでしょうがそういう生態を持つ可能性が有る限り、手綱を離すわけにはいかなかったのです。


 1人、2人と結婚させて、全員を降家させた時には私達は既に三十路になっていました。これは歴史に類を見ない事でした。

 側室問題などが提唱されましたが、その時は嫁いでいった一夫一婦制に脳をやられた馬鹿どもが役に立ってくれました。そう、たまには私の役に立つべきなのですこの馬鹿どもは。

 でも「ようやく結婚する気になったの?」という、まるで仲間外れに対する呆れたような言葉は絶対に赦しません。その時の私には悪鬼羅刹が宿っていた自覚があります。鬼ババアもかくやという表情をしていたでしょう。この肉体が屈強であったなら間違いなく挽き肉にし、肉団子を鳥の餌として枝に刺していました。私が淑女でよかったな?幸運に感謝しろ。

 ーー余談ですがこの日着用していたコルセットが内からの圧力で紐が千切れ、頭の血管が切れた音だと思っていたのが紐の切れた音だったと判明して安心いたしました。


 諸々の問題を抱えたまま、漸く私達も夫婦になりました。義弟妹のやらかしも各婚家に任せた為、負担は充分軽くなっていました。

 ようやくです。ようやく私も処女を卒業し、彼も子作りに専念出来る環境が整いました。

 めくるめく淫蕩の日々が私にもやってきたのです!


 経験した後、こじらせていた私は閨の現実に二次元と妄想の差を感じてすっかり冷静になりました。

 そう、王族の閨は管理されているのです。ドチャクソドエロイ薄くて厚い本など存在しない世界だったのです。そして体力勝負で柔軟性の勝負で虚無と演技と肉体操作の勝負でした。

 私は別にドスケベな身体など持っていなかったのです。開花もしませんでした。けれど夫は女のスケベな身体に夢を持っているだろうと予想出来ました。

 なので私は閨の夢はスッパリ棄てて普段のイチャラブに全集中する事にしたのです。エロい事は別にしたくない、でもイチャイチャはしたい。そういう欲求が高まった結果です。

 夫婦の良好さをアピール出来ましたが夫の性欲は高まったようで完全に墓穴を掘っていました。


 結果的に3男2女の子をもうけ、将来安泰の王室を実現しましたが、私はじっくりと見定めるつもりです。


 まさか自分の子ども達が転生者ではないよなと。


 悪夢の再来だけは何としてでも食い止めねばならないのですから。

少しだけ加筆修正をしました。

5/8 誤字報告ありがとうございます!


ハーレム願望ある義弟妹もいますが、みんな根が小市民なのでカルマ値が悪性にならないと複数の異性に手を出せません。リスクが怖いからです。

たぶん結婚相手以外の異性に迫られても怯えるだけです。

みんなロイヤルフェイスに生まれていますが比較対象が二次元なせいで美形の自覚がかなり薄いです。人によっては服の似合う似合わないもわかりません。肌を大胆に出すドレスは見るのは良いけど着るのは狂気の沙汰で絶対拒否の姿勢です。

そういう人間が集まりました。

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