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  作者: ひじきとコロッケ
竜骨ダンジョンのダンジョンマスター
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(6)

 と言うことで、ダンジョンの構造に手を加える。一時的にモンスターを生み出す仕組みを止めて、ダンジョンポイントの減少を止めておく。そして、誰もいない箇所ならばかなり自由に通路や部屋を作れるのでチマチマと通路を作っていく。

 広い通路はダンジョンポイントをたくさん使うので、広くても一メートル、狭いところは縦横五十センチほどで通路を開けていく。上下左右にグルグルと進み、いくつも分岐を作り、正解ルートを辿(たど)っていっても数十キロは進む必要がある通路の先に部屋を作る。

 あとは通路と元々のダンジョンの一層と繋ぎ、崩せる壁で隠す。

 空中に表示された立体映像に「こう言う構造で」というのを作ってやると必要なダンジョンポイントが表示されていく。最後に「確定」を押すまではやり直し可能。ゲームか。


「よし、奥の部屋は一層として認識されたな」


 ここまでの改造でダンジョンポイントが千を切ったので、すぐにコアを持ってダンジョン内転移で移動。色々制限はあるが、十層から新たに作った部屋への移動は全く問題ない。

 そして、部屋の奥に作ったコア置き場にコアを置く。


「おお、ダンジョンポイントがすごい勢いで増えていくぜ」


 今までの十倍のペースで入るから当然だな。モンスターを生み出すようにしても全く問題ないペースで増えているので、このまま作業を続けよう。

 こうして、丸一日かかってようやくダンジョンコア部屋まで続く通路のトラップ設置が終わった。




 ダンジョンコア部屋に行こうと思ったら、こういうルートになる。

 まず、一層のどこかにある壁を壊し、隠し通路へ入る。さらにその先で壁を壊し、隠し通路へ入る……というのを繰り返しながら十層まで進み、さらに隠し通路を使って一層まで戻る。そしてさらに隠し通路を抜けていくと、小さな部屋に繋がる。ちなみにここまで迷わずに歩いたとしてもフルマラソン数回分くらいの距離になる。正確に計る気はないから知らんが。そして当然ながら外れルートへの分岐も多数用意。頑張って正解ルートを探し出して欲しいところだ。

 さて、この小部屋には特殊な魔石を置いてある。部屋に入った人数分用意されるようにしていて、もちろんモンスターがドロップする魔石としても使用可能だ。そして通路はこれで行き止まり、これ以上先は無い。そこで一度入り口まで戻る。そして入り口から入ってすぐにある隠し通路からどんどん奥へ進む。当然そこにも分岐があって惑わせるようにしているのだが、さらに隠し通路を探し出して進むと小さな部屋に辿り着く。特に何か物があるとか特殊なモンスターがいるとか言うことは無いのだが、一番奥に泉があり、そこから湧き出た水が床に掘られた水路を通じて部屋の外へ流れている。

 流れる先を辿っていってもいい。縦横五十センチしかない狭い水路を五百メートル進んだ先は亀裂だけどな。「この先に何があるか確かめよう」なんて軽い気持ちで入ったら、狭さで身動きが取れなくなるか、息が続かなくなるか、亀裂に落ちるか。好きな運命を選んでいただきたい。ちなみに亀裂の部分を見ると、きれいな滝のようになっている。観光名所になるといいなと思う。

 さて、ダンジョンコア部屋に行くためには泉の中に入る必要がある。

 泉の中をのぞくと三つの穴が開いているのだが、そのうち一つが正解ルート。

 どの穴も似たような構造で五十センチ~一メートル程度の幅しかない、水で満たされた通路で構成されている。ここを進もうとすると普通なら酸素ボンベが必要になるだろうね。一応単純な構造のボンベなら持ち込んでも大丈夫らしいが、背中に背負っていたら絶対進めない狭さ。水のレベル三になると水中呼吸魔法が使えるからそっちの方がいいはずだ。

 だが、その穴には鉄格子がはまっていて、小さな穴が横に開いている。そこに特殊な魔石をはめ込むと一分間だけ鉄格子が開くと言う仕組み。魔石はいくつでも持ち込めるから全部の穴に手分けして入ってもいいし、一つの魔石で一人しか通過出来ないなんて心の狭いことは言わないからどんどん進んでいって欲しいところだ。

 そして言うまでもなく、穴の先に進んでいっても、いくつ作ったか数え切れないほどの分岐で迷わせる。上下左右あらゆる方向へ進む通路のマッピングなんて出来るだろうか?作った本人が言うのも何だが、俺には無理だ。

 しかも、ただ入り組んだ通路と言うだけではない。

 場所によっては八十度ほどに発熱する床、零度付近に冷却される床、どちらも数百メートル続いているので頑張って耐えて欲しい。その他に刃物や針が飛び出す床を配置。通路を構成している石組みの隙間からスパッと飛び出すので、怪我をしないようにな。ついでに所々に鍵付きの鉄格子をはめておいた。鉄格子はダンジョンの壁扱いになるので破壊は出来ない。そして鍵は番号をダイアルで揃えるタイプを鉄格子に内蔵させているので鍵の破壊も出来ない。揃える番号は少ないところで五桁、多いところで十桁用意。定期的に番号を変える嫌がらせもしていいのだが、何よりも番号を揃えて鉄格子を開けてもそのルートは正解ルートとは限らないというのがポイントだ。

 通路は全て水で満たされており、安価で交換できた「水石」というのをそこら中に埋めてあるから、消防車のポンプを使っても水を全てくみ出すことは出来ないだろうというくらいの水量を常に生み出している。

 造った俺が既に正解ルートを忘れるほどの立体迷路の先は小さな泉になっており、そこから延びる通路を少し歩けばダンジョンマスターたる俺の生活する私室。そのさらに奥にダンジョンコアを設置した。




 まず、水路のある部屋が見つかるまでに何年どころか何十年もかかるだろう。元々の辰神さんの作ったままの状態でも、十層へ行ける正解ルートに入った者が一人もいないのだから。そして、魔石を入手してそれを使えば……と言う発想が出来るかどうか。出来ないだろうな。魔石という時点でそれなりに利用価値がある物として持って帰るだろうから。ちなみに魔石としてはオークの魔石よりややマシという程度だから、苦労の割にと落胆すること間違い無しだろう。

 そして、泉の部屋に辿り着いたとしても、水路をどうやって突破するのかという課題もある。全部水と言うだけでも厄介だが、熱水・冷水に針や刃物といったおなじみの罠。おまけにダンジョンの定番、壁が薄ら光っていて明かりが要らない、という奴が機能しておらず――光らせない、という事になるので、普通の通路よりもダンジョンポイントを多く使うのが難点――真っ暗闇だということ。懐中電灯が使えないダンジョン内でどうするかはお手並み拝見といこうじゃないか。この水路の調査が始まるのは何十年後になるか知らんけど。

 ちなみに俺の母は水のレベル4だったはずだが、水中呼吸魔法はせいぜい三十分程度しか持続しないし、魔法が切れた後は五分程度使えなくなると言っていた。そして、正解ルートを最短で辿っていっても数十キロの長さがあるのだが、オリンピック選手を周回遅れにする速さでトラップだらけの狭い通路を泳いで三十分以内というのは、さすがにトップクラスの探索者でも無理だろう。

 ここまで出来たところで、ゴロンと横になる。さすがにちょっと根を詰めすぎたので少し休もう。ダンジョンマスターになった時点で食事も睡眠も不要になるとかそう言うのがありそうだけど、何となく疲れた。

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