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  作者: ひじきとコロッケ
竜骨ダンジョンのダンジョンマスター
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(1)

 翌朝、朝食を終えると、装備を渡される。ちなみに朝食は体を使う仕事だからと言うことで、質・量共になかなかの物があり、味も悪くなかったのが意外だった。

 ちなみにダンジョンへ行く行かないは受刑者の自由となっているが、持ち帰った物の売り上げが刑務所の運営に充てられているため、タダ飯を食わせるつもりは無いという方針。ダンジョンに行かない日が続くとメシが一日にパン一切れとか言うレベルにまで落ちるらしい。逆にダンジョンに行っていれば稼ぎが無くてもそこそこの物が食えるらしい。

 そして、ダンジョンへ行くと申告すると装備品が貸与される。と言っても、渡される装備類は金属板を入れた、肩から胸、腹を護るプロテクターとヘルメット、刃渡り三十センチほどのナイフに、ロープやライター――なぜかライターはダンジョン内でも使えるそうだ――等の入ったリュックサックという何ともお粗末な物。

 何しろプロテクターはあちこちにほつれ、破れがあり、それらをテープで補強しているという状態。おまけに重量が七キロと無駄に重い。

 そしてナイフは柄の部分がボロボロで、しっかり握り込めないし、刃もほとんど潰れていて、これで一体何を切れるのか甚だ疑問だ。


「一番まともなのが、ライターってのが何ともな」


 ロープでさえもかなり古くて、仮にこれを使ってどこかに降りるとしても、無事に降りる前に切れて落ちる方が先ではないだろうか。


「さっさと歩け!」

「わかったって。わかったからいちいち叩かないでくれよ」

「黙れ!」

「……」


 渋々歩いて他の受刑者と共にダンジョンへ向かう。

 全員の表情は一様に暗い。そりゃそうだ。こんなボロ装備、死んでこいと言っているのに等しい。一番立派な装備(?)が、右足首にはめられたGPS追跡装置。ダンジョン内では機能しないが、ダンジョンの外では機能するので、逃走防止用にはめられている。ちなみに遠隔操作で電流を流すことが出来るので、逃走しようとしても無駄という事も説明された。




 陽が向かっているのは「竜骨ダンジョン」と呼ばれる、十数年ほど前に現れたダンジョンだ。

 たいそうな名前が付いているが、名前の由来は大した物では無い。元々、ここにあった山と池に龍神伝説があり、それにちなんだ神社が建てられており、「辰神さん」なんて呼ばれていたことと、ダンジョン内部に巨大な亀裂があって、その様子が背骨のように見えることからそう呼ばれているだけだ。

 なお、この辰神さんは陽の母の実家が近くにあることから、幼少期には遊んでいた場所だったこともあり、ダンジョンになったという話を聞いたときはちょっと寂しさを感じたものである。


「今からここに入るのか」


 山の麓にぽっかり開いた穴を見て呟く。たしかこの位置に鳥居があってそれほど高くない石段が続き、その先に小さな社と意外に大きな池があって……という風になっていたと思うが、全て穴に飲み込まれてしまったようだ。

 そして空を見上げる。果たして、あと何回、空を見ることが出来るだろうか。


「おい、お前か?」

「え?」

「瀧川とか言う、今日が初めてのクライムはお前か、と聞いているんだが」

「あ、はい。すみません。私です」

「……付いてこい」

「はい」


 四人の男女の前に連れてこられる。


「どうでもいい話だが、一応聞いてくれ。今日はコイツを連れて入る」

「えー」

「マジで」

「やってらんねえ」

「まあ、そう言うな。これで報酬はいいんだ」

「けどよ」

「チッ、しゃーねーな」

「あの、瀧川です。よろしくお願いします」

「行くぞ」


 挨拶もそこそこにすぐに歩き出す。

 一応歩きながら名前だけは確認した。

 リーダー格の男が吉津、もう一人の男が西和、女が戸谷と北下。なお、下の名前は教えてもらえなかった。聞いても意味は無いが、ちょっとどうかと思う。




 いくら犯罪者に対する刑罰だとしても、いきなりダンジョンに放り込んでどうにかなるというものでも無い。

 そこで、ダンジョン未経験者は初回だけ、一般の探索者と共にダンジョンに入り、最低限の知識を教わることになっている。ただ、ここで言う一般の探索者はオフィサーであることは稀で、たいていの場合は駆け出しに毛が生えた程度のワーカー。

 聞いた話だが、一回につき二十万ほどもらえるらしいので、そこそこ人気のある作業らしい。

 何しろ、報酬が高額な割に、


「さっさと歩け」

「ついて来れねえなら置いてくぞ」


 扱いはぞんざいで構わないわけだし、


「お、スライムだな」

「ボーッとしてねえで戦えよ」


 勿論、スライムとどうやって戦うかを教える必要も無い。

 扱いとしてはよくて荷物持ち、空気と同等に扱われればよい方かも知れないという、まあ、そういうものだ。

 愚痴っても仕方ないので、ナイフを手にスライムに近づく。

 ドロッとした液体がウニウニ動いているのを見て、ふと思う。これ、ナイフで倒せるのか?

 以前、両親から聞いた話を思い出す。


「スライムは火であぶるのが一番手っ取り早いな」

「そうね。私たちならナイフでも切り裂けるけど」


 全く参考にならないんだが。

 リュックサックからライターを出して火であぶっても良いのだが、ライターがあっても燃えさしにできそうなものが無いので、どうにもならないか。

しばらくの間、12時、18時予約です

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