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  作者: ひじきとコロッケ
七田俊也と川畑花怜
26/105

(2)

今週も、月水金更新します。

「しかし……」

「お前が直接この二人を引っ張っていったんなら問題だろうが、引っ張るのは俺だし、何なら始末するのも俺がやってもいいぞ」

「一つ確認したいのだが、お前……強いのか?」

「どういう強さなのかによるが、単純な戦闘能力なら人外レベルどころじゃ無い自信があるぞ」


 ウラは一つため息をつくと、テーブルに一万円札を出し、エアコンの風で飛ばないようにコショウの瓶を上に置いた。


「ちょっとついてこい」

「待て」

「なんだ?」

「全部食え、残すな」

「ぐ……」

「あと、勝手に金を置いて出るな。店員さんに迷惑だろうが」


 釣りはいらねえとかそう言うのって、あとの処理が面倒なんだよ。そう説教しながら残さずに食べ、きちんと俺が二人分払って店を出た。




 ダンジョンレベルが上がると、コア部屋を経由せずにダンジョン内の任意の場所に転移できるという。もちろん同行者の同意は必要だが。


「何それうらやましい。ダンジョンレベルいくつから出来るんだ?」

「十六だよ」

「よし、頑張る」

「程々にな」

「でもアレだな」

「ん?」

「中二全開の部屋を見せずに済「普通の部屋だよ?!サイズが俺に合わせてあるだけで!」


 きっとドクロの付いた十字架とか、山羊の頭にコウモリの羽の生えた謎の生き物の像とか飾ってあるんだろうな。で、室内は薄暗くして、暗い赤と黒の布で壁を全て隠しているとか。


「で、ここは何だ?」


 ずいぶん広いところに連れてこられたが、何だろう?


「ここは十九階層。ある意味セーフティゾーンとして作った場所だ」

「セーフティゾーン?」

「そうだ」

「で、具体的には何だ?」

「闘技場だ」

「闘技場?」

「アレを見ろ」


 ウラが示す先を見ると、でかいボードがあり、その上にカウントダウンしているタイマーがあった。どうやら六十分から始まっているらしく、現在五十八分三十秒ほど。


「ここに入ると六十分以内にある選択をしなければならない。選択しないと、問答無用でランダム転移だ」

「ランダムねえ……」

「パーティを組んでいても全員バラバラになるからな、結構キツいぞ」

「確かに」

「で、何を選ぶかというとアレだ」


 ボードにはモンスターの名前がずらっと書かれている。


「あの中からモンスターを選ぶ。するとそのモンスターが現れる」

「ほう?」

「そのモンスターに勝つと……特に何も無い。特殊なアイテムが出たりもしない」

「はあ……」

「負けると……死ぬ」

「そりゃまた普通だな」

「だが、勝った場合、あのタイマーがゼロになった時点で地上に送られる」

「なるほどね。それでセーフティゾーンか」


 十九階層ともなるとモンスターも罠も凶悪になる。そして重傷を負った仲間を連れてここに来て、ゴブリンやスライムなんかを選ぶ。ここに来られるレベルの冒険者なら一人でも簡単に倒せるモンスター。サクッと倒して六十分後、地上に戻れるなら確かにセーフティゾーンだな。


「ちなみに勝っても経験値を得られるわけでも無いし、ドロップも無い。そして、勝てそうに無いと思ったら降参するとモンスターは消える」

「モンスターを選ばずにそのままいるとランダム転移か」

「そうだ。ランダム転移を防ぐ方法は二つ。モンスターに勝つか、入ってきた扉から外に出るかだ」

「あ、出られるんだ」

「まあな。一応入り口に説明文を書いてある」

「お優しいことで」


 なかなか面白い仕組みだな。闘技場か……


「ダンジョンレベル十九で十九階層にだけ作れる」

「先に回答ありがとう。で、ここに連れてきた理由は?」

「ここで出せる最強のモンスターと戦え」

「なるほど。俺の強さを計りたいと」

「そういうことだ」

「いいぜ」

「即答かよ?!」

「どうせ負けないし」

「言っておくがかなり強いぞ?」

「問題ない」

「ここにいる時点でお前の力はかなり制限を受けているんだが、わかっているのか?」

「10%に制限だっけ?全然そんな感じしないんだが」

「……ヤバいと思ったら降参しろよ?」

「ハイハイ。アレの一番下のガリオンって奴が一番強いのか?」

「そうだ」

「じゃ、選択っと。下がってろ、危ないぞ」

「いや、俺にここのモンスターの攻撃は通じないが」

「俺の攻撃の余波を食らいたいならいてもいいが」

「わかったよ」


 選択と同時に十秒のカウントダウンが入り、ゼロになると同時にそいつ――ガリオンとか言うらしい――が現れた。

 十メートルはありそうな身長に、四本の腕をはやし、全体が硬質の鱗で覆われた人型と言えば人型のそれは……


「中二全開か」

「違うわっ!元々そう言うモンスターなんだよっ!」

「ハイハイ、そういうことにしておくよ」

「言っておくがそいつ、毒に石化、暗闇という状態異常付与があるし、物理防御も魔法防御もかなりのもんだぞ。ヤバいと思ったらすぐに降参を「しないから」

「ハア?お前、俺の言ってることを「黙って見てろ」


 俺の言葉を合図にしたのか、ガリオンが一気に距離を詰めてきて鋭いかぎ爪を振り下ろしてくるが、ハエが止まっているかと錯覚するほど遅い。ひょいと避けると今度は握りこぶしが上から降ってきたので避けるのも面倒なので蹴り上げた。


「ハアッ?!」


 ウラの悲鳴のような声が聞こえるが仕方ないだろう。振り下ろした腕の肘から先が千切れ飛ぶなんて想像もしてないだろうから。


「ガアッ」


 ガリオンの目が青く光る。


「その視線を受けると石化……しないのかよ……はあ」


 パーカーのフードを締める紐は石化してしまったが、その程度。固まったままの紐は邪魔なのでパキッと折って捨てながら飛び上がり、右ストレートを真正面から。

 ゴキン、と音がして折れ曲がってはいけない方向にガリオンの首が曲がり、ゆっくりと倒れていった。


「これで終わりか?」

「い、一応そいつは回復力が凄いハズなんだが」

「じゃあとどめを刺しておこうか」

「いや、いい。やめてくれ。それ以上は俺の心が折れる」

「えー」


 ウラが何かを操作したらしくガリオンが消えていく。


「とりあえずお前が強いってのはわかったよ」

「そりゃどうも」


 とりあえずこれで、新宿ダンジョンから文句が来ても大丈夫。俺の方で対処出来ると言うことで、ウラに迷惑がかかることはない。


「で、その二人はいつ来るんだ?」

「えーと……あと十分後」

「待て!」

「何だよ」

「どうしてこんなギリギリのタイミングで」

「イヤ、むしろお前がギリギリのタイミングなのに割り込んできているんだけどな」

「だあああ!クソ!で、俺はどうすればいいんだ?」

「別に何も」

「は?」

「強いて言うなら俺を入り口近くに転移してくれるとありがたい。さすがにここから地上に行くのは面倒だ」

「わかったよ」


 ダンジョンセンターの裏手という、意外に人のいない場所に転移した。


「ところで、どうやって二人を始末するんだ?」

「どうって、俺が直接、こうバキッと」

「は?」

「今見せただろ、俺の実力を」

「あ、ああ……」

「二人はダンジョン内へ来るように指示してある。だから俺がレアモンスターっぽく登場して、プチッと」

「あのな……」

「何だよ」

「お前、本当に好き放題やるんだな」

「当然だ」

「ここ、俺のダンジョンなんだが」

「知ってる」

「なんで、殺人現場を提供する話になってるんだ?」

「さっき、メシを奢っただろ」

「二千円もしない奢りで、そう言う面倒事を押しつけるなよ」

「気にするな。ダンジョン内のことだから殺人事件にはならない」

「えーと……」

「俺、戸籍上は死んだことになってるからな。殺人犯が事件後に死ぬことはあっても、死んだ人間が新たに殺人はしないだろ?つまり、殺人事件にはならない」

「理屈はそうかもしれんが」

「別にその瞬間を見ていろとは言わないよ。お前も元人間なら、そう言うのに抵抗があるだろうし」

「まあ……な」


 気分のいい話じゃないのは確かだが……うん、今度また何か奢ろう。

次、水曜更新です

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