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  作者: ひじきとコロッケ
駒田英樹
12/105

(1)

 現在の時刻は朝七時を過ぎたところ。とりあえず駅に向かって歩き始める。全力で走ったら一分もかからず着きそうだが、同時に辺りが荒野に変わりそうなので我慢して歩くこと十分。駅に到着した。


「えーと、俺が捕まった駅は……」


 三つ先か。時刻表を見ると、次に来る電車がちょうどいい(・・・・・)ので切符を購入する。え?金がどこから出てきたかって?ダンジョンポイントを使うと現金も作り出せる。なんと一ポイントで一万円というとんでもない交換レートになっている。実にお手軽だが、よく考えてみると、ダンジョンポイントは放っておいてもたまるし、そもそもダンジョンマスターが外で買い物をする必要があるのかというと……無い。ダンジョンポイントで交換出来るアイテムはダンジョン特有の物だけでなく、外で売られている物はだいたい何でも手に入る。だから、現金と交換しても、使い道はこのように電車の切符を買うとか、そう言うのくらいしか無い。

 現在のダンジョンポイントは五十万ほどになった。現金にすると約五十億。国内でも有数の金持ちだが、移動は徒歩と電車。何だかなと苦笑しながらホームで電車を待つ。約二ヶ月ぶりの通勤ラッシュは懐かしくもあり、腹立たしくもある。

 しばらくすると定刻通りに電車が到着。日本の鉄道会社は優秀だな。


「俺が捕まったのは二両目の左側中央扉付近」


 程々に混んでいる車内を確認すると……いた。

 俺を痴漢呼ばわりした女子高生、木瀬美晴だ。そして少し視線をずらすと俺を取り押さえた会社員が数名。いきなりの大当たりだ。

 とりあえず、木瀬はそのままにする。捕まったときに「樫川高校二年の木瀬美晴です」と言っていたので、いくらでも追跡可能だから。今日はあの会社員の内、誰か一人を追いかけよう。

 しばらくすると、俺が捕まった駅に到着。そして、会社員たちが降りていく。降り際に木瀬と目が合い、ちょっと会釈している。何だろう、このモヤモヤした感じは。改札を抜けるとそれぞれ別の方へ歩き始めていたので、とりあえず一人を選んで尾行開始。あいつは駒田英樹とか言ってたな。大手メーカーの社員だとか言っていたが……お、あのビルか。確かにその大手メーカーが入っているな。

 さて、ここで待っていても仕方ないから、電車で戻ってダンジョンへ帰ろう。電車移動するダンジョンマスターってどうなのよと思うが、そこはまあ、仕方ないと言うことで。




 ダンジョンに戻り、生活空間の改善の続きに取りかかる。一通りの部屋は出来たがまだ殺風景なので、ダンジョンポイントを家具に交換して置いていく。


「ソファを置き、デカいプロジェクタースクリーンを置けば……大画面で映画見放題!」


 庶民の贅沢なんてこの程度だ。

 ちなみにダンジョンポイントで交換すると家電もちゃんと使える辺りがダンジョンの不思議なところ。気にしたら負けだ。

 そして、ダンジョンコアを置いた部屋も改築。ダンジョンを色々操作する板は「カスタマイズ」というボタンを押したら操作方法とかが変更出来たのでそれも踏まえて……


「いい感じになった」


 正面に三十ほどに分割された画面を表示。ダンジョン内のあちこちを映像で確認出来るようにした。とは言え、ダンジョンマスターの能力で、いつでもどこでも頭の中にイメージとして捉えることが出来るから意味は無い。

 そしてダンジョンの操作はそれっぽい感じの操作卓(コンソール)で行えるようにしてみた。文字の一切書かれていないスイッチやボタンがずらりと並び、あちこち意味も無くLEDが点灯している。もちろん、こんな物はなくてもダンジョンの中のことは思い浮かべるだけで色々操作できる。

 ではなんでこんな物を作ったのかって?

 雰囲気って大事だよな?

 とりあえずこれで、ダンジョンの管理と日常生活それぞれの場をしっかり区分けしたので、自分の中でオンとオフが明確になるだろう、多分。


「って、夢中になって色々やってたらもうこんな時間かよ」


 慌てて外へ出て、駒田の会社へ向かう。そろそろ定時のハズ。残業をする可能性もあるが、外で待ち伏せして、住所を突き止めないと。

 幸い、会社前で待ち伏せしてわずか十分ほどで駒田が出てきた。数名の同僚と話をしながら駅へ向かうのでそのまま付いていく。

 一時間ほどかけて「ただいま」と駒田が一軒の家に入っていった。中からは「おかえり」なんて家族と思われる話し声が聞こえるので、ここが自宅で間違いない。

 自宅が確認出来れば充分なのでダンジョンへ帰る。しかし、移動手段を何か考えないと電車移動は面倒くさいな。




 ダンジョンに戻ると早速ダンジョンポイントでデジカメとパソコン、プリンタを取り出す。そして、幻覚魔法を使って立体的な映像を作り出して撮影。なかなかいい出来なので、映像を変えながら数枚撮影。パソコンに取り込んでちょっとだけぼかして印刷。あとは封筒に入れて、駒田の妻宛で宛名を印刷して準備完了。もちろん指紋が付いたりしないように細心の注意を払っているぜ。

 そして、さらにダンジョンポイントを消費して車を一台購入。そこら中で見かけるようなミニバン。色はシルバーでこれまた没個性を演出。ダンジョン外転移で車も外に出られるので、移動はこれで少しはマシになるだろう。

 そして、さらにもう一つ、ダンジョンポイントを消費して小細工をしておこう。

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