序文
放浪のカワウソ(The Life Story of an Otter)
John Coulson Tregarthen 1909
序文
カワウソは、アナグマ、ヤマネコ、ケナガイタチ、テンがほぼ敗北した根絶組織(exterminating agencies)との闘いで成功を収めたという点だけでも、私には長い間、真剣に注目する価値があるように思えました。
英国全土でこの動物が生き残っているのは、一部は彼等の狩猟時の耐久力と臨機応変の才覚によるものであり、一部は他の野生生物とは区別される性質や習慣によるものです。例えば、その匂いは、雑種犬や雑種猟犬が追いかけるキツネやアナグマの匂いとは異なり、その匂いを嗅ぎつけるように訓練された猟犬を除いて、ほとんどの犬が気づきません。従って、このお尋ね者の動物は、殺戮に対して一定の免疫を持っています。
そして、カワウソは偉大な放浪者であり、海岸を長く横断し、小川や川をたどって源流に到達するだけでなく、丘や山を越えて漁場に到達します。一晩に15マイル移動することが知られており、日中に休息する巣穴が10マイルまたは12マイル離れていることも少なくありません。
宿泊所に向かう道中、彼等は魚を獲ったり狩りをし、ウナギ、サケ、パイク、ウサギ、アヒル、または野生のアヒルの食べ残りが真夜中の饗宴の跡を示しています。しかし、どんなに食べ残しを放置しても、カワウソは決して取りに戻ることはなく、狩猟管理人や水道執行官が周囲に仕掛けた罠に掛かることはありません。同属のケナガイタチとは異なり、カワウソは食べ物をため込みません。ただし、沼地で時折見つかる貯蔵カエルは彼等の仕業であり、一般に考えられているようにサギの仕業ではありません。
しかし、彼等は冬眠せず、一年中夜な夜な屋外にいることは確かです。実際、雌は真冬に子を産むことも多く、その場合も、不屈の採食者である彼女は、幼獣達に食べ物を与えるための強い欲求に晒されます。時には状況が過酷すぎて、悲劇が起こることもあります。ある厳寒の12月、マウント湾のマリヨンでは、ポルドゥ川が凍り、海はカワウソが魚を獲るにはあまりに荒れていた時、飢えに直面したある哀れな雌カワウソは、建築中のバンガローに忍び込み、そこで丸まって死んでいるのが発見されました。
このような興味深い動物がもっと知られていないのは残念なことだと私は思います。そしてこの物語は、彼等の内気な性質に非常に適した野生の環境の中でそれを描写する1つの試みです。
批判的な読者はおそらく、この物語が動物の脳の最も微妙な働きを解釈するという大胆さに驚かれるでしょう。しかし私は、推論の大部分は非常に安全な性質のものであると考えています。そしてこの物語の内容は控えめではありますが、私たちの動物相の中で最も神秘的で不可解であると一般的に認められているこの生き物の行動や習性を私が長年知っていなかったら、私はあえて冒険することはなかったでしょう。というのは、ここで述べられた事件は、私自身の生涯にわたる観察と調査の収集を体現しているからです。カワウソは魚を追うときはもっぱら視覚によって導かれているという意見に私も同意します。ただし、川や池の水面を嗅いで魚の存在を感知できる驚異的な嗅覚の力が、泳いでいる時にも発揮される可能性は十分にあります。
カワウソの物語は、どんな長さの物であれ、今初めて語られるようになったと私は信じています。そして私の願いは、この物語が、カワウソに対するより広く深い関心をもたらし、彼等に不当にもたらされている偏見の一部を取り除く手段となることです。
Tregonebris, Sancreed,West Cornwall.
March 10, 1909.