甘い物と大事な話
こんばんわ。
よろしくお願いします!
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馬車は、カフェに到着した。
女性客で賑わっている。
カフェの店員に、ニ階の窓際の席を案内された。
「ナサリー、ここのおすすめは何かしら?」
「こちらでは、いちごのパフェが、おすすめだそうです。」
「パフェがあるのね。食べてみたいわ。」
「では、そちらと紅茶を注文しますね。」
運ばれてきたパフェは、前世のパフェに似ている。
ただ、アイスクリームの代わりに、違う物が乗っていた。
ナサリーが1口食べた後、私に渡してくれる。
美味しく食べ進めていくと、チーズケーキをサイコロ状に切ったものだ。
いちごと生クリームとチーズケーキは、合わせて食べても、とても美味しい。
幸せな気分になった。
これは、人気がでるのもわかる。
久しぶりに、甘い物を食べた。
男爵家の料理は、美味しいけれど、デザートは柑橘系のさっぱりとしたものが多い。
とても懐かしい気持ちになった。
紅茶も、ベリー系の甘酸っぱい紅茶で、甘いものによく合う。
「カフェ、いいわね。」
前世では、カフェによく行っていた。
おしゃれな所にも行っていたけれど、友達と推しのコラボカフェに行って、目当てのコースターを引くまで、飲み続けたのを思い出す。
もちろん、彼カノ魔法学園のコラボカフェにも行った。
飲み物一杯につき、何種類もあるコースターが一枚ついてくる。
推しのコースターを引き当てるまで、甘い飲み物をお腹がたぽたぽになるのを構わず、飲み続けた。
結局、一枚も推しの宰相が来ず、カフェに来ていた知らない人に交換してもらったな。
「お嬢様が楽しそうで、私はとても嬉しいです。」
私が、パフェを満喫している所を、にこにこしながら、ナサリーは眺めていた。
「こちらの紅茶クッキーも、おすすめだそうです。帰りに買っていきましょう。」
「お茶の時間に食べるのが、楽しみね。」
カフェを出ると、最後に卵の看板があるお店に寄った。
「ここは、国内の物から外国の物まで数多く揃っているエッグ商会ですわ。流行り物なら、ここがおすすめです。」
食品から、雑貨まで色々な物が売っている。
ふと、色鮮やかな紐が目に入った。
「これは、何?」
「こちらは、リボンですね。絹でできた高品質な物です。」
「素敵ね。水色のリボンと白いレースのリボンが欲しいわ。」
「かしこまりました。こちらで、お嬢様の髪型を可愛く仕上げますね。」
「ナサリー、お願いするわ。」
久しぶりのおでかけは、大満足で家に帰った。
勉強漬けの毎日だったが、休みの日は今日みたいに出かけて、気晴らしをしよう。
「ハナ、帰ったのか。話したい事がある。」
家に帰って家用のドレスに着替えると、男爵がやってきた。
男爵は、今までもちょくちょく会いに来て、ドレスは欲しくないかとか、あれこれ欲しいものはないか、貢いでくれにきた。
ドレスは最初に用意されていただけで、三十着くらいあったから、別にいらないと思っていたが、季節と流行によって、変えなくてはいけないらしい。
デザイナーが、家にやって来た。
採寸は大変だったけれど、出来上がったドレスは、どれも素敵なデザインで気に入っている。
私の顔は、まさにヒロイン顔だから、非常に可愛いく、身体つきも華奢で可愛い感じのドレスが良く似合う。
前世では、絶対に着こなせないデザインも着こなせるから、とても楽しく着ている。
私の中で、ナコッタ男爵は、父親というよりも、何でも買ってくれる親戚のおじさんとして、接してる。
「お父様、どうしたの?」
「そろそろ、勉強も進んだだろうから、魔法について教えておこうと思ってな。」
男爵は、私に、大事な魔法の事を教えてくれた。
「この世界では、十歳になると、神から魔法を授かる。普通は一人一個だが、ハナには特別に三個もある。一つ目は、回復魔法。ハナも記憶喪失になった時にかけられたと思うが、相手を回復させる魔法だ。回復魔法を使える人間は、学園を卒業後、教会に入る者が多い。うちに来たのも、教会で、リスリー=ラッセと言う。ラッセ男爵家の次男だ。ちなみに、ハナは教会にはいる予定はない。貴族の女性だからな。ニつ目の魔法は、魅了。普段から、異性に好かれやすくなるらしい。三つ目は、輪廻転生。この魔法の効果は、よくわかっていない。魔法を3つ持っているものは、聞いたことがない。高位貴族の令嬢が持っているのなら、持て囃されるかもしれないが、うちは男爵だ。どんな風に注目され、嫌味を言われるかわからない。回復魔法以外の魔法は持っていることを隠しなさい。」
「回復魔法を持つ貴族の女性は、何故教会に入らないのですか?」
「回復魔法は貴重で、高位貴族から結婚を申し込まれることが多いからだ。聖女として、大切に扱われることが多い。」
「……わかりました。」
私は、よくわかってない魔法を持っていて、大丈夫なんだろうか?
輪廻転生って確か、生まれ変わりって意味じゃなかったっけ?
私が目覚めた事と、何か関係がありそうだ。
男爵曰く、魔法が三つもあると、世間から注目されやすく、変な目で見られるらしい。
高位の令嬢が魔法を三つ持つのは、いい噂になるが、男爵令嬢の様に、爵位が低いと悪い噂になるかもしれない。
回復魔法以外の魔法は、誰にも言わないように、男爵に念押しされた。
完全にこれですね。
ゲームで、ヒロインの好かれる理由。
魅了魔法のおかげだったのね。
普段から、異性に好かれるなんて、ハーレム作ってくださいって、言われてるものだよね。
但し、その魔法を持ってる事を、他の人に言ったら、好かれるものも好かれなくなる。
偽りの好意なんじゃないかって、疑われちゃうよね。
絶対、誰にも言わないようにしよう。
男爵は、それだけ言うと、部屋をそそくさと出て行った。
そろそろ、継母と夕食の時間なのだろう。
後、このニヶ月で継母に、一度だけ会った。
私が自分の部屋からでたら、継母が廊下にいた。
避けようがない。
ゴードン先生の後に続いて、ドアを出たのが行けなかったんだろうな。
ナサリーだったら、部屋を出る前に、止めてくれただろうし。
継母は、こちらの事は、完全に無視しているようだった。
ゴードン先生には会釈をしていたけれど、まるで、私は居ないものの様に、目の前を通り過ぎていった。
挨拶の言葉を必死に考えていた私を、誰か慰めて欲しい。
まぁ、揉めない分には、いいよね。
喋っても、良いことないだろうし。
継母のことは、忘れよう。
私も一人で夕飯を食べ、お風呂に入り、布団に入る。
ふと、今日借りた漫画を思い出し、ライトを付けてページを捲る。
「な、何これ。凄い……!」
生徒会のメンバーと一人の女生徒の恋愛の話だ。
一人の少女を取り合う、恋する男性が四人。
生徒会長の王子様と副会長の公爵の子息、書記と会計の伯爵の双子、もう一人は庶務の同い年の侯爵の子息。
高位の貴族に取り合われる、可憐な侯爵令嬢。
婚約者の令嬢達の妨害にも負けず、恋愛をしていくヒロイン。
私の目指す姿があった。
立派なハーレムだ。
ナサリー、ごめん。
内心、あんまり興味がなくて、適当に読もうとしか考えていなかったけれど、これはハマるわ。
絵も素敵だし、ヒロインの感情も理解しやすい。
私はすっかりはまって、一巻をあっという間に読み終え、次の休みには、全巻を借りる事になった。
そして、何度も読み返して、すっかり薔薇野雫先生にハマるのだった。
その後、勉強したり、出かけたり、忙しく毎日を過ごしていると、あっという間に、学園へ編入する前日になっていた。
この一年の間、定期的に、癒しの使い手がきて、記憶が戻るかを確かめたけど、結局戻らなかった。
それは、そうだよね。
中身が別人だし。
そして、半年位で、癒しの使い手はこなくなった。
多分、貴族としての勉強が身についたから、記憶を戻す必要がなくなったというのもあると思う。
まあ、戻らないし、別にいいよね。
この一年間、きっちり勉強したおかげで、見違えるほど変わったと思う。
カーテシーもできるし、男爵令嬢としての知識もかなりある。
知識があるから、お淑やかに過ごしてたら、悪役令嬢のアリッサ公爵令嬢に、何も言われないレベルで、過ごせると思う。
ただ、せっかく知識があって、ゲームの世界で過ごせるのに、そんなに勿体無いことをするわけがない。
だって、イケメンに、ちやほやされてみたい。
キュンキュンするスチルみたいな事、実際に体験してみたい。
大事にされてみたい。
前世で死ぬ時のように、誰にも助けられず、一人で死にたくない。
私は薔薇野雫先生の作品の様に、自分の恋愛をするのだ。
その為に勉強をして、備えて来たのだ。
さあ、明日からが本番だ。
いよいよ学園に、ニ年生から編入する。
待っててね、攻略者達。
私が攻略しにいくから!
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読んで頂きありがとうございます!
魔法の話がやっとできました!
そろそろ学園にはいりたいです。
これからも、頑張ります!