魔法とは
こんばんわ。
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魔法の本も、家の図書室に一冊だけあった。
タイトルは、魔法の基礎。
著者は、魔法教会と書いてある。
『世界には、魔法の素である魔素が満ちている。
生物は、口や鼻から、魔素を吸い込み、身体に取り込む。
取り込まれた魔素は、血液と一緒に、身体中を巡る。
そして、血液から溢れた部分は、身体へと溜まっていく。
身体が魔素に馴染んでくると、魔法を神から授かる。
人間は、十歳になってから、神に祈る事で授かることができる。
魔法を発動させるのは、巡る魔素を練り、思考すること。
思考をより深くすること、つまり、起こる現象を強く思い浮かべることで、魔素を多く練ることができ、魔法を強くすることが出来る。
毎日一分でも、魔法について考えることで、魔法を強くすることができる。
大事な事は、自分の魔法を使った結果を、想像する事だ。
この本を読んでいる者が、良き事に魔法を使う事を祈っている。』
要約すると、この様に、書かれていた。
実際は、偉大な魔法教会について、何ページも書かれている。
確かに私は、既に自分が回復魔法をかけられていたから、その事を再現したいと思って、魔法を使い、イメージ通りに、発動させた。
この本が正しいなら、前世の回復魔法をイメージしたら、もっと凄い効果になるのかな。
例えば、個人ではなく、全体に一度に回復魔法をかけるとか、寝たきりになった人を全回復させるとか、色々な事が出来そう。
教会の人は無理だと言っていたけれど、記憶喪失の記憶も本当は戻るんじゃないかな?
毎日、魔法について考えるだけで、魔法が強くなるなら、毎日、寝る前に考えてみよう。
魔法の本は、貴重らしい。
男爵の家に一冊でもあるのは、凄いことなのかな?
でも、そのおかげで、回復魔法が強くなりそう。
使う機会があったら、試していこう。
次の日。
「お嬢様、今日はよく晴れています。折角ですから、庭園で散歩をしませんか?息子のアランも、桜の花が見頃だと言ってました。」
「桜の花……。最近暖かくなってきたとは思っていたけれど、春になったのね。記憶が無くなってから、そろそろ一月たつの……。」
私がこちらに来た時に、庭園は、所々にしか花がなかった。
しかし、今、窓の外には、色とりどりの花が見えた。
門の方に、桜の木が見える。
ピンクの花は、日本を思い出して、懐かしい。
「そうね、行きたいわ。」
「良かったです。桜の花は、お嬢様の色ですから。綺麗な所を、近くてお見せしたいと思っていたんです。」
「そうだったのね。」
確かに、髪も目もピンクな私は、桜っぽい。
ナサリーも散歩したそうだし、最近、勉強ばかりで家に篭っていたから、気分転換に歩いてこよう。
ナサリーに、外出用のドレスへ着替えさせて貰う。
ドレスも、ピンクと白で桜カラーだった。
おまけに、桜っぽい日傘を差しながら、ナサリーと、桜の木へと向かって歩いて行く。
太陽の光で、ぽかぽかと暖かい。
近くへ行くと、まだ若そうな桜の木が三本生えており、どれも見頃を迎えていた。
すると、ピーピーと、何処からか鳴き声がする。
よく見ると、桜の木の下に、怪我をして飛べなくなっていた鳥がいた。
「まあ、真っ白い体にピンクの嘴。文鳥ね。でも、大変。羽を怪我しているわ。お嬢様、どう致しましょうか?」
「私がなんとか、してみるわ。」
文鳥には悪いけれど、丁度良い。
回復魔法を使うチャンスだ。
まさか、怪我人を作って、回復魔法を試すわけにはいかなかったから、こういう時を待っていた。
文鳥が、自由に空を飛んでいるイメージで、回復魔法をかけた。
白い光に包まれた鳥は、羽の傷がなくなり、元気に飛び立っていった。
「お嬢様、今使ったのは、回復魔法ですよね?しかも、完璧です。まさか、魔法学園に通わずに、魔法が使いこなせるなんて、素晴らしいですわ。文鳥も空を飛べて、お嬢様に感謝しているはずです。」
「そう、回復魔法よ。魔法の本を読んでみたら、使えるようになったの。効果があって良かったわ。」
「魔法の本を読んだだけで、使えるようになるなんて、お嬢様は天才ですね。」
「ナサリー、ありがとう。」
「いえいえ。本当の事を言っただけですわ。それにしても、おかしいですね。この屋敷では、誰も文鳥を飼っていないですし、野生では、あんまりいないと思っていましたのに。どこかのペットが迷い込んだのかしら……。」
ナサリーは、今年で四十歳の優しい女性だ。
夫は、料理長のランドルフ。
息子は、庭師のアラン。
背筋はピンと伸び、美しい。
目尻の皺が、笑顔をより素敵にしている。
ナサリーは褒め上手だし、優しく、素敵な女性だ。
ナサリーは、面倒見が良く、迷惑もかけているし、愛情を感じるから、私のお母さんのようだ。
さて、回復魔法は、無事に使えるようになった。
効果もイメージ通りだった。
日本人の想像力は、魔法に向いてると思う。
これからも毎日、眠る前に魔法について考えよう。
それに、あの文鳥は、ナサリーが言うようにおかしい。
近くで誰か飼っているのか、それとも誰かがうちに紛れ込ませたか、それとも誰かの魔法か。
何かの事件に巻き込まれるのは嫌だ。
一人で行動せず、注意していよう。
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