お土産
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「ふあ。」
口を手で抑える。
昨日遅くまで起きていたから、大きな欠伸がでる。
少し眠いわ。
「お嬢様、今日から学園です。その様な大きい欠伸を淑女がしてはいけませんわ。」
ナコッタ男爵領からの馬車の旅も無事に終わり、昨日学園の寮に無事に着いた。
今日から2学期だ。
「ナサリー。ごめんなさい。夜遅くまで起きていたから眠くなってしまって、外ではしない様に気をつけるわ。」
「分かってくだされば良いのです。昨日は遅くまで部屋の明かりが着いていたようですが、どうされたのですか?」
良かった。
ナサリーは、そんなに怒っていないみたいだ。
いつも優しいけれど、たまに怒ると凄く怖いのよね。
「実はお土産を買っていくのを忘れた事に気がついて、どうしようかと悩んでいたの。」
「ナコッタ男爵領自慢の柑橘類なら沢山ございますよ?」
ナサリーは冷蔵庫からオレンジやグレープフルーツをとりだす。
「そうよね。事故があって、エッグ子爵領でのお泊まりは無くなってしまったし、王宮はお土産を買うどころではなかったから。グリーン子爵領もお土産を売っているところに行っていないし……。やっぱりうちの領の物をお土産にするわ。」
「それがよろしいかと思います。」
「お土産にアロマオイルを持っていきたいの。シトラスとオレンジとグレープフルーツとレモンの小サイズが1本ずつあるかしら?」
「勿論ございます。お嬢様が開発してから大人気の商品ですので、何かの時の為にいつも持っております。」
ナサリーは手に持っていたものを冷蔵庫にしまうと、今度はアロマオイルの瓶を取り出した。
オレンジのアロマオイルだったら、オレンジ色の丸に緑のヘタのイラストが瓶に書いてあるだけのシンプルなパッケージだ。
「そうだったのね。ナサリー、ありがとう。そのアロマオイルに救われたわ。ラッピングしたいから紙袋もあるかしら?茶色の無地の紙袋で良いから、手提げ付きのやつ。」
「アロマオイルを入れられる位の手提げ袋でしたら、各色揃えております。茶色の無地でよろしいのですか?」
「ええ。外側はそこまでカラフルじゃなくて良いの。ただ中に入れる手紙はこだわるわ。黄緑の便箋と封筒にしましょう。手紙を書いたらそれぞれののアロマオイルをほんの少しだけつけて、封筒に入れる。新品のアロマオイルと手紙を紙袋にいれて、手提げの片方の根本に黄色いリボンをつける。思ったより良い感じに出来たわ。」
リボンは、半分に畳んで手提げにかけて、2本の端を輪の方に通すだけの簡単な結び方だ。
緩く結んで形を整えれば、シンプルで可愛い。
「可愛くできて良かったですね。ちなみにどちらの方へのお土産なのですか?」
「え?内緒よ。」
ナサリーに、これはハンレーとショーンとライとルーンへのお土産とは流石に言えない。
怪しげなナサリーの目線を避けながら、お土産と鞄を持つと、部屋を後にした。
「ナサリー、いってきます!」
「帰ってきたら、お土産の話を詳しく聞かせて下さいね!」
ドアが閉まる前にナサリーの声が聞こえた。
帰るまでに上手い言い訳を考えておこう。
もう9月なはずなのに、日差しが暑い。
蝉の声もまだ聞こえる。
日傘にしっかり入ると、教室に向かって歩き出した。
「おはよう、ハナ。」
「ハナさん、おはようございます。」
「ハナ、おはよう。良いところに来たわね。」
「みんな、おはよう。エスタ、どうしたの?」
「ビックニュースよ。ベルとフェーン殿下が無事に婚約したわ。」
「ベル、良かったわね。おめでとう。」
「ありがとう。夏休みの最終日の昨日、父上から正式な話を聞かされて、その後フェーンに直接婚約して欲しいって赤い薔薇を渡されたんだ。」
ベルの顔が赤いし、口元がふわふわしている。
照れてるし、可愛い。
「おめでとうございます。私もグリーン子爵領で話をした後から気になっていたので、婚約の話がまとまって良かったですわ。」
「絶対婚約がまとまるとわかってはいたけれど、無事に婚約したって報告されると安心するわね。」
ベルのふわふわした顔を見ただけで、私も嬉しくなる。
「ハンナもベルも婚約したし、今度は私達の番ね。ハナ、頑張りましょう。」
「そうね。良い相手を見つけましょう。」
エスタと握手をする。
「何それ、2人とも面白いね。」
「エスタさんとハナさんは、この間もこの話をして、抱き合っていましたわ。」
「それも面白そうだし、私も見たかったな。」
ベルもハンナも笑顔だ。
良かった。
ハンナが笑えている。
「ベルもハンナも酷いわ。私達、真剣なのよ。そうよね、ハナ?」
「ええ。勿論よ。」
エスタと顔を見合わせると、今度は私達が笑い合う。
やっぱり、仲が良い友達って良いな。
「失礼。ラプン男爵令嬢。今、少しよろしいだろうか?」
「王太子殿下、勿論ですわ。」
ベルが慌てて、カーテシーをとる。
私達3人も後に続いた。
「楽しそうに話しているところに割り込んですまない。頭をあげてくれ。私は弟の婚約者に話しかけに来ただけだから。」
ショーンがベルを見る。
「ラプン男爵家と王家の婚約は、凄まじい勢いで噂になっているよ。貴族の間だけではなく、一般国民の間にも広がっている。やはり、ニャニャ伯爵家といい、ラプン男爵家といい、物語が流行っているから、話題性が高いらしい。フェーンもラプン男爵令嬢と婚約できて、とても嬉しがっていたよ。これからもフェーンの事をよろしく頼む。」
「こちらこそ、よろしくお願い致します。」
「ああ。話はそれだけだ。それでは、また。」
ショーンはそのまま去ろうとする。
「王太子殿下、お渡ししたい物があるので、後でお時間よろしいですか?」
せっかくショーンから、話しかけてくれたチャンス。
お土産を渡したい。
「ホイップ名誉男爵。渡したいものとは?」
「ナコッタ男爵領のお土産ですわ。」
「そうか。私は何も用意していないんだ。もらうだけと言うのは気がひけるな。」
「私が渡したいだけですから、お気になさらないで下さい。」
「わかった。放課後に受け取るので良いかな?」
「勿論ですわ。」
良かった。
貰ってもらえそう。
ショーンは、そのままライやウッドに話しかけに行った。
「王太子殿下にお土産ですか?ハナさん、どう言う事ですの?」
ハンナの目つきが厳しい。
「学園祭の時に事件があったでしょう。あの時にクーヘン公爵令嬢を含めて交流が出来たのよ。夏休みにクーヘン公爵令嬢にはお会いしたから、王太子殿下には、お土産を買おうと思ったの。せっかく出来たパイプは太くしておきたくて。」
「そう言う事ですの。ハナさんはあの時、王太子殿下やクーヘン公爵令嬢と一緒に、近衛兵に呼ばれていましたものね。私はてっきり、婚約者がいるのに、王太子殿下の事が好きになってしまったのかと思いましたわ。」
ハンナが胸に手を当てて、安心した様に息を吐く。
ごめんね。
本当はハーレム狙いで、その為のお土産です。
「王太子殿下だけではなくて、いつもおすすめの参考書を教えて貰っているシュマロ公爵子息やリッツ先生にもお土産があるのよ。」
「そうだったのですね。完全に私の勘違いでしたわ。」
いや、逆に鋭い。
「私もハナの様にお土産を買ってくれば良かったわ。リッツ先生だったら、渡せたでしょうに。失敗したわ。」
エスタが頭に手をやる。
「この3人には3日前まで会っていたし、私も誰かにお土産を買おうと思わなかったな。確かにリッツ先生だったら、受け取ってもらえそうだね。」
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