望み
大型連休特別投稿中です。
5/2から毎日投稿してます。
本日最終日です。
次回は、5/10投稿になります。
よろしくお願いします。
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「お待たせ致しましたわ。」
ハンナは部屋からでるとこちらにやってきた。
ラルドは、フェーンとベルの所へ行った。
「全然待っていないよ。すぐ出てきたじゃない。」
「詳しい話は親を通してからとその一点張りでしたわ。」
「大丈夫だよ。確定演出だから。」
絶対婚約申し込まれるから。
「確定演出ですか?」
「何でもないよ。ただおめでとう。」
「まだ気が早いですわ。」
「いいえ。断言できるわよ。絶対婚約を申し込まれるわ。おめでとう。」
エスタがハンナの手を優しく包み込んだ。
「エスタさんもハナさんもありがとうございます。」
ハンナはふんわり笑った。
「皆さん、部屋に入りますよ。」
フェーンから声がかかる。
フェーン、ベル、私、エスタ、ハンナ、ラルドの順に部屋へと入る。
「母上。私の友達とベルの友達が、挨拶に来てくれました。ご紹介します。真の聖女の勲章を持つハナ=ナコッタ=ホイップ名誉男爵。特別外交官のバッチを持つエスタロッサ=アンダギー子爵令嬢。ハンナ=エッグ子爵令嬢、最後にラルド=グリーン男爵子息です。」
全員でカーテシーやボウ・アンド・スクレープをする。
「ふむ。くるしゅうない、近うよれ。其方達に会えるのを楽しみにしておった。頭をあげて楽にするのじゃ。」
顔を上げるとそこには、身長が低いが胸が豊かで白い髪に赤い目のプリンセスドレスを着た女性が立っていた。
「妾がフェーンの母親で、この国の正妃をやっているミコ=レッツェルじゃ。ハナちゃんに、エスタロッサちゃんに、ハンナちゃんに、ラルドくんじゃな。よろしくなのじゃ。この白い髪に赤い目は、アルビノと言って余り見ない色合いじゃから、驚いたかもしれんが、日の光に弱い以外はあまり他の人と変わらんよ。とって食わんから、安心するのじゃ。」
にこにこと笑っている。
「こちらこそ、よろしくお願い致します。」
エスタの声にはっとした。
「「「よろしくお願い致します。」」」
「可愛らしいのう。女の子がベルちゃんと友達で、男の子がフェーンの友達じゃな。よく来た。さあ、椅子に座って茶でも飲もう。」
ミコが円卓を指さす。
「上座も下座もないから、好きに座ると良い。まあ、最初は緊張するじゃろうから、妾の隣にはフェーンとベルちゃんじゃな。あとは好きにお座り。」
フェーンの隣にはラルド、その隣にハンナ、その隣に私、その隣にエスタ、その隣にベルとなった。
ティーカップには、緑色の液体が湯気をあげ、茶菓子には優しい色合いのお菓子が並ぶ。
どう見ても、緑茶に練り切りだ。
「妾の出身はゲッティ皇国じゃが、母親はコエド出身での。そこの有名な茶と菓子じゃ。すっきりとした飲み口と甘すぎない味にはまっておる。其方らも騙されたと思って一口食べてみるのじゃ。」
私は漆塗りの和菓子切りを使って一口大にすると、練り切りを口に運ぶ。
前世のお婆ちゃん家の味だ。
緑茶も飲む。
あったかいし、ほっとする。
懐かしい。
目からすっと、涙が溢れた。
「ハナちゃんは、泣くほど美味しかったかの。良い良い。まだあるから沢山お食べ。そうだ。みたらし団子もあるんじゃよ。今、だすのう。」
執事がお盆の上にみたらし団子の乗った皿を置いて運んできた。
串からは外れていたから、そのまま和菓子切りで食べる。
あまじょっぱい。
美味しい。
「お土産もあるから、心配せず全部お食べ。」
私はうなづくとゆっくり噛み締めながら、久しぶりの和菓子を堪能した。
「このお茶と菓子はハマるものにはハマるらしくて、ハナちゃんの様に泣く子も珍しく無いんじゃよ。逆に美味しくないと言うものもおるがの。」
「母上の故郷を貶める訳ではないのですが、私はクッキーやケーキの方が好みです。」
「無理して食べんでも良い。妾が後で食べるから。」
「そう言うわけにはいきません。残しませんよ。」
「それは、良き子に育ってよかった。親の顔が見てみたいの。おや、妾の子じゃったか。」
「全く母上は、相変わらずですね。皆さん、今見ていただいたものが全てです。正式な場以外ではいつもこんな形なので、気楽で大丈夫ですよ。」
「かっかっか。手厳しい。妾は、自然体なだけじゃよ。」
「お義理母様はいつも面白くて好きです。」
「ベルちゃんも良い子じゃのう。フェーンのお嫁さんがベルちゃんで良かったのじゃ。さて、2杯目は紅茶にするかの。其方らは好きな方を選ぶのじゃ。」
「私はいつもの様に紅茶にします。ベルは緑茶?」
「うん。私は緑茶にする。」
「私は紅茶でお願い致します。」
「私も紅茶にしますわ。」
「私は緑茶でお願いしますわ。」
こんな機会滅多にないだろうし、ここは緑茶が飲みたい。
「俺も緑茶で。このもちもちしてるのも美味しくて好きだ。」
「ラルドくんは、気に入ってくれたかの。出した甲斐があったのじゃ。」
「フェーンの母ちゃん、ありがとう。美味しいよ。」
「ラルド、それは余りにも不敬ですわよ。」
慌てて、ハンナがラルドの腕を引く。
「良い良い。妾は全く気にしていないから、大丈夫じゃよ。今日は無礼講じゃ。」
「寛大なお心に感謝致します。」
「今日は妾主催のコンサートに来てくれてありがとうなのじゃ。楽しんでもらえたかのう?」
「お一人お一人の演奏や声が、素晴らしかったです。」
「最後のサプライズの意味を知って、驚きました。」
「まさか、元王妃殿下が歌われるなんて思っても見ませんでしたわ。」
「俺は、姉ちゃんの国歌独唱が見れて良かったよ。」
「うんうん。其方達が楽しんでくれた様で良かった。妾の趣味の為に開いている様な物じゃが、気に入ってくれる者がいると嬉しいのう。最後のサプライズもラルドくんのお姉ちゃんの国歌も素晴らしかった。心を込めて歌うと、聞いている方も気持ちが良くなるから、妾は好きじゃ。良かったら、また聞きにおいで。招待状を送るからの。」
「ありがとうございます。嬉しいです。」
王妃殿下からの招待状って凄い。
「是非、行きたいです。」
「喜んで参加致しますわ。」
「ハンナが行くなら、俺も行くよ。」
「おや、ラルドくんは、ハンナちゃんにほの字かの。コンサートはデートにぴったりじゃから。おすすめじゃよ。」
ミコはにやりと笑う。
「それなら、絶対行く。」
「素直な子は、好きじゃよ。フェーンとも、これからも仲良くしておくれ。」
「フェーンはいい奴だからな。俺も好きで友達やってるんだ。だから、ずっと友達だよ。」
「それが聞けて、妾は嬉しいよ。さて、妾の身体の事で相談したい事があっての。ハナちゃんをお借りして2人でこそこそ秘密の話をしても良いかの?」
「勿論です。私で良ければご相談に乗ります。」
「良かったのじゃ、ありがとう。それなら、他の子達はお土産を忘れずに貰っていくのじゃよ?」
「ええ、母上。心配なさらないでください。私が責任を持って、お土産毎皆さんを無事に帰らせます。」
「うむ。任せたのじゃ。」
皆が早々と部屋を出る。
お土産の量が凄い。
ワゴンに山積みになっている。
お土産のワゴンに続いて、侍女や執事も部屋を出ていく。
最後の1人が、私達の前に緑茶を置いて、一礼すると、扉は閉められた。
「ハナちゃん、ここからは真面目なお話じゃ。」
「はい。」
身体の相談って言ってたけれど、どういう相談なんだろうか。
「まず確認じゃが、ハナちゃんは日本人じゃったな。」
「え?」
日本人?
「良いリアクションじゃ。緑茶に和菓子のリアクションが日本人その物だったから、確信したんじゃよ。」
「はい、そうです。私は前世が日本人で高校生でした。」
もしかして、ミコさんって。
「高校生じゃったのか。それは早く亡くなってしまったのう。妾も前世は日本人で、23歳の時に事故で亡くなったのじゃ。」
「ミコさんも日本人だったんですね。」
「そうじゃ。この世界、意外と日本からの転生者や転移者が多いのじゃよ。転生者はまだ良いが、転移者の者は急に現れるから、妾の方で保護しておる。今まで10人位はあっておるのじゃ。」
「そんなに日本人っているんですか?」
「そうじゃ。会いたいかの?」
「会ってみたいです。」
「わかったのじゃ。後で機会を作るのう。」
「ありがとうございます。」
「そして、本題なのじゃが、妾は病気なわけではないのじゃ。お腹に傷があってな。それを治して欲しい。ただの傷じゃなくて、帝王切開の傷なのじゃ。」
「ていおうせっかいですか?」
「そうじゃ。ショーンとフェーンを産むためにお腹と子宮を切った傷じゃ。母体の安全を顧みず、帝王になる子を取り上げるための胎児優先な出産方法の一つじゃよ。妾は身長が140センチもなくてのう。赤子の頭が通らず、そのまま産めば、妾も赤子も死ぬと予言されて、帝王切開をする事になったのじゃ。」
「身長でお腹を切る事が、あるんですね。」
「骨盤が開くのも限界があるからのう。それより頭が大きければ、下から通ることはできないじゃろ?その為にお腹を大きく切って、そこから赤子を出すのじゃ。しかもその傷が2回分、子宮についておる。3人目の子を妊娠したら、産む前に子宮が破裂して死ぬと予言されてのう。欲しかったのじゃが、産めなかったのじゃよ。そろそろ妾も40歳近い。諦めようと思っていた所に、其方の噂を聞いた。予言者に聞いてみたら、後2年で3回程チャンスがあると聞いてのう。居ても立っても居られなくなったのじゃ。妾は前から女の子も欲しかったのじゃよ。ハナちゃん、お願いできるかのう?」
ミコさんは、私の目をじっと見つめてくる。
私は出産したことはないし、帝王切開も知らなかった。
だけど、詳しいことは、知らなかったけれどハンレーのあれは治せた。
ミコさんも治せるんじゃないかな?
「やってみます。」
ミコさんのお腹の傷が治ります様に。
表面の傷だけではなくて、奥の傷もしっかり治ります様に。
目の前のミコさんのお腹が明るくピカピカ光る。
たっぷり5分は光っていただろうか。
危なかった。
また、意識を無くして倒れるところだった。
魔力が殆ど無くなったのだろう。
目がチカチカする。
「ハナちゃん、本当にありがとう。」
ミコさんは花の様に笑った。
良かった。
だけど、ダメだ。
意識が無くなる。
身体が椅子から崩れそうになった時、また誰かが身体を支えてくれた。
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読んで頂き、ありがとうございます。
大型連休特別投稿。
作者やり遂げました。
ストック0から毎日ひいひい言いながら書いてました。
達成感あります。
次回からは、2日おきの更新に戻ります。
これからも、よろしくお願いします。




