事故
よろしくお願いします。
今回、馬車の事故の描写がございます。
ご注意ください。
グロイ描写は殆どありません。
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夏らしい爽やかな柄のドレス。
いつものドレスより、軽い気がする。
ただし、コルセットはつけているし、丈は足首より長い。
とにかく暑い。
外に出る時は帽子もつけているし、日傘もしているけれど、いつか熱中症になりそう。
早く制服に戻りたいな。
「お嬢様、お顔がだらけています。カフェの中の個室とはいえ、ご令嬢としての品格がある顔でお願いします。」
「ナサリー、暑すぎるわ。汗だくになる位、暑いもの。難しいわ。」
「確かに、この暑さは辛いですわね。今冷たい飲み物を注文しますからお待ちください。」
カラン。
氷の入った飲み物の音が心地よい。
店員が陶器のカップに入れた飲み物を持ってきた。
「夏のブレンドアイスティーになります。」
ナサリーが一口飲んだ後、カップを手に取ると、赤い液体を口に含む。
「甘酸っぱくて、美味しいわ。」
「最近話題のハイビスカスやローズヒップ等をブレンドした美人になれるアイスティーらしいですわ。」
「美味しくて、美人になれるなんて素敵ね。」
「はい。さて、どうやら待ち人がきた様ですよ。」
個室の中に、エスタとハンナが入ってきた。
「ハナ。元気にしてた?お泊まり会楽しみね。」
「遅れてしまってすみません。」
「エスタ、ハンナ、久しぶりね。勿論、元気よ。」
「良かった。待たせちゃってごめんね。来る途中に事故があったみたいで、馬車が回り道しなきゃいけなかったの。ベルも遅れてるみたいね。」
「そうだったのね。確かに5分位前に大きい音がしたから、それがそうだったかも。事故の場所、ここから近いのかしら。」
「先ほど、執事達が確認しに行ったのですが、どうやらかなり大きい事故だったらしいですわ。大型の馬車同士がぶつかったと聞きました。」
バン。
「ハナ、すぐ一緒に来て。」
扉が豪快に開かれると、砂まみれのベルが入ってきた。
「その格好。どうしたの?」
「私が乗っていた馬車が事故にあって、とっさに結界をはったけれど、時間がなくて自分しか覆えなかったの。フェーンが。フェーンが死んじゃう。」
ベルが、大粒の涙を流し始める。
「わかったわ。今すぐに行くから案内して!」
ベルと同じく、砂まみれのモノクルをつけた執事が一礼する。
この執事は、服がかなり破れていて、出血が凄い。
「ナコッタ男爵令嬢、大変に申し訳ありません。ご令嬢の貴女を事故の現場にご案内するのは、誠に失礼なのですが、今は緊急事態でして。」
「緊急事態なのは、わかったわ。まずは、あなたからね。」
とりあえず、砂まみれだし、細菌とかで余計悪くならない様に、身体中綺麗にしてから、傷も治るイメージで集中。
執事は白く光ると、砂や身体の傷が直った。
「こ、これは、素晴らしい。全て綺麗に治るなんて。」
「ハナ、こっち。」
ベルが私の腕を素早く掴むと、移動し始めた。
エスタやハンナ、ナサリーに執事も後からついてくる。
歩いている間に、ベルを綺麗にしようと魔法を使ったら、出来た。
カフェをでて、通りを二つ挟んだ所は、まさに地獄だった。
4頭立ての馬車が横転していて、真っ二つに割れている。
馬は1頭を除いて、動いていない。
もう一つの馬車は、民家に突っ込んでいた。
砂煙がもうもうと立ち込め、視界が悪い。
「フェーンは、こっち。」
倒れている馬車の近くに比較的綺麗な布が何枚か引かれて、その1つに男の子が寝ている。
立派で綺麗だったであろう服は、千切れて殆どない。
顔に傷は殆どないが、下半身が酷い。
布がかかっているが、右足も左足もあるべき場所に膨らみがない。
男の子が出している声は、悲鳴ではなく、意味をなさないうめき声だ。
でも、まだ生きてる。
「回復魔法。お願い、元気にして。」
フェーン第二王子殿下だけではない。
周りの怪我をした人全員だ。
あの馬達も、全員できるだけ、元気にしたい。
白く輝く光が、辺りを覆った。
何故か、私自身も輝き始める。
身体中の魔力を全部持っていかれそう。
倒れる前になんとか、魔法を終わらせる。
フェーンの足の膨らみが元に戻る。
「あれ、ここは、どこ?」
寝ていたフェーンの目が開いた。
「……良かった。」
倒れそうになる私の身体を、誰かが支えてくれた。
「……ハナ。ハナ!」
誰かの声が聞こえる。
目を開けると、知らない天蓋が見えた。
ここ、どこ?
「……あの後、どうなったの?!」
「良かったですわ。目が覚めましたのね。」
「良かった。いきなり、倒れるから驚いたわ。あんなに凄い魔法使ったからだろうけれど。」
豪華な天蓋付きベッドに、私は寝ていたらしい。
ベッドサイドに、エスタとハンナ。
後ろの方にナサリーがいる。
「お嬢様、ご安心下さいませ。事故にあった人は全員助かりましたわ。全員傷1つございません。」
「そうなの。良かったわ。」
「あれだけの大きな事故で誰も死ななかったし、傷1つもなかったのは、本当に凄いことよ。しかも、事故にあったのが、第二王子殿下とゲッティ皇国の大使ご夫妻だったの。どちらかが傷ついても、外交問題になっていたわ。」
「すぐできる対応を全て終えて、今は王宮の中の応接室にいる所ですわ。」
「ここ、王宮なの?!」
「そうですわ。」
通りで、見たこと無いくらい豪華で広い部屋だと思った。
コンコンコン。
「失礼します。レディの目が覚めたとお聞きして、入ってもよろしいですか?」
大人の色気のある声。
この声って……。
「少々お待ちくださいませ。お嬢様、身体を起こせそうですか?」
「ええ。どこも痛く無いし、健康よ。歩けるし、座れるわ。」
「そうしましたら、宰相様がお待ちですので、ソファの方でお迎えしましょう。」
「なぜ、宰相様が、ここに。でも、わかったわ。ソファの前でお迎えするわ。」
ナサリーが私を優しく起こすと、靴を履かせた。
髪の毛や服の皺をささっと整えると、ソファまで誘導してくれる。
エスタとハンナも両隣に立つと、ナサリーは扉を開けた。
「お待たせして、申し訳ありません。」
「いえ、まったく待っていませんから、大丈夫ですよ。元気そうで良かったです。」
ルドルフはにっこり笑った。
待って、推しが笑った。
やばい、かっこいい。
自分の顔が赤くなるのがわかる。
にやけそうになるの堪えろ、私。
「倒れた私を寝かせて下さり、ありがとうございます。ただ、今目覚めた所で、あの後どうなったかがわかっていなくて……。」
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読んで頂き、ありがとうございます。
やっと主人公と宰相が喋りました。
次回も喋ります。
これからも、よろしくお願いします。




