それは偶然では無い
こんばんは。
よろしくお願いします。
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色々なことがあったし、興奮して寝付けないかと思ったら、おやすみ三秒で寝てた。
前世から今まで、眠れない時は一度もなかったけれど、こんな非常事態でも、寝つきはいい事にびっくりした。
コンコンコン。
「お嬢様、おはようございます。」
「おはよう。」
ノックをしたナサリーが、ワゴンを押して部屋にはいってくる。
「よく眠れましたか?」
「ええ。よく寝たわ。」
体感で言うと、十時間位寝たんじゃないだろうか。
「それは、良かったです。よく寝るのは、美容にいいですもの。昨日より、顔色もいいですね。」
ナサリーは、笑顔でそう言ってくれる。
きっと眠れているか、心配してくれていたのだろう。
優しいな。
でも、それより私には確認しなくちゃいけない事がある。
「ナサリー、この国の名前と王様と王太子の名前を教えて欲しいの。」
「かしこまりました。まずは、こちらで洗顔と紅茶をどうぞ。」
お湯の溜まったボウルで、顔を洗い、上質なタオルで拭く。
そして、ミルクのたっぷり入った紅茶を飲む。
濃いめで、美味しい。
目が覚めた気がする。
「ありがとう。とっても美味しかった。」
「お嬢様のお口にあって、良かったです。こちらは、ラッサ侯爵領の茶葉を使っています。さて、この国の名前は、レッツェル王国。国王陛下のお名前は、ロイード=レッツェル陛下。王太子殿下のお名前は、ショーン=レッツェル殿下ですわ。」
「……やっぱり。」
ここまで一致して、偶然は無いだろう。
私は、ゲームのヒロインになった。
「どうか、されましたか?」
「いや、なんでもないのよ。必要な知識が足りないから、ナサリーにどんどん教えてもらいたいわ。」
ヒロインになるのなら、学園に編入する前に、最低限の知識をつけたい。
私は、ゲームで特定のエンドを見る以外は、最大限頭の良さも上げておきたい派だ。
イベントが起こったとしても、無知なのと、知っているけど、知らないふりをするのでは、大きな差がある。
少しでも賢くなりたい。
「かしこまりました。私に教えられることでしたら、いくらでもお教えしますわ。それから、お嬢様には、家庭教師の先生がいらっしゃいます。詳しく聞くのなら、そちらの方がいいと思います。旦那様が、お嬢様の身体が大丈夫そうなら、明日にでも、授業を再開すると張り切ってらっしゃったので。」
「身体は、もうすっかり良さそう。そうね、知らないことだらけだから、勉強したいわ。」
きっと貴族の事は、知らない事が多すぎる。
「お嬢様は、勉強熱心で、素敵ですわ。」
その後、部屋の中で朝ごはんを食べた。
男爵の領地は、柑橘類がとれるらしく、パンとオレンジのジャム、具沢山なスープ、レモンのドレッシングがかかったサラダと生のオレンジだった。
朝から、果物が取れるのは、嬉しい。
食事の後始末が終わると、ナサリーは私を寝間着から昼間用のドレスに着替えさせてくれた。
絶対にドレスは、一人じゃ着れない。
コルセットを紐で締めるやつだった。
苦しい。
貴族の女性、めちゃくちゃ大変だ。
肋骨がぎしぎしいってる。
呼吸もしづらい。
これ、毎日着るの?
もう十分なんだけれど、脱がせてくれない?
ダメだよね、知ってた。
心の中で思っていただけだが、ナサリーの目線が厳しい。
考えていることが全てばれている気がする。
その後、家の中を案内してくれた。
説明を聞くのは、楽しかった。
豪邸と言うわけじゃないけど、十分お金持ちの家だ。
ただ、ドレスがきつい。
多分、長時間歩く事を、想定してないんだろうな。
1番はコルセットだけれど、ヒールもきつい。
後、案内の途中で、使用人の人達とすれ違うと、ナサリーに紹介されるのだが、皆親切で優しいから、びっくりした。
記憶が無くなる前のお嬢様は、調理場や洗濯場にまで遊びに行っていたらしい。
使用人全員がお嬢様の顔と名前を知っているだけではなく、お嬢様自身も使用人の顔と名前を覚えていたそうだ。
使用人は三十人くらいはいるのに、凄い記憶力だ。
ただ、私が一度聞いただけで、大勢の使用人の名前を覚えられる訳がない。
間違えたら、ごめんなさいねと、一人一人に伝えるのが精一杯だった。
ナサリーは、案内の途中で、継母の事も教えてくれた。
昨日の説明から薄々分かってはいたが、継母と私の仲は良くないらしく、なるべく会わないようにしていたらしい。
継母の部屋は、この場所だとか、昼と夜はこの辺りをよく通るから、この道は通らない方がいい等と教えてくれた。
継母が通る道は通らない方が良いと言われるくらいだから、私も会いたいとは思わない。
なるべく、会わずに過ごそう。
案内が終わったら、一日終わってしまった。
流石、貴族。
家が広い。
家族の人数は少ないのに、二十人位座れる広い食堂とかがあった。
使用人用には食堂は別であるので、完全に男爵家専用らしい。
絶対二十人分も広さがいらないよね。
無駄だと思う。
私がこの家で個人的に嬉しかったのは、自分の部屋にバスタブがあって、お風呂に入れる事が嬉しい。
足を伸ばして湯船に浸かれるのは贅沢している気分になれる。
家の案内は覚える事が沢山あって疲れたのと、昼の食事も夜の食事も、食堂で一人で食べた。
男爵は、昼食は仕事で家にいなくて、夕食は継母と一緒に食べるらしい。
一人きりだったが昼も夜もコース料理で、豪華で美味しかった。
柑橘類がそこでも出ていたから、ナコッタ領では余程有名なんだろうな。
お腹いっぱいになって、眠くなってきた。
早くお風呂に入って、寝よう。
一人でお風呂に入ろうとしたが、ドレスは一人で脱げるものではなかった。
ドレスを脱いだ後も、ナサリーが全部譲らず、結局、身体の隅々まで拭いてくれた。
凄く、恥ずかしかった。
貴族の令嬢に、羞恥心はないのかな。
でも、マッサージはめちゃくちゃ気持ち良かった。
良く眠れそう。
おやすみなさい。
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