日常
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ぬらりひょんとの戦いから三日たった。
退魔部が雅楽たちの元に着くと、彼らは慌ただしく行動した。八岐大蛇の死体を片付け、治郎の死体を丁寧に運び出し、雅楽たちに怪我がないか慎重に確認した。だが、彼らの一番の仕事はその忙しなさを持って、雅楽の治郎を失った悲しみを和らげたことだった。
彼らは全員あやかし界に似合わないサングラスとスーツを着用していた。
退魔部というのはどの国にもあり、英語ではその黒色の姿から「メン・イン・ブラック」と呼ばれているそうだ。
退魔部はある程度雅楽たちに事情を聞くと「後はまた後日聞きます。今は休んでください」と言った。
しかし、つららだけは手錠をかけられ連行された。彼はことの重大さが分かっていないか、ずっと笑顔だった。
笑顔のままずっと、見えなくなるまで彼は雅楽のことをうっとりとした視線で眺めていた。
寺子屋についてからはあっという間に時間が過ぎ去った。一日中眠りこけた後に、全身筋肉痛の体を引きずりながら、治郎の葬式を済ませた。雅楽は葬式の前に別れを済ませていた気でいたので泣くことはなかった。
今まで当たり前のようにいた治郎がいなくなってしまうのは、悲しみとか虚しさとか、そんな感情を超越した気持ちにさせた。
葬式の間中、心に空いた穴に線香の煙が通り抜けていく。ただそれだけだった。
その後は、ひたすら退魔部から事情聴取された。ぬらりひょんの能力、治郎から受け継いだ力など雅楽は洗いざらい話した。今更、秘密にすることなどなかった。
「じゃあ行ってきます」
雅楽は久々に人間界の家で、制服を着た。学校が始まったのだ。家の中には千草とカグヤがいる。
二人は玄関まで雅楽のことを見送りにきた。玄関にある棚の上には、カグヤのセンスで買ってきた生花と、治郎、雅楽、かぐやが揃って写っている例の家族写真が置かれている。
「……行ってらっしゃい」
「気をつけるのじゃ」
雅楽は手を振った。千草とかぐやに手を降り、最後に写真に向けて手を振った。その意味はつららには理解できなかっただろう。だが、雅楽はそうすることで今日という日が少しだけ良くなる気がした。両親が見守ってくれているような心地がした。
扉を閉めると、雅楽は空を見た。空はまだ夏の模様を残していて、どこまでも青かった。あやかし界では見られない光景だ。当たり前のように思っていた景色が、こんなに綺麗だったことに初めて気づいた。
「よっ! 久しぶり!」
「久しぶり、武臣」
雅楽の後ろから武臣が話しかけてきた。彼は力強く雅楽の背中を叩いた。相変わらず元気そうだ。
いつもならいきなりのことで過度に驚いたりよろけたりしていた雅楽だったが、あやかし界の厳しさになれたのか、普通に返事をしていた。
「ん? お前なんか雰囲気変わったか?」
「そうでもないよ」
「ふーん」
この日は夏休み明け最初の日ということもあって午前授業だったので、すぐに学校は終わった。生徒や教師はいつもと変わりない。窓の外を見ると、生徒たちがボールを勝手に借りてサッカーをしていた。
雅楽はそれをただ眺めていた。羨ましいという感情もなくただ見つめていた。
この一ヶ月で雅楽の生活はガラリと変化した。あやかしの存在を知り、家族ができて、家族が一人減った。だというのに、たった一ヶ月では学校は何も変わらない。いつもの日常がただ続いていく。
それが何か狐につままれたような気分にさせた。
珍しく武臣が遊びに誘ってこないので、雅楽はあやかし界へ出向いた。
あやかし界への道はどこにでもある。それは学校とて例外ではなかった。
「えーと。確かこうだったかな」
雅楽は音楽室に忍び込むと、ピアノを弾き始めた。弾くと言っても、それは人差し指で決まった鍵盤を押すだけだ。「ド、ファ、ラ、ド」と呪力を込めながら押すと、誰も触っていないのに鍵盤が勝手に沈んでいき音楽を奏で始めた。ピアノは一人でに「エリーゼのために」を演奏している。
演奏が終わると、外は夕暮れに包まれていた。音楽室を出ると、そこはあやかし横丁の楽器売り場へと繋がっていた。
作者の紫 凡愚と申します!
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