ぬらりひょんとの戦い
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「こんなあやかしでは殺せんか……。なら儂が殺すまでよ」
ぬらりひょんの体が一瞬ぶれた。瞬きした瞬間には蓮香の背後で杖を構えていた。
「蓮香!」
雅楽は叫ぶと、足元に竹を生やし、一気に蓮香の元へ伸ばした。竹の上に乗った雅楽は高速で移動していく。
その間にも杖は蓮香の体を貫こうとしていた。このままでは雅楽が何か技を出しても防ぐことはできない。そう判断した雅楽は、自分の体を杖と蓮香の間にねじ込んだ。自分の身を呈して守ろうとしたのだ。
やけにスローモションな世界の中で自分の心臓に杖が吸い込まれていくのが見えた。このままいけば胸に杖が貫通するだろう。
しかし雅楽は、そうすることで治郎が奥の手を使ってくれると信じていた。
「『時を止める高麗笛』」
治郎が呪文を唱えた瞬間に、笛の音が轟き、ぬらりひょんの動きが静止した。杖は雅楽の胸ギリギリで止まっている。ヒダル神との戦いで見せた治郎の奥の手だった。
「ぬらりひょんは五秒間動けない! 今のうちにこいつを殺すんだ!」
治郎のこの言葉で全員が動いた。
千草は高速で移動し、ぬらりひょんを爪で切り裂こうとした。雅楽は地面から竹を生やし、心臓を貫こうとする。蓮香も拳を振り上げ、治郎は首に刀を滑らせた。つららは手から氷を出している。
ぬらりひょんは内心で焦っていた。このまま全員の技をくらってしまえば、ぬらりひょんといえど回復しきれないほど肉体が損傷してしまう。
この技を打開する術は、いかにあのぬらりひょんであろうと持っていなかった。
「いけえ!」
全員の渾身の一撃がぬらりひょんに収束する……。しかし、彼らは一切の手応えを感じなかった。
感じたのは硬い感覚と、冷たさ。つららの氷がぬらりひょんを守っていた。
「なんで、つらら!」
一撃が防がれ、五秒が過ぎ去った。ぬらりひょんは急いで距離をとる。しかし、彼自身もなぜ、自分が助けられたのか分からなかった。
「すいませんねー」
つららは謝っているはいるが、その口調には悪びれる様子はない。彼の綻んだ口元から、鋭い犬歯が見える。
「ぬらりひょんさん、取引しましょー」
「取引じゃと?」
「私は治郎さんを殺すのをお手伝いします。だからぬらりひょんさんは、雅楽くんを除いた全員を殺してください」
空気が一瞬にして張り詰めた。それはつららの魔法ではなく、彼の口から放たれた恐ろしい提案によるものだった。
「どうしてそんなことをするんだ!」
雅楽は叫んだ。つららは変わり者だが、いきなり裏切ったりする人物ではなかった。しかし、事実彼は裏切り、ぬらりひょんについている。
「なんでって……、恋が理由に決まっているじゃないですかー」
つららの赤い瞳の中に、狂信的な愛が歪んで渦巻いていた。両頬を手で覆い、白い頬と白い手が重なりあった。
彼の力なのか、夏だというのにつららの周りだけ雪が降り始める。彼を中心に雪が降り頻る様子は、スノードームのようだった。
「私は、雅楽くんが大好きなんです。もちろん千草もカグヤも蓮香も、友達として大好きですよ。しかし恋の好きの前には、空虚な物です」
彼の右手は、下半身へ伸び、股間部分を揉みしだき始めた。つららの異様な恋の形を、雅楽たちはこの時に初めて目の当たりにした。
「みんなは恋のライバルですからねー。恋のライバルは……皆殺しでーす」
「つらら……、お主先ほどまでは裏切るような心はなかったはずじゃ……」
千草も驚いた様子で、つららを睨んだ。
千草は人の心が読める。だからつららが裏切りを考えているならば、それをいち早く察することができたはずだった。
「影間で働いている時にも、心を読めるお客さんはいましたよー? 嫌悪感を隠して、相手が好きだというふうに振る舞うことには慣れています。それができたから、私は影間の中で……、いや、全ての遊女を含めて、色街で一番の売り上げを達成したんでーす。男で花魁道中をしたのは人間の歴史もあやかしの歴史も含めて私だけなんですよ?」
影間の話をしているときは、つららの笑みが消え、恐ろしいほどの無表情だった。
その隣で、ぬらりひょんは黒ずんだ歯を見せながら、意地悪そうに笑っている。
「なるほどのう。いいであろう。その取引を受けようぞ。こやつらは意外に強かったしのう」
治郎たちは再び身構えた。ぬらりひょんだけでも恐ろしいほど強いのに、そこに闇祓いの中でも屈指の実力を持つつららが入ってしまったら、途方もない戦闘力になってしまう。
「『あやかしの帝王』」
ぬらりひょんから、恐ろしい威圧感が放たれたる。それと同時に、彼から奇妙な音が聞こえ始めた。
—グギッ、ゴギリ
ぬらりひょんの体がどんどん変容していく。肋が浮き出るほど細くて薄かった身体には、筋張って強靭な筋肉がつき、歯は完全に生え揃い、背中から二本腕が新しく生えた。
さらに腕、後頭部、背中、足など体のありとあらゆる場所に目が現れた。目は全ての角度を監視しており、全く死角がない。
今までの弱そうな体つきとは違い、今まで見てきたあやかしの中でも、頂点に君臨するほどの恐ろしい様相だった。
「正直に言おう。さっきはつららがいなければ、死んでいただあろう。だからこそ、本気を出すことにする。貴様ら、覚悟をしておけ」
ぬらりひょんは口調まで変わっていた。魔王の名に恥じない、鷹揚な口使いだった。
作者の紫 凡愚と申します!
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