治郎の正体
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「ここは……」
雅楽たちは千草に連れられ、ぬらりひょんと治郎が戦っている場所へ来た。そこは、かつて一反木綿を除霊した機織り屋敷だった。
前回よりも、浮世の魂の数が増えており、不気味さも増していた。
ただ雅楽の近くに相変わらず漂っている浮世の魂だけは、安心感があった。
中に入ると、相変わらず機織り機がポツンと、この世から取り残されているかのように置かれていた。その機織り機が揺れ始めると、全員が眩い光が包んだ。
光が消えると、そこは住宅街だった。ただ前回とは違うのは、あちらこちらにただの布切れとなった一反木綿がいたことだ。ぬらりひょんと治郎の戦いに巻き込まれて、除霊されてしまったようだ。
「あっちから気配がするのじゃ」
千草の言う通りに進んでいくと、だんだんと戦闘音が聞こえてきた。硬いものがぶつかり合うような音だった。
「お父さん!」
「……雅楽。なぜこんなところに」
治郎はすでにボロボロだった。体のあちこちから血を流し、衣服はところどころ破れていた。
最強と呼ばれる治郎はぬらりひょんを相手に危機に瀕していた。
「ほう。これは飯が自分から来てくれたみたいじゃわい」
対するぬらりひょんには一切の傷はない。彼はカグヤを見ると怪しく笑った。彼の口の中は真っ黒で夜祭の闇よりも遥かに暗かった。
「千草……、雅楽に教えたのか」
「妾の鈴に触れてしまったのじゃ。どうしようもないであろう」
「なるほどな」
治郎はすでに全てを察したようだ。自分が千年以上も昔の人間であること、雅楽の出自、カグヤがどういう理由で生まれて来たかも、全てバレてしまったと理解した。
「……雅楽。ここまで来てもらってありがたいが、お前は逃げろ。ぬらりひょんには勝てない」
「ごめん。それは無理だよ」
雅楽の瞳に涙が溜まる。治郎はその涙を見て、思わず息を呑んだ。その涙は、雅楽を産んだ時にかぐやが流した涙に似ていた。
「僕はまだ、お父さんからお母さんの話を聞いてない。僕はまだ、親孝行をしてない。僕はまだ、お父さんと一緒にいたい」
この言葉を聞き、治郎の瞳にも涙が流れる。治郎も、まだ死にたいなどと思っていなかった。
「お父さんは差し違えてでもぬらりひょんを殺すつもりなんでしょ? 僕は今までお父さんの言いつけを全部守ってきた。でもさ、一回くらい破ってもいいよね」
「雅楽……」
治郎は意を結したように、雅楽を見た。
「分かった。一緒にぬらりひょんを倒そう」
「うん」
「千草と蓮香とつららも協力してくれるんだよな」
「そうじゃ」
「じゃあもう、これは意味ないな」
治郎は指をパチンと鳴らした。その瞬間、彼の体に変化が起きた。金髪のオールバックは黒髪のセンター分けになった。肌の色も健康的で浅黒い色だけから、青白いものへと変わった。さらにいつもつけていたサングラスを外すと、それを地面に落とし、思い切り踏み割った。
「これが本当の俺の姿だ。雅楽。ぬらりひょんに目をつけられないように、サングラスをかけ、髪型も変え、声も変えた。だいぶいつもの俺とは違うが、受け入れてくれるか?」
「当たり前だよ。内側は変わってないでしょ?」
「ああ。相変わらず優しいな」
治郎は剣先を真っ直ぐにぬらりひょんに向けた。ぬらりひょんはそれでも余裕を崩すことなく、「ひょひょひょ」と笑っている。
「雅楽たちに向けて、改めて自己紹介しよう。俺の本当の名は『時渡彦命』。生まれたのは約二千年前の飛鳥時代。今まで数多のあやかしを討伐し、有名になるたびに名を変えてきた。『安倍晴明』、『源頼光』、『浦島太郎』、そして『竹取の翁』。他にもさまざまな名前を使ってきたが……」
彼の刀は銀色に光り、一年に一度の月の輝きを反射した。治郎は刀を構えると、全身に力を込め、禍々しい黒い力を解放させた。
「今回の『佐伯治郎』という名で持って、魔王ぬらりひょんを討伐する!」
作者の紫 凡愚と申します!
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