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ようこそ! あやかしの世界へ!  作者: 紫 凡愚
第4章 竹の子
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今は昔、竹取の翁というものありけり

ブックマーク、コメント、評価、よろしくお願いします。

感想もくれたら、最高に喜んでしまいます。

 それは千草がまだ「千草」という名前をもらっておらず、猫又にもなっていないただの野良猫だった時の話だった。


 平安時代のその頃は、まだ人間とあやかしの関わりが深く、人間たちはあやかしの存在を虫や動物と同じように、当たり前に思っていた。


 千草が縄張りにしていた地域には、変わり者が一人住んでいた。


 彼の名前は誰も知らない。ただ、あやかしのような力で時を操ることができることは知られており、容姿が何十年と経っても全く変わることがなかった。


 彼は竹林の中に住み、人との関わり合いを避けていた。毎日竹を切っては自分で笛楽器を作り、それを吹いて演奏した。近くに住んでいた村人たちはその音に酔いしれた。彼と村人の関わりはそれだけだった。それだけで十分だった。


 村人たちは、何十年も毎日竹を取り続け、美しい音色を披露してくれる彼のことを敬意を込めて、「竹取の翁」と呼んでいた。


 当時、野良猫だった千草も、その「竹取の翁」の演奏が好きで、よく木陰から演奏を聞いていた。そこには動物だけでなく、あやかしもいた。中には彼に危害を加えようとしていたものもいたが、竹取の翁は腰に携えた銀刀でそのようなあやかしを除霊していた。


  いつしか彼のそばには、演奏を待ち望んでいる動物やあやかしがたくさん集まるようになっていた。

 しかしそんな彼の噂を聞きつけ、ぬらりひょんがやってきた。ぬらりひょんは竹取の翁と会うなりこう言った。


「お主に一つ頼み事をしよう。わしの娘を育ててはくれぬか」


 竹取の翁の前に一人の女性が現れた。目と髪は月のような金色だった。顔だちは整い、肌はきめ細かかった。とにかく彼女は容姿に優れていて、美の化身と言っても納得してしまうほどの美貌を持っていた。


「世俗を離れ、雅楽(ががく)の楽しさに更けるお主ならば妾の娘を純真に育ててくれるであろう」

「ぬらりひょんに娘なんていたのか」


 千草は思わず、はっとした。彼が喋れることを知らなかったのだ。考えてみれば、人間が喋るなど当然なのだが、彼はいつも笛を吹いていたので、彼の口は本来の用途を忘れ、笛を吹くためだけに存在していると思っていたのだ。


「娘と言っても妻から生まれたわけではない。新鮮な処女の死体を百ほど混ぜ合わせ、一つ自然から生まれたものを加えると、最後に加えたものを象徴するような女子(おなご)が出来上がるじゃ。この娘の場合は青竹じゃ」


 ぬらりひょんの娘は、その場にへたり込み、じっとしている。まだ感情がないようだ。


「そやつはまだ生まれたばかりじゃ。だから感情がない。今後、一ヶ月ほどかけてゆっくりと精神が完成していく。その間、お主に育ててもらいたいのじゃ」


 ぬらりひょんは竹取の翁が拒むという選択肢を考えていないのか、一方的に言った。そしてその通り、ぬらりひょんに歯向かう存在はこの世にどこにもいなかった。


「それじゃあの。一ヶ月後にまた預かりに来る。名前はお主が決めておくれ。よろしく頼むぞ」


 それだけ言ってぬらりひょんは去っていった。

 竹取の翁はゆっくり彼女の前に跪くとこう言った。


「お前は美しいな。美の理想のような容姿をしている。一つの欠点もない。まるで完璧な丸を描きながら光り輝く月のようだ。だからお前の名前は、かぐやだ」

「か……ぐや」


 それから竹取の翁とかぐやの共同生活が始まった。

 村人たちは絶世の美女が竹取の翁と住んでいると噂し、その噂を聞いた人が何人も嫁にもらおうと尋ねたが、竹取の翁はどんなに高明な人物であろうと追い返した。


 それは竹取の翁なりの優しさだった。仮に、ぬらりひょんと関わることになれば遅かれ早かれ命を落としてしまうことになるだろう。

 この共同生活には一つ、ぬらりひょんですら考えていなかった誤算があった。


 かぐやは自らを作るのに使った竹の影響を強く受けたため成長が早く、精神も知能も一週間で成熟しきってしまった。


「かぐや。お前にこれをあげよう」

「なんですか? これは」

「俺の力をかけた鈴だ。俺には時間を操る力がある。時を遅くする力をこの鈴に込めた。これがないと、お前は一ヶ月後には老人となっているだろう」

「これを身につけていれば、成長を抑えることができるんですね」

「ああ。そうだ」


 かぐやがいても、竹取の翁の生活は変わらなかった。竹取の翁は朝から晩まで笛を吹き、それをかぐやがのんびりと聞いている。ただそんな毎日が過ぎ去っていった。唯一、変わった点でいえば、猫を愛でるようになったことだろうか。


 野良猫だった千草を村の人々は不吉の象徴として、石を投げたり、水をかけたりして、追い出した。逃げ出したはいいものの怪我が酷く、死にかけていたところをかぐやが拾ったのだった。


かぐやはいつも千草を撫でていた。また千草も彼女のふわふわした手の感覚が好きで、彼女の後をずっとついて回った。


「おまえの毛は柔らかくて、気持ちいいですね」

「にゃー」


 千草にしてみれば、かぐやの手の方が柔らかく、気持ちよかった。


「よしよし」


 千草はかぐやにお腹を見せた。信頼しきっている証だった。


「私の好きな植物を知っていますか?」

「にゃ?」

「実は私、竹じゃなくてその辺に生えてる雑草が好きなんです。竹はまっすぐにしか伸びないけど、雑草は好きな方向に伸びることができる。何よりも自由な植物だと思わないですか?」


 千草はこの時、まだこの話を理解できる知能を得ていなかった。ただ、なんとなく彼女の声色が安心できるので、耳に入れていた。


かぐやはぬらりひょんの娘だということもあってあやかしの力を使えた。彼女は竹をいくらでも生やすことができた。彼女の作り出す竹は、繊維がつまり、瑞々しく、まっすぐに伸びた。


その竹を使うと、素晴らしい笛を作ることができた。かぐやの竹から作った笛は、複雑な音色を奏で、遠くまで響いた。美しい響きは山中の竹を振動させ、葉を震わせた。


かぐやが竹を作り、竹取の翁がそれで演奏をする。


そんな二人が互いに愛し合うようになるには時間は掛からなかった。

作者の紫 凡愚と申します!

この作品が面白い、気になると思った方は是非、ブックマーク、コメント、評価お待ちしています。途轍もないやる気になります! タイトル通りストックは最終話まであるため、人気になればどんどん投稿ペース上げてくのでよろしくお願いします!

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