鈴の付喪神
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「そろそろ夜ね」
寺子屋にはすでに千草、蓮香、つらら、カグヤがいた。彼らは縁の下に揃って座り、だんだんと沈んでいく夕日を眺めていた。風が吹くたびに、風鈴がチリンチリンとなり、それと同時にささやかな千草の鈴の音が混じっている。
「陽が沈むぞ」
千草がそうつぶやくと同時に、太陽は地平線の底に姿を隠した。一年ぶりの夜があやかし界を覆う。段々と空は暗くなっていき、星が煌めき始めた。
「うわあ。きれい……」
雅楽の口から感嘆の声が漏れた。それほどまでにあやかし界の夜空は美しかった。
あやかし界といえど、星の配置は人間界と同じだった。
北極星が動くことなく大きな輝きを放ち、そのほかにも多くの星々が光り輝いている。星の明るさは弱いもの強いもの様々だが、それぞれ自分が一番美しいと競い合うように地上に光を届けていた。
今まで都会に住んでいた雅楽はこれほど多くの、そして明るい星を見たことがなく、目を奪われていた。
一体、どれほどの時間が経っていたのだろうか。ただひたすら星を見続けていた雅楽はふと我に帰った。
今、他のあやかしはどうしているのだろう。
そんな疑問が頭をよぎり、蓮香たちを邪魔しないように寺子屋を出た。寺子屋から一歩出るとたくさんのあやかしがいた。しかし、いつものようなお気楽な雰囲気はなく、全員が空を見上げている。
ろくろ首、小豆あらい、がしゃどくろ。姿形は全く違えど、やっていることは皆同じだった。彼らは光り輝く星空を自分の瞳に落とし込むように、じっと眺めている。あやかしの瞳は星空を映し込み、無限に続く宇宙を目の中に内包している。
そんなあやかしたちを邪魔しないよう、雲は一切なく余計な音を立てる風もない。自然があやかしに気を使っていた。
彼らはここで星の輝きを吸収しているからこそ、一年間毎日、輝きを放つように遊べるのだ。
雅楽はあやかしたちの陽気さの理由をここで知った。
寺子屋に戻ると、やはり蓮香たちは星空を見ていた。全く飽きていないようだ。雅楽自身、もっとこの美しい夜空を観察していたかった。
星を見上げようとすると、チラリと千草の鈴が目に入った。
彼女は星を見上げ、その金色の瞳は星と同じかそれ以上に光っていた。彼女の華奢な首につけられた鈴は錆び付いているが、僅かに残る銀色の箇所が光を反射していた。鈴は宝石のように美しく、雅楽は鈴を手に取ってみたくなった。
雅楽は彼女の鈴を触った。その瞬間に、一気に記憶が流れ込んできた。
長い間、誰かと共に過ごした道具には付喪神という記憶が宿る。
そのことをすっかり忘れていた。一千年以上も千草と過ごしてきた鈴には付喪神が宿っていた。
頭を抑えている雅楽を見て、千草はようやく星から目を離した。そして自分の鈴が触られたことに気がつくと、狼狽えた。
「雅楽殿! 妾の鈴に触れてしもうたのか」
千草は自分の鈴を撫でると、チリンと鳴らした。
「こうなったら妾の記憶を隅から隅から見るが良い。本当は秘密にしておきたかったが、いつかは言わねばならぬことじゃった」
雅楽の脳内に千草の記憶が再生される。それは一千年以上も昔の壮大な話だった。
作者の紫 凡愚と申します!
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