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ようこそ! あやかしの世界へ!  作者: 紫 凡愚
第3章 家族愛
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皆の家族

ブックマーク、コメント、評価、よろしくお願いします。

感想もくれたら、最高に喜んでしまいます。

「ねえ。みんなの家族はどんな人たちなの?」


 ヒダル神を倒した日の夜、とはいってもあやかし界は夕方だが、雅楽は食卓でそんな質問をした。ヒダル神の一件があったあとからずっと雅楽のテンションは低かったため、そんな質問をした雅楽を全員が不思議そうに見ていた。


「耳飾りを触った時に、親がいない兄妹の記憶を見たんだ。だからみんなの家族が気になって……」


 机の上には、蓮香の作った唐揚げが置かれていた。油が照り輝き、香ばしい匂いがしていたが、雅楽はどうしても食べる気になれなかった。

 治郎たちもそんな雅楽に気を使っていたが、つららだけはパクパクと唐揚げを口に運んでいる。


「私のお母さんは闇祓いでもなんでもない普通の人よ。私がいない時に神社の管理をしてくれているわ。お父さんは……、そうね。例えるならあやかし界みたいな人かしら」

「あやかし界みたいな人?」

「あやかし界は毎日縁日で祭りを開いているでしょ。お父さんも毎日がお祭りみたいに楽しそうに暮らしているわ。今はアメリカに派遣されて闇祓い……、アメリカではエクソシストね。それをやってるけど、たまに帰ってくると、やっぱりあやかし界みたいな人だって感じるわ」


 自分の両親を思い出している蓮香は、とても楽しそうだった。普段はクールな彼女だったが、両親のこととなると年相応の少女のように微笑んでいる。

 なかなか会うことはできていないようだったが、蓮香の家は理想の家族だった。


「私はですねー、殺したいです」


 和やかな雰囲気がつららの一言で完全に消え去った。彼は冷たい空気を出しながら、それでも笑顔と唐揚げを食べることはやめず、語り始めた。


「私はあやかし界の色街に売られたみたいです。親が誰かはわかりませんが、そのせいで幼い頃から影間として働いていました。小さい頃はそれが普通だと思っていたのですが、だんだんとそれが普通ではないと知ると、お客さんにご奉仕している時間が苦痛になり、元凶である親を殺したくなったんでーす」」


 つららは頬いっぱいに唐揚げを頬張り、もぐもぐと咀嚼すると一気に飲み込んだ。

 食べ物と共に自分の憎悪といった負の感情も一気に押し込む。彼女はそうしながらどうにかして精神を保ってきた。


「親を殺せば影間として働いていた自分を忘れられる、そんな気がするんです。まあ、親なんて分からないから殺しようがないですけどね」


 つららはあやかし界で生まれ育っただけあって、普通ではない人生を歩んでいる。彼の身の上話を聞くだけで、その場の雰囲気がずっしりと重くなった。

だが、雅楽だけはそんな雰囲気を物ともせず口を開いた。


「影間の期間は辛いことで一杯だったと思うけど、これからは一緒に楽しい時間を過ごそうね」

「むふふー。それは告白ですかー?」

「ち、違うよ!」


 二人の会話でいくらか空気が軽くなった。つららも先ほどまでの凍てつく空気は出しておらず、ニコニコしている。そしてまた先程のように、唐揚げを口に入れた。


「私の親は主人。主人のおかげで私は毎日楽しく暮らせてる」


 カグヤは紅葉のように頬を赤らめながらそう言った。恥ずかしかったみたいだ。雅楽はそんな彼女の頭に手を置き、サラサラと撫でた。

 雅楽としてもカグヤのことは憎からず思っているので、嬉しかった。


「カグヤがそう言ってくれて嬉しいよ。僕もカグヤのことは本当の娘みたいに思ってるよ」

「ふーん。ちょっとだけ不服……」

「なんで?」

「秘密」


 彼女は頬を膨らませてそっぽを向いた。雅楽の返答が気に食わなかったみたいだ。それでも頭を撫でる雅楽の手を振り払おうとはしない。


「千草は?」

「妾は……そうじゃのう。親というか飼い主と言ったほうがいいかもしれぬの。野良猫だった妾を拾い、首の鈴をつけてくれて、名前をつけてくれた」


 千草の首元についた鈴がチリンと揺れた。彼女はこれを片時も離すことがなかった。彼女といえば鈴がトレードマークだ。


「へえ。でもそれって一千年以上も前の話なんだよね?」

「そうじゃ。じゃがその時の記憶は全く薄れておらぬ。ゆっくりと流れる時の中で、毎日を徒然なるままに過ごし、心暖かい親のもとで育った記憶は永遠のものじゃ」


 千草は遠い目をしながら記憶を思い返していた。金色の瞳を薄く閉じ、昔のことに思い馳せている。千草のトレードマークでもある鈴は、よく見ると錆びついていて、年季がある。

 古くはなっているが、一千年も経っていることを鑑みると、彼女がそれを大事に扱っていることが分かる。


「お父さん。僕のおじいちゃんとおばあちゃんはどんな人だったの?」

「そうだなあ。厳しくて、優しい人だった。二人とも闇祓いで、実力で言えば今の俺の方が上だ。でも親父のでかい背中と、お袋の優しい笑みにはどうも勝てる気がせんな」

「じゃあ、お母さんは?」


 実は雅楽が自分の母親のことを聞くことはこれが初めてだった。母親のことを聞くと、治郎が悲しそうな顔をするからだ。母親のことが気になるとはいえ、雅楽にとって一番大切な人は治郎であり、彼の悲しい顔を見たくなかったため、話を避けていたのだった。


 だがここ最近は、治郎がいつもと違う感じがしたので、聞いてみたくなった。


「そうだなあ。あいつは誰よりも優しくて、可愛くて、強い女性だった。強いというのは、闇祓いとしてとか、そういう話じゃない。お前を産めば命がなくなると知っていたのに、産んだという強さのことだ。お前の目元はお母さんによく似ている」


 治郎は酒に酔っているのか、意外とすんなりと答えてくれた。しかも当時のことを思い出しているのか、珍しく笑っていた。

 いつも一緒にいる雅楽が見たことのない、優しい微笑みだった。


「今日のヒダル神の件のことあっただろ?」

「うん」

「闇祓いとしては、その程度の記憶を見ただけで泣いてしまうのは良くないことだ。だが、そんな底なしな優しさを持ってくれたということは、父親としてこの上なく嬉しい」

「本当?」

「ああ。きっとお母さんも喜んでいるよ。だからお前はいつまでもそのままでいてくれ。誰かを思いやる優しさと、誰かを守る強さ。何から何までお母さんに似ている。だからこそ、そのままで」

「分かったよ……。でもね、僕はお父さんみたいになりたい」

「何?」

「お父さんは一人でお母さんの役割までしてた。たった一人で二人分の愛情を注いでくれた。僕はお父さんがお父さんでよかったと本当に思ってるよ」

「親孝行なことを言ってくれるぜ。全く……」


 治郎はそれだけ言うと、寝息を立て始めた。彼は酒に弱く、酔っ払うとすぐに寝てしまう癖があった。

 雅楽は自分の心が温まっていくのを感じた。何かが父親と自分の中で繋がった気分だった。できればいつまでもこうしていたい。そう、雅楽は思った。


 庭にある柿の梢にカラスが一羽止まっている。しかし、普通のカラスではない。三本足のカラスだった。カラスは夕日に向かって飛び立つと、不気味に一鳴きした。その声を聞いているものは誰もいなかった。


作者の紫 凡愚と申します!

この作品が面白い、気になると思った方は是非、ブックマーク、コメント、評価お待ちしています。途轍もないやる気になります! タイトル通りストックは最終話まであるため、人気になればどんどん投稿ペース上げてくのでよろしくお願いします!

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